コバピーハザード!
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第三章「役立たずな博士」
「ウッホ!コバピー君じゃないか!もう十数年会ってないってのに、全く全然相も変わらず三頭身だね!」
「うっせっ!」
久しぶりだというにこんな再会の仕方しか出来ないこの人は、父の研究仲間の鈴木博士だ。
「雅明先生っ!」
「メラ…そんな一般的にウケないこと叫ぶの止めてくんない?」
「バッハ・コレギウム・ジャパンっ!」
「いや、ごく一部にしか通じないから!ってか、下の名前大洋だし!」
メラは何を血迷ったか、某有名指揮者の名前を連呼している。
「メラにコバピーの霊が憑依してる!」
「憑依するか!ってか、勝手に殺すなっ!!」
みほ殿は…全くなんちゅう縁起でもないことを…。
ま、それは置いておくことにして、僕らは早速博士の研究室へと入ってこれまでの経緯を博士に話した。
全て聞き終えた博士は腕を組み、暫く考え込んだ後に言った。
「そりゃ無理だ。私にもどにもならんね。」
「なんでやねんっ!」
皆一斉に、どういう理屈なのか関西弁風にツッコミを入れた。ま、この話しに理屈なんぞ無いも等しいがな…。
「なぁ、コバピー。こいつじゃ当てになんねぇし、取り敢えず戻ってみようぜ?何か解決策が見つかるかも知んねぇしよ。」
けぃが百年に一度としか思えない程まともなことを言ったので、僕だけでなく、みほ殿やメラ・ニョポ…も、目を見開いて驚愕した!
「天から擬きが降ってくる!」
「どういう意味だっての!」
みほ殿が、また要らぬセリフを口走ったため、再び戦闘モードに突入するとこで博士が止めた。
「ガキ共、遊んでいる場合じゃないだろうが!とっとと出て行ってなんとかしろよ!私は研究が忙しいんだよ!」
そう言えば、この人ってどんな研究してたっけ?と僕が思った時、代弁するかのようにメラが言った。
「なぁ、博士さん?あんたは一体どんな研究してんだ?」
「私か?私は人のコピーを…」
「お前が一番の専門じゃねぇか!」
その日、博士の頭上にスリッパの嵐が吹き荒れたと言う…。
さて、スリッパ型のアザが入った博士はよろよろと立ち上がり、たった今何かを思い出したと言う風に呟いた。
「あ…そう言えば奴から何かの設計図を預かってたんだった。」
それを聞いた皆の衆の目は、野獣の如く鈍く輝いた。博士はその妖気を察知し、次のツッコミが来たら生命が危ういと感じ、研究室の奥へと設計図を取りに走った。
そう、彼は走った。全ての災いから逃れるため、自らの命を守るために…。
博士が奥へと消えたため、みんなは静かに待った。その設計図とやらを見るために…。
暫くすると、博士は古びた紙切れを持って戻って来た。
「こいつがヤツが書いた“人手を増や~す君”の設計図だ!」
「…………。」
黙した。全員が黙して何も語ろうとしない…。いや、語ることなど出来はしなかったと言えた…。
「なんじゃこりゃ!」
皆の衆は叫んだ!なぜか美しくハモりながら!
「ってか、なにこの幼稚園児のお絵描きしたようなもんはっ!?」
「これが設計図!どう見ても設計図!なんてったって設計図だっ!!」
博士はワケわからんポーズを決めている…。
やはり天才とバカは紙一重。博士とかいうのは、紙一重でバカなんだなぁ…と、僕は思ったのでした。
「いやいや、ここて終わっちゃ話しが続かんだろっ!俺の活躍がまだないじゃないか!」
メラがなぜかメラメラ燃えていた!まるで詰まらない洒落じゃないか!!
僕は嫌な予感がした。こんなボケ大爆発のメラに、けぃとみほ殿が黙っていられるとは思えない…。
「メラッ!言っとくがな、リツさんを助けるのは俺だかんな!」
「いいや!リツさんを助け出せるのは俺しかいない!」
「んなわけねぇだろうが!俺様の蹴りを食らってみろっ!」
「このウザガキが!そっちこそ俺の蹴りを受けてみろっ!」
互いに牽制しあった後、双方共に蹴りを出し合って互いの腹に互いの足を食い込ませたのだった。
「グフォッ!」
「ゲフォッ!」
何ともバカなやつらだ…。ま、静けさが戻ってきたので、それはそれでいいか。何だか悶絶する微かな声が聞こえてる気もするが、そこは無視するに限る。
「メラの活躍云々は黙殺することに決定して…と。博士、これってどう見てもただの落書きにしか見えないんだけど…。」
「俺のことは黙殺決定ってどうよ!?」
はい、その言葉も黙殺で。
「そう思うのも無理はないな。これはなんと、暗号になっているのだ!」
そう言って博士は、やはり意味不明なポーズをしているが…どうやら戦隊ものの特撮が好きなようだ。しかし…
「そのポーズはどでもいいから…。博士にはこの暗号って解けるんですかぁ?」
「無論だっ!」
そう叫ぶや、博士は再びポーズを決めたので、僕は仕方なく…本当に仕方なく博士をどついた。
「グハッ!」
「いい加減にせいっ!もう四十八歳だろうが!」
「と、歳を言うな!外見は未だ三十代に見られるんだから!」
いや、そんな話しをしてたわけじゃなかったはず…。なので、無理矢理元へと戻します。
「で、これで擬きを消せるんですか?」
「まぁ待て。今この暗号を…ああっ!!」
暗号を解読しようと、博士が落書き…じゃなくて設計図を見た時、いきなり大声を上げた。
「どうしたっ!」
博士の声を聞くや、けぃとみほ殿が驚異の復活を見せた。こいつら、最早人間じゃねぇよ…。だって、変だもん…。
それから博士は、あるとんでもないことを告げた。
「これは…甥っ子が書いたヤツだ!」
「………。」
「………。」
「………。」
「………。梁抜けた~家がぁ~!」
「メラッ!それ全然違うっちゅうねん!ってか、この状況で発すなっ!」
梁抜けた…いや、違う。張り詰めた空気が研究室を満たしている。そこかしこにビリビリと電気でも走っているように感じる…。
「痛ッ!静電気っ!!」
この話しに張り詰めた空気とかあり得ないね。シリアスなんて、この登場人物達には似合わないし。
「ってか、だったら本物の設計図はどこだっつぅの!」
僕は博士にそう言うと、博士は再び危険を察知し、クルッと身を翻して奥へと走った。
そう…以下略。
で、博士はダッシュで戻り、机の上に紙を叩きつけて言った。
「今度こそ本物だ!」
博士は控えぎみにポーズらしきものを決めた風だった。
しかし、あまりにも控え目過ぎたため、誰にも気付かれることなく流されたのでした。
「シクシク…。」
「博士?まぁ何でもいいけどよ、これこそ正に設計図。さっきの落書きと、どうやったら間違えるんだ…。」
メラが顔を引き攣らせて聞いた。他二名も、顔を引き攣らせながら博士を見ている。
「えっと…ちょっとしたお茶目かな?」
問答無用で再びスリッパの嵐が吹き荒れた。
もうこの研究室が吹き飛ぶんじゃないかと思うほど、皆の衆は博士をボッコボコにどつきまわしたとさ。
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