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真田十勇士

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巻ノ百二十八 真田丸の戦その九

「その為に来ております故」
「勝負に加勢されぬか」
「こうした時の勝負に加勢をする無粋なことはしませぬ」
「それもまた忍の道」
「忍の道は目的の為に手段を選ばぬものですが」
 それでもというのだ。
「こうした時はです」
「無粋なことはか」
「せぬもの、それでです」
「貴殿はこの度の戦に関わらぬか」
「若し真田殿が出てこられれば」
 真田丸の櫓を見た、そこに鹿の兜を被り赤備えで固めた幸村がいる。彼のその姿をはっきりと認めているのだ。
「お相手致したが」
「それでもでござるか」
「はい」
 こう言うのだった。
「今は真田殿はあちらにおられる、さすれば」
「貴殿はそちらか」
「またお会い致しましょうぞ」
 仮面の中の素顔、仮面は外していないがそれを後藤に見せて告げた。
「そうしてです」
「その時機会があれば」
「戦いましょうぞ」
「うむ、ではな」
「今はこれで」
 こう言ってだ、はっと詠は姿を消した。そうしてだった。
 十勇士と後藤に木村と十二神将達の死闘がはじまった、霧の中でその姿は外から見えないがそれでもだった。
 彼等は互いの術を尽くして闘う、後藤は神老の変幻自在の忍術、何処から来るかわからない手裏剣を常にかわし槍で防ぐ。神老はその後藤に対して正面に姿を現わして言った。
「お見事」
「いや、お主こそな」
 後藤も神老に返した。
「そう言っておこう」
「後藤殿程の方にそう言って頂けるとは」
「事実だから言ったまでのこと」
「事実ですか」
「わしはこれまで多くの死闘を経てきた」
 それだけにというのだ。
「多くの者と命賭けで戦ってきた、その中でどれだけの一騎打ちをしてきたか」
「その一騎打ちの相手の中で」
「これだけの攻めをしてきた者はおらんかった」
 こう言うのだった。
「それで言うのじゃ」
「左様ですか」
「そうじゃ、見事じゃ」
 また言った。
「実にな」
「それはそれがしも同じこと」
 隙を見せない、そのうえで後藤に返した言葉だ。
「貴殿程度の方はこれまで」
「おらなかったというか」
「今ので多くの者は倒してきました」
「わしも危うかったわ」
「いえ、その危う中で逃れられるのが」
 それこそがというのだ。
「まことの腕の持ち主ですので」
「そう言うか」
「左様であります、ではさらに」
「生きるか死ぬか」
「そうした勝負をしましょうぞ」
 神老は今度は刀を出した、そのうえで手裏剣を激しく投げつつ後藤に向かう。後藤もその神老の攻撃を防ぎつつ迎え撃った。
 木村は一騎打ちの初陣だった、だはその手に持っている刀を見事に使いつつ十二神将達と闘っている。十勇士達はその彼にそれぞれの闘いの中で言ってきた。
「木村殿無理はされぬ様」
「相手は忍です」
「忍には忍の闘い方があります」
「ですから」
「わかっておる、どうもじゃ」 
 雷獣のその雷を左右に動いてかわしつつだ、十勇士達に応えた。一騎打ちだが何時しか十一対十一の戦になっていた。一騎打ちが十一合わさってそうなっていた。 
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