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真田十勇士

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巻ノ百二十八 真田丸の戦その五

「その一騎当千の術をな」
「承知しております」
「我等この時の為に鍛錬を積んできました」
「そして術も備えてきました」
「ならばです」
「その時が来れば」
「術を思う存分振るいます」
「そうしますぞ」
「一切遠慮はいらぬぞ」
 こうも告げる幸村だった。
「よいな」
「はい、十人の術を合わせてですな」
「一つにして」
「そしてそのうえで」
「一気に破れと」
「そうじゃ」
 まさにというのだ。
「そうするのじゃ」
「わかり申した」
 十勇士達は幸村に確かな声で応えた、そうして真田丸の前に群がってきた軍勢達のに櫓の上から言ったのだった。
「よくぞ来られた!」
「あれは真田殿か」
「真田左衛門佐殿か」
「間違いない、あの鹿の兜は」
「赤備えの具足に六文銭が入った陣羽織は」
「左様、それがしが真田源次郎幸村でござる」
 自ら名乗った幸村だった。
「よくぞ来られた」
「あれがか」
「あれが真田殿か」
「真田殿の弟君か」
「噂に聞く」
「さあ、ここまで来られたからには」
 幸村は己を見る幕府の兵達に言った。
「どうされるか、おめおめ逃げ帰られるか」
「誰がするか!」
「我等こそ武士だ!」
 十勇士達が声色を使って幕府の兵達の間から出た様にして言ってきた。
「戦わずして逃げられるか!」
「ここで真田丸を落としてやる!」
「そうしてやろうぞ!」
「馬鹿な、築山だけでよい」
 政重は慌てて彼等のところに来て事態を収めようとしていた、それでことの異変を見て言ったのだ。
「真田丸を攻めてはいかん」
「殿が言っておられるぞ!」
「加賀の殿がな!」
「越前の殿もだ!」
「馬鹿な、殿はその様なことは言われぬ」
 このことにも驚いた政重だった。
「まさか真田の策か」
「さあ、攻めよ!」
「殿の旗印が見えたぞ!」
「我等に攻めよと言われておる!」 
 ここで法螺貝も鳴った、旗印は筧が幻術で出したものだがそれに気付く者は今の幕府方には一人もいなかった。
「さあ、攻めよ!」
「法螺貝が鳴ったぞ!」
「よし、真田丸を落とせ!」
「この数なら攻め落とせるぞ!」
 政重は何とか制止しようとしたが最早無理だった、前田家や越前松平家の兵達は雪崩の如き真田丸に向かった。彼等は完全に我を失っていた。
 その彼等を見てだ、幸村は言った。
「よし、見事にだ」
「かかりましたな」
「我等の策に」
「それではですな」
「これよりですな」
「皆の者待たせた」
 まさにと言う幸村だった。
「ではこれよりじゃ」
「鉄砲ですな」
「もう用意出来ております」
「弾も込めております」
「ですから何時でもです」
「よし、ではじゃ」
 敵の大軍が迫るのを見つつの言葉だ。 
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