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艦隊これくしょん~男艦娘 木曾~

作者:V・B
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第五十二話

 
前書き
どうも、戦いの合間に書いてたらいつもより書けてしまつまっていた…………アッレレー、オッカシイナー。まぁ、どうとでもなりますよ。 

 


 
 
―海上―
 
 
 
 
 
 
摩耶達の護衛艦隊は、なんとか逃げれただろうか。
 
たった一隻の深海棲艦にぶちのめされたオレは、そんなことを考えていた。
 
オレだけじゃない。周りには、海面に倒れ込んだまま動けない奴らだらけ。
 
今、この場で立っているのは………………あの悪魔だけだった。
 
「ンー、中破一歩手前ッテトコカナ。モウ少シダメージヲ与エテタラ変ワッテキタカモネ。デモ、久シ振リニ楽シメタヨ!」
 
…………戦艦レ級は、俺たちを見下ろしながら狂気的な笑顔を浮かべていた。
 
くそが………………このままじゃオレは達は、こいつに悠々と止めを刺されちまう…………!
 
なのに…………指一本動かねぇよ…………ちくしょう…………。
 
「サァテ、生キ残ラレテモ厄介ダシ、死ンデモラオウカナ。」
 
レ級はそう言うと、砲門を此方へと向けてきた。
 
 
 
 
 
 
 
 
……………………あー、オレ、死ぬんだ。
 

 
 
 
 
 
 
 
こんなところで、惨敗して、何も出来ずに死ぬんだ。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
結局、オレ達は死ぬのが運命なんだろうか。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
…………………………あーあ。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
死にたく、ねぇや。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「待てやこら。」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
誰かが、そう言った。
 
「……………………ヘェ、起キ上ガレルンダ。」
 
レ級はそう言うと、声のした方に振り向いた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
そこには、さっきより明らかに被害の度合いが軽くなっている、千尋の姿があった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「なっ……………………なん、で。」
 
ありえねぇ。こんなこと、ありえねぇ!
 
オレは千尋の姿を見て目を見開いた。
 
確かに、アイツはレ級の砲撃を食らって大破したはずだ。そのまま吹き飛んだ場所で倒れてた。
 
なのに、アイツの艤装の傷は中破程度だ。それに、身体の怪我は治っていないから、間違いなく被弾している。
 
「……………………アンタ、男カイ?ソレニ、大破シタハズダロ?」
 
レ級はそんな千尋を見て怪訝そうな顔をした。まぁ、そうなるわな。おっぱい無いんだし、なんか起き上がってるし。
 
「…………あぁ。なんか色々あってな。今ここで戦ってる訳だ。」
 
千尋はなぜか回復しているとはいえ、肩で息をしていた。とてもじゃないけど、戦えるような状態じゃない。
 
「フゥン、面白イノガ出テキタモンダネェ。ソレデ?君一人デドウスンノ?」
 
レ級はさっきまで見下ろすように顎を上げてオレたちを見ていたが、今は顎を引いて千尋を睨んでいた。まるで、観察しているみたいだ。
 
…………今までは、油断してたってことかよ。舐めやがって。
 
まぁ、それでもボロクソにやられたんだけどな。何も言えねぇ。
 
「…………逆に聞く。どうしたら見逃してくれる?」
 
千尋はそんなことを言っているが、オレは千尋の話を聞いていられないものを見ていた。
 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
千尋の艤装が、少しずつ自然と直っていっていた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「…………ウソ…………だろ…………。」
 
オレの近くに倒れていた長門さんは、目を見開いていた。そりゃそうだ。どう考えても有り得ねぇもんが目の前で起こってるんだからな。
 

 
 
―どこかの空間―
 
 

「どもー!シリアス中にこんにちはー!今回はこの作品での回復の仕組みを解説致します!
 
この作品でのダメージは大まかに二種類に分けられて、『艤装ダメージ』と『身体ダメージ』があります。
 
基本的に艦娘へのダメージは自分の艤装や装備(服)が肩代わりしてくれます。皆がダメージを食らう度にムフフな感じになってるのはそーゆーことですね。
 
そして、艤装では受けきれなくなったとき、初めて肉体にダメージが入ってきます。それが身体ダメージ、要するに怪我です。一般的には、中破以上のダメージを受けたら肉体にダメージが来ます。

艤装ダメージは、明石さんのとこの工廠にある専用のドッグにぶちこむことで回復します。回復したあとは明石さんが整備を行います。
 
身体ダメージは、最初に入渠ドックに入ったあとで、実際の怪我と同じように治療します。入渠する理由としては、そうしないと深海棲艦のダメージが回復しないからです。ちなみに、欠損してしまった箇所は当然ながら回復しません。
 
さて、それではカメラをお返ししましょう!お相手は、最近作者の胃薬の飲みっぷりにドン引きしながら、一緒にイベント攻略しようとしている、青葉でした!」
 
 
 
 
 
 
 
―海上―
 
 
 
「…………フゥム、確カニ、目ノ前デ面白イ物ヲ見セテ貰ッタシナァ…………ソウダ。」
 
レ級はそう言うと、今までで一番悪意のある笑顔を見せた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「君ノ片腕ヲ頂戴?ソウシタラ見逃シタゲル。」

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
こいつは、どこまでも悪魔だった。
 
オレは歯軋りをして、レ級を睨む。
 
この…………ド畜生が…………。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
ザシュッ!
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
千尋は、右手に握っていた軍刀で、左肘より上辺りを切り落とした。
 
 
その場に居た全員が、目を見開いていた。オレは、やっぱりというような顔をした。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
この場面で、こいつが躊躇するわけねぇ。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「ほらよ。さっさと持ってけ。」
 
 
 

 
 
 
 
 
千尋は、切り落とした腕を拾い上げると、レ級に差し出した。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
足元の海水は、赤く染まっていた。
 
 
 
 
 
 
 
 
―三十分前―
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「さてと、全員今すぐ遺書書いといてくれ。」
 
長門さんはとんでもないことを言うと、どこからか取り出した人数分の紙とペンを全員に投げて寄越した。
 
全員、さっきより表情が暗く、重くなっていた。
 
どうやら、今までは戦艦レ級はeliteクラスまでしか発見されてなかったらしいが、今回の相手はその二つ上、戦艦レ級改flagship。ランク的には最高ランク。
 
皆、ペンを走らしていた。手が震えて、上手く書けてない奴が多かった。
 
木曾は、サックリと書き終わっていた。
 
長門さんは、スラスラと書いていた。
 
時雨は、遠くを見ていた。
 
冬華は、涙目になっていた。
 
金剛さんは、頭を抱えいた。
 
赤城さんは、何度もペンを落としていた。
 
加賀さんは、相変わらず無表情だった。
 
羽黒さんは、しゃがみこんでいた。
 
那智さんは、羽黒さんを慰めようとしていた。
 
北上は、上を向いて目を閉じていた。
 
神通さんは、首を横に振るだけだった。
 
俺は…………。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「だからどうした。」
 
 
 
 
 
 
 
 
紙とペンを長門さんに投げ返した。
 
全員、こっちを見ていた。
 
皆驚いてるが、木曾と冬華だけは、納得したような顔をした。
 

 
 
 
 
 
 
 
 
「誰が死ぬ準備なんかするかよ。帰れるに決まってらぁ。始まる前から負けてたまるかよ。」
 
 
 
 
 
 

 
 
俺がそう言うと、木曾はビリビリと自分の持っていた紙を破り捨てた。
 
「…………オレがやろうとしてたことを横取りするんじゃねぇよ。」
 
木曾はこのとき紙に、『死なねぇよ。』と書いていたらしい。流石だ。
 
「…………っぽい。まだ拓海くんの子供産んでないっぽい。」
 
夕立も、紙を破り捨てた。
 
「…………ッフ。私が逃げ腰じゃ勝てるわけも無いよな。」
 
長門さんも、紙を破り捨てた。
 
「…………そうだよ、勝つんだ!」
 
「負けない!絶対負けないんだ!」
 
「帰るんだ!提督からも言われたんだ!」
 
「死んでたまるか!」
 
皆、次々に破り捨てていった。
 
「…………上手く行ったじゃねぇか(ボソッ)。」
 
木曾は俺に近付いてくると、軽く小突きながらそう言った。
 
「…………やっぱり、お前にゃ隠し事は無理だな。」
 
実は、出撃準備で艤装を提督に着けて貰ってるとき、提督に頼まれていた。
 
 
 
 
 
 
『もしかしたら皆が沈んだり遺書を書き出したりするかも知れないから…………そのときは、頼むね。』
 
 
 
 
 
 
「人選バッチリじゃねぇかよ。」
 
木曾は笑っていた。俺は笑えなかった。
 
「さてと…………それじゃあ、進むぞ!そろそろ見えてくる筈だ!」
 
長門さんがそう言うと、皆がそれに付いていった。
 
皆、生きようとし始めていた。これなら、まだなんとかなるかもしれない。
 
俺はそんなことを漠然と考えていた。
 

 
 
 
 
―六分後―
 
 
 
 
 

「…………どうやら、あれで間違いないようね。」
 
加賀さんは遠くを見ながらそう言った。
 
目線の先には、海の上にたたずんでいる人影を見ていた。その先には、固まって立っている人影。あれが恐らく春雨達だろう。まだ危害は受けていないらしい。
 
んで、あれが戦艦レ級と…………。
 
人型ではあるが、尻のところから何やら尻尾のようなものが生えていた。やっぱり、深海棲艦だ。
 
レ級は、上を見上げていた。
 
「…………流石に、おかしいよな。」
 
俺はボソッとそう言った。
 
「あぁ。報告があったのがだいたい一時間位前。なのに、アイツは全く動いてない。」
 
木曾が俺の意見に賛同してくれた。
 
「何かを待ってる…………?」
 
俺がそう言った時だった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「ヤァ、艦娘ノキミタチ。」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
突如、頭上から声がした。慌てて上を見ると、敵の艦載機が二機程居た。パッと見た感じ、攻撃機能は付いてないらしい。どうやら、これを通信機代わりにしてるらしい。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「ココデ後ロノ艦隊ヲ抑エテタラ、本隊ガ来ルト思ッテタンダケド…………ビンゴダネ。」
 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
待ってたのは、俺達かよ…………っ!
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「サァテ…………キミタチハ、アタシヲ沈メレルカナァ!?」
 

 
 
 
 
 
 
 
地獄の、始まりだった。
 
  
 

 
後書き
読んでくれてありがとうございます。今回は長くなったのでキャラ紹介のコーナーはお休みです。実は、レ級はこの小説を書き始めた頃から出演が決定していました。やっと出せたって感じです。

それでは、また次回。 
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