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真田十勇士

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巻ノ百二十八 真田丸の戦その七

 そしてだ、さらにだった。
 穴山は鉄砲を幾つも出してその一つ一つを一斉に空に放り投げた、そして落ちて来る鉄砲を一つ一つ自身も跳び上がりつつ取ってだった。
 鉄砲を放つ、そして別に鉄砲を空中で取って撃つ、そうして敵兵達を撃ち倒していく。
 霧隠は自身が出した霧の中で刀と手裏剣を振るい敵を倒していく、その横では根津が縦横無尽に剣を振るい望月が拳を振るう。
 海野は大坂城の堀から引き寄せた水を濁流として敵兵を流し清海の金棒が敵を片っ端から吹き飛ばし伊佐の錫杖も荒れ狂う。
 猿飛の木の葉隠れが敵をまとめて切り伏せ筧の雷が次々と落ちる。その暴れ様は家康の本陣からも見られた。
 家康は茶臼山の本陣からそれを見てだ、唸って言った。
「あれは間違いない」
「はい、十勇士達です」
 傍に控える服部が答えた、既に彼の忍装束を着ている。
「しかも上田の時よりもです」
「遥かにじゃな」
「強くなっておりまする」
「何という術じゃ」
 家康はその暴れ様を見てまた唸った。
「あれではな」
「はい、最早です」
「どうしようもないわ、不意に幾つかの家の軍勢が動いたかと思えば」
「真田丸に引き寄せられ」
「あの有様じゃ、全てな」
「真田殿の策ですな」
「そうじゃ」
 家康は服部に確信を以て答えた。
「こちらの軍勢を煽って乱してな」
「真田丸に攻めさせ」
「そうしてじゃ」
「真田丸からの鉄砲と弓矢で寄せ付けず」
「あの様に十勇士達も出してな」
「そして、ですな」
「倒しておるわ」
「大御所様、それでは」
 服部は家康にすぐに申し出た。
「ここはです」
「お主がじゃな」
「はい、十二神将を引き連れてです」
「頼めるか」
「お任せを、我等が殿軍になりです」
 そのうえでというのだ。
「こちら側の軍勢は」
「うむ、下がってな」
「そうしてですな」
「仕切り直しじゃ、しかし真田め」
 家康はその彼等を見てまた言った。
「何と恐ろしい」
「その策と強さは」
「武士としても忍としてもな」
「この世のものとは思えませぬな」
「この戦勝とうと思えば」
 まさにとも言う家康だった。
「あの者を何とかせねばな」
「なりませぬな」
「うむ、では半蔵よ」
 家康は服部にあらためて告げた。
「頼むぞ」
「わかりました」
 服部は家康に応えてそうしてだった、即座に十二神将を連れて真田丸の方に来た、そして丁度敵兵の一人に向かって投げられた霧隠の手裏剣をだった。
 己の刀で弾き返してだ、霧の中で己の前にいる霧隠に対して言った。
「服部半蔵参上!」
「出て来られたか」
「これ以上は好きにはさせぬ」
 服部は霧隠を鋭い目で見据えつつ告げた、その後ろには十二神将達がいる。
「軍勢は退く、しかしな」
「これ以上攻めるとか」
「我等が相手になる」
「面白い、ではじゃ」
 霧隠は服部と十二神将達を見据えて不敵な笑みを返して言った。
「これよりな」
「我等をか」
「討たせてもらう」
「才蔵、我等もおるぞ」
「我等も忘れるな」
 他の十勇士達もここで集まって来た。 
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