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青汁

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第二章

「御前何で青汁好きなんだ?美味しいとか言ってるけれどな」
「ああ、そのことなんだ」
「そもそも何で飲みはじめたんだよ」
 小野くんにこのことを尋ねるのだった。
「それで」
「そのこと言ってなかったかな」
「好きなのは知ってるけれどな」
 それでもというのだ。
「そこまではな」
「言ってなかったんだ」
「聞いてもいなかったよ、多分誰もな」
「そうだったんだ」
「ああ、それでな」
「どうして飲む様になったか」
「聞かせてくれるか?」
 このことにかなり興味を持ってだ、小野くんに尋ねた。
「よかったらな」
「うん、実はね」
「ああ、どうして飲みはじめたんだ」
「実は近所のお姉さんに子供の頃飲ませてもらったんだ」
「近所の?」
「美味しいって言われてね。四つの時だったかな」 
 記憶というものが形成されてくる頃だろうか。
「その時にね」
「近所のお姉さんにか」
「家に遊びに行ってご馳走になったんだ」
「そうだったのかよ」
「美味しいって何度も何度も言われて」
 そのうえでというのだ。
「飲んだんだ、それで飲んだら」
「美味いって思ったのかよ」
「そうなんだ」
 実際にとだ、小野くんはクラスメイトに答えた。
「そう思ったんだ、言われて飲んだら」
「それ暗示だろ」
 クラスメイトは小野くんに目を座らせて問うた。
「どう考えても」
「そうかな」
「そうだろ、美味い美味いって言われて飲んでな」
 そうしてというのだ。
「飲んだんだろ」
「そうなんだよ」
「それじゃあな」
「僕が青汁を好きなのは」
「暗示からだよ、しかしその暗示がな」
「強いっていうのかな」
「随分強いな」
 クラスメイトは小野くんに言い切った。
「俺も驚く位にな」
「実際僕は美味しいって思うよ」
「今もそう思える位だからな」
「僕はこの人にかなり影響を受けているけれど」
 小野くんは表情のないその顔で述べた。
「好物についてもだったんだ」
「そうだな、その人の言葉で御前は性格も決まったんだろ」
「そうだよ」
 実際にとだ、小野くんはクラスメイトに答えた。
「僕はね」
「それで好きなものもだからな、一体どんな人なんだ」
「いい人だよ」
 小野くんは口元を微かに微笑まさせてクラスメイトに答えた。
「本当にね」
「そんなにか」
「うん、いい人だからね」
「御前もそこまで影響を受けているんだな」
「そうだろうね」
「成程な、それじゃあこれからも青汁はか」
「飲んでいくよ」
 小野くんはクラスメイトにこのことは当然だという口調で返した。
「だって僕にとってみれば凄く美味しいからね」
「そうだよな、じゃあな」
「今日も飲むよ」
 小野くんはこう言って実際にこの日も青汁を飲んだ、他の者にとってはどうしようもなくまずいものだがそれでもだった。
 小野くんは自分に青汁を飲ませてくれたその人に感謝もしながら青汁を飲み続けた、その味は彼にとってはもう病みつきになる程美味しかった。


青汁   完


                    2018・2・25 
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