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真田十勇士

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巻ノ百二十六 軍議その六

「そこからじゃ」
「負けますな」
「大坂から退くことになる」
「そうなってしまえば」
「その時は」
「幕府の権威が落ちる」
 秀忠はこのことを懸念しているのだ、幕府の政にとって権威という目に見えないが確かな柱はどうしても必要だからだ。
「それはならんからな」
「はい、断じてです」
「今はですな」
「何としてもです」
「真田殿左衛門佐殿に対しても」
「負けてはなりませんな」
「しかしわしはな」
 秀忠、彼はというと。
「戦は不得手じゃ、それであの者と戦うと」
「上田の時の様にですか」
「遅れを取ってしまう」
「そう思われてですか」
「どうしても」
「そうならぬ様にせねばな、わしは父上と共に大坂城の南に布陣するが」
 しかしというのだ、それでも。
「出来る限りはな」
「はい、真田丸は攻めずにおきましょう」
「大御所様も積極的に攻めるおつもりはないそうですし」
「それではですな」
「この度の戦ではです」
「積極的に行きましょう」
「そうしていきましょう」
「そうじゃな、攻めぬのも戦というし」
 それならというのだ。
「わしはこの度の戦は攻めぬぞ」
「そうしましょう」
「そしてそのうえで」
「真田丸も攻めずにおきましょう」
「そうせよ、戦は出来るだけ早くしかも民を困らせずに終わらせて」
 むしろそこからのことをだ、秀忠は考えていた。それで言うのだった。
「そうしてな」
「大坂を治める」
「それが肝心ですな」
「これはわしもわかる」
 戦が不得手な秀忠であるが政は違う、大坂にしてもどうして治めるかをわかっていてそのうえで考えているのだ。
「大坂は幕府に必要じゃ」
「はい、それでは」
「これよりですな」
「大坂に進みましょう」
「我等も」
 秀忠が率いる軍勢も大坂に向かっていた、そうして政宗もそうだったが彼は伊達家の本陣で苦い顔をして彼の家臣達に言っていた。
「少将殿は何としてもじゃ」
「大坂に行ってもらいましょう」
「また勘気を出されていますが」
「何とか抑えて頂き」
「そのうえで」
「さもないと当家も言われる」
 彼の舅である政宗がというのだ。
「だからじゃ」
「大坂まで行ってもらい」
「戦に加わってもらいましょう」
「中々兵を進めて下さいませぬが」
「それでも」
「大坂に来て頂ければ後はわしがお助けする」
 政宗自身がというのだ。
「戦になればわしのものじゃ」
「はい、采配の実は殿が執られ」
「そうしてですな」
「少将殿のことも落ち着いていられる」
「そうなりますな」
「そうじゃ、だからな」
 それでというのだ。 
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