儚き想い、されど永遠の想い
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408部分:第三十一話 夏の黄金その十二
第三十一話 夏の黄金その十二
「サラダ等にも出されます」
「サラダにもですか」
「古代羅馬からそうして食べられてきていますので」
「羅馬といえば」
真理はここで言った。
「素晴らしい街なのですね」
「欧州はそこからはじまったと言っても過言ではありません」
「希臘と共にですね」
「はい、そのうちの一つが羅馬なのです」
他ならぬその街だというのだ。
「永遠の都とも言われています」
「永遠ですか」
「はい、私達はその羅馬も今食べるのです」
「この日本にあってですね」
「それも考えてみれば凄いことですね」
「そうですね。かつては考えられませんでした」
微笑んで話していく。そして遂にだった。
まずはサラダが来た。そのサラダに紅の花びら達があった。それこそがだった。
「薔薇ですね」
「そうです。これこそがです」
義正はその通りだと真理に話す。
「薔薇のサラダです」
「奇麗ですね」
緑のレタスや胡瓜、白のスライスされた玉葱の中にそれがあった。その赤がだ。緑や白をさらに際立たせてだ。そこにあったのである。
それを見てだ。真理は言ったのである。
「はじめて見ました」
「どうでしょうか」
「奇麗ですね」
次はこう言った真理だった。
「緑に白、そして」
「そこに赤ですね」
「鮮やかですね。伊太利亜の国旗の様です」
「ははは、そうですね」
真理の今の言葉にだ。義正は顔を崩して笑った。
そのうえでだ。彼もこういうのだった。
「確かにです、この色彩は伊太利亜ですね」
「あの国の国旗は緑に白、それに」
「赤ですからね」
「その三色ですね。私も今気付きました」
実際にだ。義正はそのサラダをあらためて見る。それは確かに伊太利亜だった。
そうしてだった。彼は真理に今度はこう述べたのだった。
「先程羅馬の薔薇のお話をしましたが」
「食べられていたということですね」
「はい、それ以外にも非常に愛されていました」
「食べられるだけあってですか」
「そうです。非常に愛されていました」
「その羅馬が今伊太利亜になっていますね」
民族的にはかなり混血してしまい当時の羅馬人と現在の伊太利亜人はかなり違ってきている。ゲルマンや他のラテン系、それにバイキングの血も入っているのだ。ハプスブルク家が入ったりもしている。
だが義正は今はそのことをあえて詳しく話さず、話が混乱することを避けてそうしてだ。真理にその薔薇の話をしているのだった。
「伊太利亜人の薔薇を愛する気持ちは今も残っているのです」
「だからこそこうして国旗にも」
「なるのでしょう。それではです」
「はい、このサラダをですね」
「食べましょう」
ドレッシングがかけられたそのサラダはだ。実に美味なものだった。
薔薇の花弁を実際に食べてだ。真理は微笑んで述べた。
「はじめて食べましたが」
「如何でしょうか」
「香りで他の野菜の味を引き立てるのですね」
「薔薇自体にはそれ程ありませんね」
「はい、味は」
「ただ。薔薇のその香りで」
それにこそ重点があった。薔薇のサラダにはだ。
「サラダをこのうえなくかぐわしいものにさせていますね」
「そうですね。だからこそ」
「美味しいです」
こう言う真理だった。そのうえでサラダを食べていってだ。
スープも飲みだ。魚にテリーヌ、そしてメインディッシュの牛肉のステーキ、レアにしたそれとパンを食べてからだ。デザートを迎えた。
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