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DQ8 呪われし姫君と違う意味で呪われし者達(リュカ伝その3.8おぷしょんバージョン)

作者:あちゃ
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第十六話:アナタは神を信じますか?

 
前書き
またまたウルポンが大活躍。 

 
(マイエラ地方・マイエラ修道院)
ゼシカSIDE

まだ日が暮れきらない時刻……私達の船はマイエラの船着き場へ到着した。
本当なら、この船着き場で宿を確保し、出立は翌日にするべきなのかもしれなかったが、リーザス地方から出た事の無い私は、早く他の地も見てみたくなり、少し我が儘を言って出発してしまった。

ウルフは困り顔で慎重に休む事を提案したが、地図を見る限り近くにマイエラ修道院という場所が有ったので、宿ならそこで確保すれば良いと言って、自分の意思を貫いた。
有難い事にラングストンさんも『修道院なら無料(ただ)で泊めてくれるかもしれませんよ』と援護もしてくれた。

結局このパーティーのリーダーである、アハトが先に進む事を決め、暮れゆく太陽を気にしながら船着き場を出立した。
地図で見ると直ぐ近くの修道院も、実際歩くと距離が有り……
ウルフの『日が沈む前に到着出来なかったな』という、台詞に何も言えなくなる。

暗くなればモンスターの気性も荒くなり、戦闘するのも一苦労。
当初から言われてた通り、ウルフとリュリュさんとラングストンさんは戦ってくれず、集団戦闘が初めての私は、アハトとヤンガスに助けられてばかりだ。

何とか修道院まで辿り着いたが、既に辺りは真っ暗……
チラリとウルフの顔色を覗ったが、怒ってる様子は無く私と目が合っても笑顔を見せてくれた。
嫌味の一つも覚悟していたのだが、やっぱりそんなに嫌な奴じゃ無いわ。

「大分暗くなってしまいましたね。 ……とは言え無事に到着した事ですし、早速修道院にお願いして泊めてもらいましょう。上手く行けば夕飯時ですし、食事にも有り付けるかもしれませんよ?」
「そりゃぁ良いでげすね。アッシはもう腹ぺこでがすよ」

朝からずっと機嫌の悪いリュリュさんを意識しながらラングストンさんが場の雰囲気を明るくする為、図々しい事を笑顔で言った。
その事に気が付いてるヤンガスも、同じ様に戯けて返事を返した。

普段だったらウルフが何らかの反論(?)をするのだろうけど、何故だか今回は黙っている。
と言うか、この大陸に来てからはそんなに嫌味を言ってない気がする。
リュリュさんが静かだからかな?

さて……マイエラ修道院に入ると、多数の参拝客が集っている。
冒険の基本は情報収集……そうウルフは船で言っていたが、早速それを実行。
修道僧を含め、参拝客等にも色々聞き、何の役に立つのか分からないが情報を集めている。

「おい……ここ、あんまり良い所じゃ無さそうだぞ」
集めた情報を吟味したのか、ウルフがこの修道院の事を批判する。
「ですが今日はここに泊まるしか無いでしょう……」
ラングストンさんはウルフの相手に慣れてるのか、選択肢が他に無い事を指摘。

「でも現在の騎士団長には色々あるみたいで、腹違いの弟と犬猿の仲らしい。それと関係あるのか分からんが、其奴が騎士団長に就任してから、多額のお布施を要求される様になったらしい。頼んでも泊めてくれるかな?」

「じゃぁ如何しますか? 船着き場へ戻りますか!?」
妙にクレームを言ってくるウルフに、アハトが珍しく反論をした。
ここに泊めてもらうしか無いのだから、兎も角も頼み込むしかないのだろう。

「俺はその選択肢でも構わないよ」
「ウルフ殿が力を貸してくれるのなら、それもアリですが……一っ飛び協力してくれます?」
まさかの言葉にラングストンさんが何かを期待した発言をする。

「ヤダよ。何で俺が?」
「じゃぁグチグチ言わないでください。今日は泊めてもらうんですから、下手な事を言って気分を害されたら泊めてもらえなくなるでしょう」

リュリュさんに厳しい事ばかりを言うウルフに、彼女が好きなラングストンさんも厳しく反論。
だがウルフさんには効果が薄そうだ……
軽く肩を竦めただけで、気にした様子は無い。




一通り修道院内を見て回り、責任者らしき人が見当たらなかったので、何やら重警備な奥へと進もうと、二人の厳つい騎士団員の間を通ろうとした途端……
「ここより先は許しを得た者しか入れてはならぬと決められている! それなのに近付いてくるとは怪しい奴め!」(ドン!)

そんな決まりは知る由もないのに、横柄にも近付いてきた私達を『怪しい奴』と敵視し、先頭に居たウルフの肩を力一杯突き飛ばした。
足腰が鍛えられていてバランスの良いウルフは、かなり力強く突き飛ばされたにも拘わらず、倒れる事無く騎士団員を睨み付ける。

「如何い「誰も入れるなとは命じたが、手荒なまねをしろとはは言っていない! 我が騎士団の名を汚す様な行いは慎め……」
かなり不機嫌な表情で文句を言おうとしたウルフの台詞を遮って、私達の頭上にある二階の窓から一人の男が顔を出して、横柄な騎士団員を叱り付けた。

「こ、これはマルチェロ様……申し訳ございません」
「私の部下が乱暴を働いた様で申し訳ございません。だが余所者は問題を起こしがちだ。この修道院を守る我々としては見ず知らずの旅人を易々と通す訳にはゆかぬのだ。唯でさえ、内部に問題を抱えているのに……いや、話しが逸れたな」

マルチェロと呼ばれる隊長の一言で、横柄な騎士団員が頭を下げた……私達にではなく隊長に!
その隊長も言葉では謝罪してるが、表情からして悪びれて無い。
ムカつくわね……

「この奥は修道士の宿舎。君達には無縁の場所では無いかね? さぁ行くが良い。部下達は血の気が多い。次は私にも止められるか判らぬ」
ムカつく隊長が、ムカつく顔で、ムカつく言い方で私達を追い出そうとする。
文句の一つも言ってやろうとした瞬間……

「おいデコっぱち! 貴様は自分が何を言ったのか解ってるのか?」
「な……デ、デコっぱち!?」
今にもブチ切れそうな顔のウルフが凄く的確な表現で隊長を口撃(こうげき)した。

「部下が血の気が多いからと言って、上司の貴様には止められないと宣言したんだぞ! 貴様は自らの無能さを高らかに宣言したんだ! 如何なる職業においても、上司たる資質の最たるは“部下の統制”をとれること……それに尽きる! にも拘わらず、貴様は自ら部下を諫められないと宣言! 心が広いのと、部下の暴走を制御しないのは全然違う事だ! 言っておいてやる……貴様は心を広くしてるつもりでも、実際に広がってるのはデコだけだ! 股間の毛を植毛した方が良いんじゃねーのか?」

流れる様に紡ぎ出されるウルフの言葉に、思わず笑いそうになって顔を横へ逸らした。
すると私の目に入ってきたのは、リュリュさんとラングストンさんの困り果てた表情だった……
(ウルフ)をよく知ってる二人が顔を顰めてるって事は……拙いの?

「き、貴様!? 無礼にも程があるぞ!」
横柄な騎士団員二人が、ウルフの言葉に顔を赤くして反応する。
笑いそうな感じは微塵も無い……心底怒って居るみたいだ。

「貴様等も、謝るのならば先ずは俺にであろう! 実際に暴力を振るわれたのは俺なんだからな……だが貴様等の様な人種は我が国でも見た事があるぞ(ニヤリ) 軍人であるにも拘わらず、任せられた村に対して武力を見せ付け、金品のみならず婦女暴行までした愚か共と同じ反応だ! 事がバレ、被害者に謝罪せずに、事態を把握した王様に頭を下げた。全く同じだなぁ……悪いなど微塵も感じてない輩の反応だ。この場さえスルーすれば、また別の場所で略奪や殺戮を行おうって考えてるんだろ?」

“略奪や殺戮”って……
そこまで大きな話しじゃないんじゃない?
余りにも危険すぎるウルフの言葉に流石に止めさせようとラングストンさんを見る……だが私と目が合うや、“諦めろ”と言わんばかりに首を横に振った。

「わ、私の部下は……その様な蛮行をしてはいない!」
「何を言うか無能デコ! 先程貴様が部下の統制をとれてないと宣言したんだぞ! 神の名の下に、如何なる欲望を叶え続けてきたか……貴様が把握してないだけであろう!」

肩を少し小突いただけで、ここまで悪人に仕立て上げられるの!?
怖い……怖いけど、如何してリュリュさんとラングストンさんは彼を止めないの?
もしかして止められないの!?

アハトとヤンガスも私と同じ様に彼を止める様に二人へ目で訴えている。
だが反応は同じで、リュリュさんなんか顔の前で手を横に振り、声を出さずに口だけで『ムリです』と伝えてくる。

「き、貴様の国が既に瓦解してるだけであろう! 我が騎士団を同じにしないでもらいたい!」
「ほ~う……お前は俺が誰だか知らないのか? まぁ無理も無いな……俺は極力表舞台に出ない様にしてきたし、貴様も新任で世界の著名人の事に詳しくないのであろう(嘲笑)」
え~……世界の事に詳しくても、異世界の事には詳しくなれないでしょう。

「ど、ど、何処の国の……何者だと言うのだ!?」
ウルフの自信に溢れたハッタリに、デコ隊長も狼狽えている。
如何するのウルフ? 何てウソを吐くの?

「ふっ……私が仕える王家はサザンビーク王家。私はそこで大臣をしている!」
うそーん!
異世界の事情は知らないけど、一般的にウルフくらいの若者が大臣になるなんて有り得ないのに!

「ふ……ふははははっ! これは、とんだハッタリ男だな。貴様が重責を担う大臣な訳ないであろう!」
「だから貴様は無能なのだ……私は若く見られガチだが、既に16歳の息子も居る身だ! その息子は、北の海を越えたリーザスの令嬢と許嫁の仲でな……時折この地方にも足を運ぶのだが、その息子“ラグサット”が言っていたぞ。『マイエラ修道院が悪徳宗教団体に代わりつつある』とな(冷笑) 真実を確かめに来れば、この有様……我がサザンビークと敵対する覚悟は出来てあるのであろうな?」

な、何でウルフが私とラグサットの事を知ってるの!?
親が勝手に決めた相手だし、私はあのヒョロ野郎を嫌いだから、彼等には話してないのに?
これがウルフの情報収集能力!? す、凄いわ……

「わ、若く見られガチで済むか! 貴様が16歳の父親なワケないであろう!」
「あのマルチェロ様……サザンビークの大臣の息子殿に、ラグサットと呼ばれる者が居るそうです……しかも、その者が言う通りリーザスの令嬢と恋仲とか……」

恋仲じゃねぇつーの!
デコの後ろから現れた部下の一人が、ウルフの情報の裏がとれてる事を、ソッと耳打ちしてきた。内緒話なら、もっと小声で言え。

「そ、それが事実だとしても、この男がサザンビークの大臣である事の証拠にはならん! だ、だいたい……これ程若々しい者が大臣であれば、その噂くらいは聞こえてくるであろう! だがしかし、私の耳には聞こえてきてない。それが如何いう意味か解るか!?」

「本物の馬鹿だな貴様は! 先刻(さっき)も言ったであろう……私は表舞台に出る事を好まぬのだと! それはこの容姿の所為だ。見た目が若いから、私が大臣と言って表舞台に出ても、誰も畏怖を感じてくれない。それでは困るのだよ……大国の重鎮としてはな!」

凄い……
あからさまにウソだと分かてるのに、理に適ってる弁舌の所為で万が一の可能性を捨てきれないで居る。

「まったく……今まで寄付してきた金を返してもらいたいくらいだな」
デコ等が反論の機会を覗っていると、それを阻止すべく突如寄付金の事を話題に上げるウルフ。
権力者に逆らうって事も問題だが、更に金が絡むと致命的になり得る為、発しようとしてた言葉を飲み込むデコ。

「き、寄付金……だと……?」
「そうだ馬鹿者! 莫大な金額を寄付したのに、この仕打ちを受けているんだぞ!」
仕打ちと言われるほどの事はされてないし、問題を大きくしてるのはアナタ(ウルフ)だ。

「まぁいい……私は故あって現在各地を旅している。今日の出来事は忘れ難いので、私の口で全世界に伝え広めるだろう。今後の寄付金の額が大幅に変わるなぁ(笑)」
リュリュさん等が彼の事を『性格が悪い』と評するのも解る。これは本当に極悪な性格だ。

彼が大臣であろうとなかろうと、今回の一件を誇張した状態で世界中に広めるのは明白。
出来る事なら、この場でウルフ等(私も含む)を捕らえて、口封じをしたいのだろうけど……先程も言った通り、万が一にも彼が大臣だった場合は、そんな事するのは自殺行為であり、実行に移しづらい。

「ふん! 宿を借りれないか聞きに来ただけだが、もう必要無くなった! ここから少し行けば“ドニの町”に辿り着ける」
凄い形相で睨み付けていたウルフは、スマートな動作で踵を返すと、ここに用が無くなった事を宣言し出口へと歩き出した。

私達も慌てて彼の後に付いていく……
これではまるで大臣に付き従う従者の様だ。
一体どんな生き方をすれば、こんなに性格が悪くなるのだろうか?

「それではごきげんよう諸君。次にお会い出来るのは我が国の裁判所であろうな! はっはっはっはっはっ!」
こんな男の部下も大変そうだけど、上司も気苦労が絶えなさそうじゃない?
どんな人が彼の上司なのかしら?

ゼシカSIDE END



 
 

 
後書き
頑張れデコ。
負けるなデコ。
髪の毛逆立てて金髪にすれば、スーパーサイヤ人ぽく見えるぞ!
ラインハルト様に言い付けてやる。 
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