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白粉婆

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第五章

「来たんだよ」
「成程ね、最初前以上に馬鹿になったのかって思ったわ」
「ラブアンドピースの紳士だってか」
「だから馬鹿って言ってるでしょ」
「やれやれだな、じゃあパフェ頼むな」
「わかりました」
 接客自体は普通だった、しかし。
 及川はパフェを食べて店を出る時にだ、いつも二人が見て話をしている老婆の横を通った、酒を飲みつまみを食べている彼女を。
 そしてだ、会計をする紗季に言った。
「おい、あのお客さんな」
「あのお婆さん?」
「そう、あの人あれだろ」
「あれって」
「妖怪だろ」
 こう言ったのだった。
「あの人な」
「何言ってるのよ、あんた」
 紗季は来店した時の彼を見た時以上に冷めた目になって返した。
「妖怪って」
「まあ聞けよ、とにかくな」
「とにかく?」
「ちょっと話すな、まずはお会計払うからな」
「有り難うございました」
 とりあえずそれは終わった、そして。
 及川は万里花と紗季がいつもいる調理場の前に連れて行ってだ、その老婆のことを話した。
「あのお婆さん妖怪って行ったけれどな」
「酔ってるの?あんた」
 紗季は及川にあらためて言った。
「ひょっとして」
「それか馬鹿がさらに馬鹿になったの?」
 万里花も先程以上に冷めた目になっていた。
「それでそう言うの?」
「違うからな、とにかくな」
「あのお婆さんは妖怪だっていうのね」
「まず今時あんな恰好の人がいるかよ」
 このことから言う及川だった。
「そもそもな」
「それはそうだけれど」
「着物に編み笠、草履に足袋とか」
「あと白粉ね」
「小判も出したし」
「他にも色々おかしかったし」
「イカリングご存知じゃなかったりお酒は日本酒だけと思っていたり」
 二人もそれぞれ老婆で気付いたことを話した。
「何かとね」
「現代じゃないけれど」
「それに白粉だろ」
 及川もこのことについて言及した。
「あのお婆さん白粉を顔全体に塗ってるだろ」
「真っ白になる位にね」
「それでいい匂いもするわ」
「それそのままだよ」
 まさにとだ、及川はここでまた言った。
「白粉婆だよ」
「白粉婆って」
「何その名前」
「だからあのお婆さんの名前だよ」
 及川の返事はあっさりとしたものだった。
「それがな」
「というかあのお婆さん本当に妖怪?」
「そうなの」
「そうだろ、だから今あんな恰好の人がいるか」
 またこのことを言う及川だった。
「そもそもな」
「それはそうね」
「小判を出す人なんていないし」
「そうだろ、あのお婆さん妖怪だよ」
「白粉婆なの」
「その妖怪なの」
「そうだよ、間違いなくな」
 及川は二人に言い切った。
「あの人妖怪だよ」
「まさかと思うけれど」
「けれど有り得るわよね」
「ええ、あんな変わった外見の人とかね」
「オイッチはもっとだけれど」
 紗季はクラスでの及川の仇名も出して話した。 
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