儚き想い、されど永遠の想い
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397部分:第三十一話 夏の黄金その一
第三十一話 夏の黄金その一
第三十一話 夏の黄金
義正は最初にだ。真理を海に案内した。無論義幸も一緒だ。
三人、子供は真理の背中にある。その三人でだ。
海に行きだ。そうして青い海と空、白い浜と雲を観る。そうしてだった。
義正はだ。真理にこう言うのだった。
「これまで何度も観ていますね」
「海は」
「はい、ですが今の海はどうでしょうか」
今現在の海についてだ。彼は真理に尋ねたのである。
「この海は」
「いつもと変わりませんが」
真理は最初はこう言った。その青い、何処までも深い青の海を観てだ。
「ですがそれでも」
「それでもですね」
「これまでの海と違って観えます」
それは言うのだった。
「やはり。これが間違いなく」
「最後だからですね」
「私が最後に観る海」
真理は中に銀色、波のそれを輝きと共にみせる海を観て言うのだった。
「だからですね」
「最後ですか」
「はい、私がもう海を観ることはありません」
その海を観ながら話していく真理だった。
「もうこれで」
「そうですね。もう」
「はい、その最後の海です」
真理は言っていく。
「ですから余計に」
「感慨がありますか」
「そのせいですね。これまで観たどの海よりも」
真理が観ただ。どの海よりもだというのだ。
「奇麗に見えます」
「そうですか」
「義正さんとも何度も海は観てきましたが」
「それでもですね」
「今観る海が最も奇麗です」
真理は言いながらだ。海からだ。
浜も観る。空と雲もだ。そうしてだった。
海以外のそうしたものについてもだ。真理は話した。
「夏の空ですね」
「何処までも青く奇麗な」
「サファイアの様です」
これは空だけを観ての言葉ではなかった。
「海と共に。宝石を溶かした様に」
「そして浜と雲は」
「青とは正反対に。それでいてどちらも」
「奇麗ですね」
「とても」
まさにそうだとだ。真理は話していく。
「白と青は。どちらも」
「色は違っていてもですね」
「清らかですね」
「はい、この青と白の後は」
「黄金ですか」
「この前お話させてもらったそれです」
青と白の中でだ。その話になった。
「御覧になられますか」
「お願いできますか」
「喜んで。それでは」
「そこに行きましょう。ですがその前に」
義正は優しい、夏だが涼しげな微笑みで真理に話す。二人が今いる砂浜は風もあり日差しがあろうとも涼しいものだった。その中にいてだ。
義正はだ。こう真理に述べたのである。
「あれを召し上がられますか」
「あれですね」
「はい、アイスクリームです」
言うのはそれだった。
「それをどうでしょうか」
「そうですね。夏にはアイスクリームですね」
「あれが最も美味しいですね。夏には」
真理はアイスクリームを気に入っていた。以前真理と共に食べたそれをだ。
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