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真田十勇士

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巻ノ百二十七 戦のはじまりその六

 それでだ、赤備えについてさらに言うのだった。
「戦えることもよいであろう」
「ですな、流石にそれはないと思っていました」
「赤備えは」
「しかしそれが実現出来る」
「このこともよいことですな」
「我等は何と果報者か」
 幸村は実際に自分の幸せを噛み締めていた、まさに武門の誉れを極めているというのだ。
「この果報、本朝の長い歴史でも随一じゃな」
「ですな、ではその果報を胸にですな」
「戦いましょうぞ」
「これより」
「そうせよ、伊賀者や甲賀者は幕府の中におる」
 幕府の陣にというのだ。
「だからじゃ」
「あの者達についてはですな」
「大御所殿や将軍殿の陣に行かなければよい」
「左様ですな」
「そうなりますな」
「いても大した者はおらぬ」
 大坂にはというのだ。
「お主達に対することが出来る者はな」
「服部殿か十二神将となりますが」
「それでもですな」
「そうした御仁達は大御所殿の本陣にいる」
「だからですな」
「お主達の相手になる者は仕掛ける先にはおらん」
 幕府の本陣に行かない限りはというのだ。
「若し来た時は警戒すべきじゃが」
「それでもですな」
「我等が仕掛ける先の家の軍勢は安心していい」
「仕掛けても」
「そのことは安心せよ、若し服部殿や十二神将が来ればな」 
 その場合についても話す幸村だった。
「わかっておるな」
「その時は下がる」
「真田丸に入ろうとせぬ限り」
「城の外ではそうする」
「それでいいですな」
「そういうことじゃ、忍同士の戦は城の中でせよ」
 真田丸ひいては大坂城に入った時にというのだ、彼等が。
「服部殿ならば。わかるな」
「あの御仁ならば大坂城に忍び込み」
「そして本丸で右大臣様のお命を奪うことも出来ますな」
「それも容易く」
「今の状況でも」
「あの御仁に忍として戦えるのは拙者とお主達だけじゃ」
 こうも言う幸村だった。
「だからじゃ」
「はい、ではですな」
「服部殿と十二神将に注意したうえで」
「仕掛けていきます」
「その様にな」
 こう言って幸村は十二神将を真田丸から出させ大坂城の南にいる軍勢に仕掛けさせた、この時家康は本陣にいたが。 
 その本陣でだ、大久保と話をしていた。
「お主には済まぬことをした」
「宗家のことで、ですか」
「お主が関りがないことはわかっておる」
 大久保家であるが傍流である彼はというのだ。
「そうした者ではない」
「それでもですか」
「お主も連座させたことはな」
 そうして大名から旗本に落としたことはというのだ。
「実にな」
「その様なことは言われぬことです」
 大久保は家康に強い声で応えた。
「上様は今や天下人なのですから」
「だからか」
「天下人のお裁きならばです」
 それならというのだ。
「それがし文句hありませぬ、ただこの度の戦ではです」
「武勲を挙げるか」
「この槍で持って」
 傍らにある見事な槍を見つつ答えた。
「そうさせて頂くだけです」
「そう言ってくれるか」
「それがしも三河武士です」
 だからだというのだ。
「槍で生きてみせまする」
「そしてか」
「大御所様をお守り致します」
「そうしてくれるか」
「槍奉行に任じて頂いたからには」
 それならばというのだ。 
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