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真田十勇士

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巻ノ百二十七 戦のはじまりその八

「ならばな」
「そこをですな」
「衝いていく」
「そうされますか」
「そうすれば兵達を失うことなくじゃ」
「勝てまするな」
「そうなる、しかしお主だから言うが」
 共に若い頃から知っている大久保だからというのだ。
「わしの好みは知っておろう」
「大御所様のお好きな戦は」
「城攻めではない」
「外で戦うことですな」
「ははは、若い頃からな」
 家康は笑って大久保に話した。
「わしも三河武士だからな」
「三河武士は外で正面から戦い」
「そして勝つものじゃな」
「はい、大御所様もでしたな」
「若い頃からじゃったな」
「幾度も外で戦われてきました」
 城の外でだ、つまり野戦が家康が好きで得意とする戦だ。とはいっても城攻めも実は苦手ではない。
「そのうえで勝ってきました」
「幾度も四天王そしてお主ともな」
「戦ってきましたな」
「だから外での戦がよい、謀を使うよりもな」
 城を囲んでそのうえでだ。
「そこで勝敗をつけたいが」
「それは適いませぬな」
「ならそれは仕方ない」
 それならというのだ。
「仕掛けていくぞ」
「さすれば」
「そして大坂を手に入れようぞ」
「この場所はよい場所ですからな」
「実にな」
「はい、だからですな」
「手に入れてその後はじゃ」
 それからのことも話す家康だった。
「ここはじっくりと治めよう、ではこれよりじゃ」
「諸将をですな」
「ここに集める」
 家康の本陣にというのだ。
「そのうえで皆に話をしよう」
「わかり申した」
 すぐに将軍秀忠と幕臣達そして諸大名が集められた。家康はそこで彼等に対してこう言ったのだった。
「わしが命じるまで城は攻めるな」
「そしてですな」
「そうじゃ、ゆうるりと囲んでいればよい」
 秀忠にも話した。
「今はな、そしてな」
「然るべき時にですな」
「またわしが言う」
「さすれば」
「皆兵達に美味いものをたらふく食わせよ」
 家康は明るく笑ってこうも言った。
「大坂の海の幸なり何なりな」
「では大御所様」
 ここで政宗が家康に問うた。
「それを肴として」
「そうじゃ、酒もじゃ」
「ふんだんにですな」
「飲ませるのじゃ」
 兵達にというのだ。
「そうするのじゃ」
「わかり申した」
「お主達もじゃ」
 政宗にも言うのだった、そして諸将にも。
「ふんだんにじゃ」
「美味なものをですな」
「食ってじゃ」
「そして飲む」
「そうせよ、そしてその姿をじゃ」
「城の者達にも見せる」
「そうしてやるのじゃ、余裕を見せよ」
 飲み食いするそれをというのだ。
「好きなだけな」
「大御所様、ではです」
 景勝も言ってきた。 
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