相談役毒蛙の日常
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十七日目
「ふぅ…葵が来るまで…五分って所か…」
ALOにログインし…スイルベーンのスタートポイント前に立つ。
昨日…新生ALOサービス開始時。
俺達は最後に居た場所からの…つまり俺の場合混沌の館の自室からのスタートだった。
そこからイクシードの召集、会議などを済ませた。
その後徹夜でアルンからスイルベーンまで飛んで…
今現在ここに居る。
「ふぁぁ…」
はっきり言ってめちゃくちゃ眠い。
徹夜でゲームして、セーブしてログアウト。
さらに葵の家に行ってアミュスフィアのレクチャー…
もう一度言おう…眠い。
「おお、トードか?」
名前を呼ばれ、振り向くとサクヤが居た。
「おぉ…サクヤか…久しぶり…」
「うむ…なんだ寝不足か?」
「ああ…昨日会議が終わってから徹夜で飛んで来た…」
「お前がか?何の為に?」
「今日から…俺の友人が…ログインするんだ…」
「あぁ、なるほど出迎えか」
「そゆこと…」
するとサクヤは下世話な笑みを浮かべ…
「で…コレか?」
小指を立てながら問うた。
「いや…幼馴染だ」
「ほーう?」
そもそも
「ソイツが女とは限らんだろ…何故聞く?」
「テルキスから聞いたのでな」
チッ…
ヤロウ…部下に月光鏡使わせたのか?
「部下に月光鏡なんぞ使わせおってからに…」
「いや、普通のメッセージだったぞ」
は?
「知らなかったのか?新生ALOではキャラネームでメールが出せるようになってるんだぞ」
マジかー…
今まではフレンド、パーティー、ギルド内でしか出来なかったのに…
「無論、圏内に居る間だがな」
圏内…安全圏内の略だ。
本当はアンチクリミナルコード圏内と言うらしいがその呼び方は誰も使っていない。
「そうか…便利だな」
するとサクヤがなにやらウィンドウを開いた。
「どうした?」
「うむ…まぁ、こういう風になってる」
と言ってウィンドウを可視化し俺に見せた。
開かれていたのはフレンドのメッセージ欄。
差出人は…アリシャ…
内容は挨拶だった。
今更?とも思ったが領主は忙しいのだろう。
ん?領主?
「おい、サクヤ。お前こんな所に居ていいのかよ?仕事はどうした?」
サクヤはフイッと顔を背けた。
ふむ…
フレンドの欄を呼び出す。
そこへある名前を打ち込む。
相手はシルフの幹部だ。
内容は…『今アンタらの所の領主がスタートポイントに居る』
送信…
すると20秒後に『感謝する。一分で行く。足止め求む』と返信があった。
どうやら本当にネームだけでメッセージを送れるらしい。
「ん?誰にメッセージを送ったんだトード?」
「テルキスにな。にしてもコレすごいな…一発でカオスブレイブズの協力者にメッセージ送れる」
「うむ、コレで少しは私も楽が出来そうだ」
「楽?」
「遠くから指示を出せれば楽だろう?」
まぁ、確かにそうだな。
「うーむ…俺もアリシャになんかメッセージ送ろうかな…」
先と同じ画面を開き、アリシャにメッセージを送る。
『よう、アリシャ。久しぶり。領主は忙しいか?
今現在俺の目の前に領主約一名が絶賛サボり中だ。
俺氏スイルベーンなう』
送信…
ふと、サクヤの後方に高速で飛翔する人影が見えた。
「サクヤ」
「なんだ?」
「さっきテルキスにメール送ったって言っただろ」
「ああ」
「本当は違うんだわ」
「なに?」
俺は可視化したウィンドウをサクヤに見せた。
刹那、サクヤは翅を広げた。
しかし…
ガシッ!
「サクヤ様…」
「あ…」
さっきのシルフ幹部に肩を掴まれた。
「さぁ!戻りますぞ!」
「嫌だぁ!もっと外に居たいー!」
「仕事が溜まってるんです!貴方のシギルが無いと決算が出来ないんですから!」
「いーやーだー!」
「トード、感謝する。さっきから領主館でこの人を探しててな…」
「じゃぁ貸し一つで」
「お前らしいな」
「そうか?」
「では失礼させて貰う」
と言ってアイツは踵を返した。
「トードの裏切者ー!」
と言いながらサクヤはアイツに引っ張られて行った。
「翡翠の地
領主の嘆きが
聞こえくる
今日も今日とて
妖精郷は
平和なり」
「いらん和歌を吟うなー!」
えー…いいじゃん別に…
やがてサクヤも諦めたようで領主館に…
あ、逃げた。
サクヤは領主館とは反対の方向へと逃げていき、鬼ごっこが始まった。
「うん、俺は何も見ていない」
そう言って再びスタートポイントに目を向ける。
すると…
そこから一人の女の子が出てきた。
身長は150センチくらいだろうか。
髪型は垂れた犬耳のような癖っ毛。
そして翡翠のような瞳。
だけど、その瞳には見覚えがあった。
「おまえ…葵か?」
「そう言うお前は灯俊か?」
俺のアバターは幸か不幸かリアルとほぼ同じだ。
違うのは髪と眼の色くらい。
「ああ、はじめまして。カオスブレイブズギルドマスター付き相談役ポイズン・トードだ」
「オレはカトラス」
カトラス?なぜに曲刀?
まぁいいか。
「ひと…あぁ、いや、トード」
「なんだ?」
「お前でかくね?」
そうか?
「お前が小さいだけだろ」
その言葉にあお…カトラスはウィンドウを開き…
「ち…」
ち?
「ちくしょうめぇぇぇぇ!」
と叫んでその場に崩れ落ちた。
えぇぇぇぇ…?
訳がわからん…
とりあえず…
「おい、何があったかは知らんが取り敢えず諸々の説明するぞ…来い」
「うん…」
俺はとぼとぼ歩くカトラスを連れ、酒場に向かうのだった。
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