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真田十勇士

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巻ノ百二十七 戦のはじまりその十

「これはよいことじゃ」
「敵の動きはですな」
「よいですか」
「あの状況で」
「守りは固めておる」
 このことは幸村が見てもだった。
「だがそれはこちらが篭城しておるとわかってのこと」
「うって出ることはせぬ」
「そう見てですな」
「攻めぬ様にしておる」
「そうした守りの固め方ですか」
「しかも軍勢と軍勢の戦を考えてのことじゃ」
 このことも言う幸村だった。
「忍が仕掛けるとは考えておらぬわ」
「忍の者は相変わらず大御所殿と将軍殿の軍勢におるだけです」
「我等に対することが出来るだけの者は」
「それぞれの家の忍の者達もいますが」
「敵ではないですな」
「我等と対せられる忍は服部殿と十二神将のみ」
 幸村、そして十勇士達にというのだ。
「それでその服部殿と十二神将が大御所殿と公方殿の陣地におるのなら」
「仕掛けられる」
「左様ですな」
「他の家の陣に仕掛け」
「この真田丸を攻められますな」
「そうじゃ」
 その通りだというのだ。
「だからじゃ、よいな」
「はい、では」
「一旦外に出て参ります」
「そしてそのうえで」
「敵を乱してきます」
 その十勇士達が言ってきた。
「こちらに引き寄せます」
「全て殿の手筈通りに」
「ではですな」
「そうしてからは」
「この真田丸において」
「うむ、攻めて来た敵達をじゃ」
 まさにというのだ。
「徹底的に打ち破ってな」
「そうしてですな」
「戦の流れを変えて」
「そのうえで茶々様を説得し」
「外にうって出る」
「そうしますな」
「そうする、その第一歩じゃ」
 戦に勝つ為に外で戦える様な流れにする為にというのだ、幸村は先の先まで見ていてそのうえで考えていた。
「これからのことはな」
「それで父上」
 大助が父に怪訝な顔で言ってきた。
「気になることがあります」
「大砲か」
「はい、あれを使われると」
「それじゃ、あれは本丸の奥ならばな」
「何があろうとですな」
「絶対に届くことはない」 
 その弾はというのだ。
「だから茶々様はじゃ」
「その本丸の奥におられれば」
「何ともない」
「だからですな」
「迂闊に外堀に面しておる櫓にでもおられるとな」
「普通は大砲の弾すら外堀に阻まれますが」
 そこまで大坂城の堀は広いのだ、これもまた大坂城が難攻不落たる所以だ。
「風に乗れば」
「外堀の櫓に届くこともある」
「それで茶々様が外堀の櫓の一つに入られれば」
 そしてそこを狙われればというのだ。
「危ういですな」
「大砲は弾が当たることなぞ滅多にない」
 幸村はこのこともわかっていた、戦の場でその様なものに当たるなぞ相当に運が悪い者であるというのだ。 
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