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とある3年4組の卑怯者

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119 復讐

 
前書き
 今回からはみどりちゃんの学校全開のエピソードです。かなりハードボイルドな内容となりますが、登場人物が多彩となります。それにしてもみどりちゃんの学校を舞台にすると、どうしてもこの作品オリジナルのキャラが沢山出てきて「ちびまる子ちゃん」らしさがなくなってしまう・・・。 

 
 みどりは日直の仕事をしていた。宿題で集めた漢字ドリルを賢島先生から預り、返却のために職員室から3年3組の教室へと運んでいた。
(はあ~、大変だな・・・)
 みどりはドリルの山が崩れそうだった。その時、誰かとぶつかって転んでしまい、ドリルが散らばってしまった。
「きゃあ!」
「ウエッ!?気を付けやがれ!!」
「この野郎、そんなのも運べないなんてホント雑魚だな!!」
 みどりはドリルを拾いながら顔を上げるとそれは1組の男子、小倉(おぐら)こうへいと熊谷(くまがい)まなぶだった。
「な、なんですか!?その言い方は!謝ってくれたっていいじゃないですか!」
「は!おめえ吉川のくせになめた口聞くなよ!」
 怒りっぽい熊谷はみどりに文句を言った。
「泣き虫がんな口聞くなんて1億年早いぞ!ウエッ!」
 小倉は何かと『ウエッ』という口癖があった。
「そうだ、おめえが謝れ!」
 熊谷は落ちたドリルを拾ってみどりの顔にぶつけた。
「な、何するんですか!?」
「拾ってやったんだよ、ありがたく思いな!」
「そんなの拾ったと言えるんですか!?」
 みどりは言い返した。前の彼女ならすぐ泣くだろうが、今は泣かなかった。
「うるせえな!てめえは勝手に泣いていやがれ!」
「う、うるさいです!私はもう泣き虫じゃありません!」
「ウエッ!何言ってんだ、この問題児!」
 その時、堀が現れた。
「ちょっと、やめなさいよ!吉川さんが可哀想じゃない!」
「あ!?なんだ堀!こんなクズの味方すんのか!?やめろと言ったのによ!」
「私は見てたのよ!あなた達がぶつかるふりして蹴飛ばしたのを!」
「ウエッ!うるせえぞ!!大体なんでお前は問題児の友達になってんだ!やめた方がいいっつったのによ!ウエッ!」
「吉川さんは問題児なんかじゃないわ!それよりもドリル拾ってあげなさいよ!」
「は!?お前に言われる筋合いないね!」
「おめえがやれよ!ウエッ!」
 小倉と熊谷は去った。
「吉川さん、私も手伝うわ」
「あ、ありがとうございます・・・」
 その時、みどりのクラスの女子学級委員の西原(にしはら)まき子も現れた。
「あ、二人とも、大丈夫?私も手伝うわ」
「ありがとう、西原さん」
 堀、西原、そしてみどりは散らばったドリルを広い集めた。小倉と熊谷はその様子を見ていた。二人は堀が転校してきた当初、みどりをキモいとか問題児とか呼んで彼女に関わるなと堀に忠告していた。にも関わらず堀はみどりと仲良くなり、みどりはクラスでは馴染み続ける傾向にある。二人はそれが気にくわなかった。

 小倉と熊谷は校庭のジャングルジムによじ登っていた。
「堀って調子に乗ってるよな」
「ああ、あいつは問題児なんかと仲良くなって何が楽しいんだ!?最初は可愛いなと思ったが、なんか訳わかんねえな!ウエッ、ムカつくぜ!なあ、熊谷、あの女ボコボコにすっか!!」
「ああ、そうだな、あんなヤツ!」
 その時、一人の女子がその場を通りかかった。どうやら二人の話を聞いていたようだ。
「あれ、アンタ達堀の話してんの?」
「ウエッ?おめえ2組の阪手(さかて)じゃねえか」
 2組の阪手(さかて)もゆ。彼女も堀を快く思わない者の一人だった。
「もゆもアイツなんかムカつくんだよね。可愛いからって図に乗っちゃってさ・・・。しかも、あんな泣き虫とよく友達になれるなんて普通じゃないっしょ」
「おまえ自分が可愛くないからって恨んでんのか?」
「うるさいな。とにかくあんなのも吉川みたいにうざったくなるよ。とっとと転校前の学校に戻っちまえってのに」
「ああ、そうだな、マジで消すか」
「ウエッ?できんのか?」
「できなくねえぜ。お前らこないだのあの事件覚えてっか?昔町内会長やってたヤツの息子が嫌いなヤツの家族潰そうとしてた事件。結局失敗に終わったがその嫌いなヤツの息子を病院送りにしたんだぜ。あと協力してた女子も殺しかけたんだ。やればできるぜ」
 熊谷はその事件をテレビで見た事があった。戦時中にとある町で町内会長をやっていた各務田会蔵という男の息子の各務田出吉という男が暴力団と手を組んで因縁のあった人物の家族を抹殺しようとした事件である。その事件以降、清水市内の治安悪化が懸念されるようになり、市内のみならず、静岡県警の警察官達も出向し、異変がないか各町内を徘徊するようになっていた。
「ウエッ、おもしれえじゃねえか」
「それにそいつは集団で攻撃しようとしてたから他にムカついてるヤツ集めたほうがいいな」
「うん、そうしよう」


 みどりや堀のクラスメイトである泉野はこの日は日直の為早めに登校していた。今日は一番乗りで教室に入ったのだった。彼の席は堀の前である。後ろの戸から入った泉野は早速自分の机にランドセルを置いて教材を机の中にしまおうとしたのだが、その前に堀の机の上に目が止まった。
(っておい、何だよこれ!?)
 泉野が見たものは落書きだった。それを見て泉野は体が震え、動けなくなっていた。少しして、倉山がその場に入った。
「よお、おはよう、泉野。ん、どうかしたのか?」
「あ、倉山君。大変なんだ。これを見て欲しいんだ・・・」
「ん?堀の机か。どうかしたのか?」
 倉山は堀の机の落書きを見ていた。
「だ、誰がこんな事を・・・」
「ぼ、僕は違うよ。本当に僕が入って来た時からされていたんだ!」
「わかった。しかし、これを堀が見たら・・・」
 泉野と倉山は困惑した。そして次々とクラスメイトが入ってくる。皆はその落書きに注目した。

 みどりは登校中、堀を見つけると声を掛けた。
「堀さん、おはようございます!」
「あ、吉川さん、おはよう」
「昨日は私を庇ってくれて本当にありがとうございます・・・」
「ああ、いいのよ、あの二人が悪いんだから」
「はい・・・」
 そして二人は学校に入った。しかし、3組の教室に入る直前、何かしら騒ぎが聞こえた。
「何でしょうか・・・?」
 二人は入った。その時、皆が振り向いた。
「ほ、堀・・・」
「皆さん、どうしたんですか・・・」
「大変よ、堀さんの机に落書きが!」
 矢部が焦るように答えた。
「え!?」
 堀は自分の机の落書きを見た。そこには大きな字で「ほりべんじょ」と書かれてあった。
「いや、いやあああーーーっ!!」
 堀は絶叫した。
「だ、誰がこんな事やったんですか!?」
「分からない。最初に教室に入ったのは泉野だが、その前から落書きされていたんだ」
 倉山が答えた。
「そうだったんですか・・・」
「それにしてもこれ油性ペンで書かれてあるから雑巾で拭いてもなかなか落ちないわよ」
「なら消しゴムで地道に消すしかないですね」
 みどりは消しゴムを取り出して消そうとした。
「でも消すには時間がかかるわよ・・・」
 桐畑(きりばた)みち子がそう言うと、とにかく先生に言う事を勧めた。

 朝の会が始まり、賢島先生は堀の机の落書きについて取り扱った。
「堀さんの机に落書きしたもの、正直にここで申し出なさい。一体誰なんだ?」
 しかし、誰も名乗り出る者はいなかった。その時、西原が挙手をした。
「先生」
「ん、なんだ、西原?」
「もしかしたら他のクラスの人がやった可能性があるかもしれません」
「そうか・・・。分かった。後で他のクラスの先生と話し合ってみよう」
 こうして朝の会を終わらせた。堀の机については今日か明日のうちに洗剤を使って落書きを消すという事になった。しかし、みどりは堀への攻撃は続きそうな予感がした。
(もしかして、小倉さんと熊谷さんが・・・?)
 みどりは昨日自分を庇った堀に文句を言った小倉と熊谷の顔が浮かぶと、彼らに怒りを覚えた。 
 

 
後書き
次回:「攻撃(いじめ)
 堀への凄惨ないじめが始まった。他のクラスの者からの容赦ない攻撃に対して、みどりが、そしてクラスの学級委員の倉山や西原が鎮圧に動き出す・・・。

 一度消えた恋が蘇る時、物語は始まる・・・!! 
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