名探偵と料理人
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第二十六話 -二十年目の殺意 シンフォニー号連続殺人事件-
前書き
このお話は 原作 23巻 が元になっています。
「緋勇シェフ、魚介類のした処理が終わりました!次は何をすればよろしいですか?」
「ありがとうございます。次はメインのお肉の下準備をお願いします」
今日の俺はとある客船の雇われシェフをしていた。何でも特別な記念日で、どうしても思い出に残る船旅にしたいと言うことらしく俺にコースの構成を作ってくれないかと言う依頼が先日来た。他のスタッフの手配はもうすんでいるということであとはコースの内容を決めるメインのシェフのみだけだということだった。電話口の人は仲介人らしく依頼人については詳しくは教えられていないとの事だった。
多分に怪しい仕事だったが豪華客船は提無津港から出航し目的地は小笠原。小笠原に到着した後は再び提案無津港への船旅の間まで少しは自由時間をもらえるとの事だったので依頼を受けることにした。南洋のこの時期の食材を見れるいい機会だしね(10月8日っていう寒露に小笠原に行く機会なんて今後もなさそうだしね)
当日の昼に俺は件の船に乗船し、スタッフと顔通しをしてそのまま夕食の準備をしているというわけだ。船のスケジュールについて聞いてみると何でも新聞広告にある謎掛けを解けた人を無料で「小笠原イルカツアー」として招待していてその定員が埋まるまで出航しないとの事だ。何か……本当に良く分からない依頼主だな。まあ金持ちなのは確かだが。
「緋勇シェフ、そろそろ出航すると船長が。お客様は大人が9人に高校生が1人、子供が1人との事です」
「分かりました。それでは晩餐のコース作りにかかりますか」
そう言って俺は今日のコース料理にかかった。秋が旬な野菜と少し珍しい魚を軸に、そしてメインにはフィレとサーロインを選択するステーキだ。シンプルだけどココは腕の見せ所だな。
―
給仕をしたスタッフに話を聞くとコースについては皆さん満足していただけたようだ。綺麗になって帰ってきた皿を見ると嬉しくなるね。さあて、まかないの料理も出したし帰ってきた皿でも洗いますかね。
「ひ、緋勇シェフ!皿洗いなんてこっちでしますから!」
「いやいや、皆さんは夕食を食べていてください。冷めても美味しいとは思いますけどやっぱり出来たてが一番ですよ」
「ええ、まかないであんな美味しいものが出るとは思いませんでした。しかもデザートまでつくとは…じゃなくて!」
「いいんですよ、一応メインとして呼ばれていますがこの中では一番年下ですし。皿が綺麗に帰ってきてるので洗うのもそこまで大変じゃないですしね」
いまだに納得していないスタッフ(どうやら俺のファンらしく料理中も熱心に俺の姿を見ていた)の背中を押し俺は片づけを終えそのまま明日の朝食の仕込みをしているといつの間にやら12時を回っていた。そして……
パァン!
「?爆竹の音?何かイベントでもあるんですか?」
「え…っと私は聞いていません。他の皆は?」
朝の仕込をしていたスタッフに聞いてみたが特に聞いていないようだった…と!
ドォォオオォオオォンーー!!
今度は何かが爆発したような音がした。流石にこの音にはスタッフの皆も仰天していて、軽いパニックが起きていた。耳を済ませてみると…これは船尾のデッキのほうでエンジンとかが爆発したわけではなさそうだな。でもなんで船尾?
「落ち着いてください!エンジンが爆発したとかではなく船尾のデッキのほうで何かがあったみたいです!ちょっと様子を見てきますので皆さんはスタッフルームに移動してください!あ、火元はちゃんと確認してからですよ!」
「わ、分かりました。お願いします」
そういって、俺は船尾のデッキ移動してみると何故か船の上に上げられていた旗が燃えていて、船尾には炎の前に人だかりが…この臭い……人の肉が焼ける臭い…か。
「何があったんです…か?って平ちゃん?コナン君!?」
「え?」
「は?」
「それに小五郎さんまで…」
どうやら、新聞広告の謎掛けを解いて参加した毛利一行と平ちゃんは探偵の依頼を受けて乗船したらしい。って悠長に話してしまったけど…
「それと…もう手遅れだけどその燃えている≪人≫、早く消火したほうが…」
「な、なんやて!?」
「な、なんだと!?」
「た、確かに人が燃えてるぞ!?おい、早く水を!」
結局消火が完了したときにはその人物は黒焦げになってしまっていた。どうやら今現場に現れない人物のつけていた腕時計をしているらしくその蟹江さんという方?らしい。
「それで?二人の見解は?熱心に死体を見ているようだけど」
「そーやな。とりあえずあそこで脂汗を流しているあのオッサン叩けばようけ埃が出るんとちゃうんかな」
「ああ、さっきの銃声といい事情を知ってそうだからな」
「え?銃声?」
「龍斗も聞いたんじゃないのか?爆発が起こる前にぱーんって」
「お前さんのそのよーわからん性能の耳なら聞き逃すことなんか無いとはおもたけど?」
「ああ、いや。パンって音は聞こえていたけど。あれって爆竹の音でしょ?前にハワイで新ちゃんが撃ってた実銃の銃声と比べて軽いし音小さいし」
「なんだと!?」
「なんやて?!」
「えっと……なにか役に立つ?」
「ああ、かなりな!」
「おおきにや、龍斗!」
その後、現場を軽く保存し船尾にいた乗客たちは船尾から食堂に移動し怪しい挙動の鯨井さんの尋問を行うらしい。尋問を行うのは元警視という鮫崎さん。小五郎さんはスタッフのアリバイを聞くということで途中まで一緒に行動した。俺はスタッフルームに戻って事の次第を説明した後、チーフスタッフに許可を貰い食堂で皆に合流した。俺の感覚は役に立つだろうしね。
「…それで、彼は何か喋ったの?」
「それが全然やな。ありゃあらちがあかへんな」
「ふーん……」
「ちょ、おい龍斗?」
俺は平ちゃんの言葉を無視して鯨井さんに近づいていった。
「それでですね警視殿……ん?どうしたんだい龍斗君?」
「どうも、小五郎さん。とんでもないことになってしまいましたね」
「ああ。せっかくの旅行がぱあだ。それにしても今日の夕食は龍斗君が担当していたんだね。とても美味かったよ!」
「そういってもらえると嬉しいです」
「おい、毛利。この兄ちゃんはなんなんだ?」
「ああ、彼はですね…」
俺が食堂に合流するちょっと後に戻ってきた小五郎さんが鮫崎さんへの報告を行っているのを遮ってしまったが、彼は気にすることなく俺の事を鮫崎さんに説明した。
「なるほど、そういう知り合いか。だが君はこの男に何かようか?」
「そうそう、龍斗君の知り合いかい?」
「いえ、そういうわけでは。……どうも」
「な、なんだい君は。私の周りを一周して」
「いえ。なんでも…」
「「「?」」」
「それで遮ってしまった俺が言うのもなんですが小五郎さん、鮫崎さんに何か報告があったようですが」
「ああ、そうだった!警視殿、スタッフに確認を行ったところ爆発が起こった時にはスタッフ全員が二人以上で行動しておりアリバイはあるそうです」
「あ、俺も爆発が起きたときは朝食の仕込みを食堂スタッフの皆とやってました」
「そういや龍斗君のアリバイは確認してなかったか。まあ君を疑う事なんてないが」
「…それで?つまりアリバイがないのが今もどこかに姿をくらましている叶才三だけってわけか…」
「あら?もう一人いるじゃない?ホラ、気分悪そうにして部屋に戻った亀田って人。あの後ずっと姿を見せないけど」
「そーいえばそうですな」
「だったら早く部屋へ行ってここに連れて来んか!」
「は、はい!」
「ほんならオレもそれにつきあうたるわ!」
「ボクもー!」
乗客に一人である磯貝さんが爆発前から姿が見えない亀田さんの事を教えてくれた。そこで毛利一行と俺と平ちゃんの5人で亀田さんの部屋に行くことになった。一応、何かの役にたつかもしれないし感覚を広げておいてっと。
「たく、なんだよおまえらぞろぞろと」
「いーじゃない、みんなでいた方が安全だし!」
「せやせや、こっちは空手の達人のねーちゃんに日本刀を素手でへし折る龍斗もおるんや。どんな奴が来ても返り討ちやで」
「ははは……って龍斗にいちゃん、どうしたの部屋の前で立ち止まって」
「いや。この7号室って誰の部屋かなって」
「確か、最後に船に乗ってきた海老名さんだよ。丁度ボクたちが受付をしている時に来たから知ってるんだ。どうかしたの?」
「ん。また後でね」
「おーい、亀田さんの部屋に着いたぞ!」
そういって小五郎さんが亀田さんの部屋をノックした。しかし中からは誰の反応もなく部屋のノブをひねるとドアはあいてしまった。中は無人であることを小五郎さんが言った瞬間、高校生探偵の二人は走り出してどこかに行ってしまった。…まったく。
「ねえ、お父さん。亀田さんがいないこと早く鮫崎さんに伝えないと。ねえ服部く…服部君?コナン君!?え、どこにいったの?龍斗君!」
「ああ。二人なら中が無人であることを聞いた瞬間に脱兎のごとくぴゅーって走ってどっかいったよ」
「ええええ!?」
「大丈夫、俺が二人を追いかけるから蘭ちゃんは小五郎さんと食堂に戻って」
「わ、わかった」
「あ、そういえばカノウサイゾウってどういう漢字なんですか?」
「ああ、願いが叶うの「叶」に才能の「才」、そして漢数字の「三」だよ」
「ありがとうございます」
さて、丁度いい感じに二人と話せそうだ。
―
「ほー、おもろいやんか…久しぶりに推理が食い違たな」
「ああ、最初にあった以来だな…」
お、どうやら意見のすり合わせが終わったところに来れたのかな。
「お二人さん、推理の進捗の方はどう?あと、俺は気付いてたけどいきなりどっかに行く癖は直した方がいいよ?報連相は大事」
「そらすまんかったのう。推理の方は俺らで意見が違てな。これからは分かれて調査することになったんや」
「なるほどねえ。因みに二人が思う犯人って誰?」
「オレは蟹江さんだ。亀田さんに自分の時計を付けて死んだと錯覚させ今もどこかに隠れているんだ。それで服部が…」
「亀田さんやな。時計はわざわざ外して偽装して工藤みたいなミスリードをさそっとるっちゅうこっちゃ」
あれ?二人とも俺が考える犯人じゃないな。俺が鯨井さんの周りを回った時、彼からは硝煙の匂いがした。そんな匂いがしたのは乗客の中では彼だけだった。つまり犯人は彼だ。
さて、伝えるべきなんだろうけど。どちらが先に真相にたどり着くかを競うみたいなことになってるしどうすべきかな。あ、久しぶりに思い出した「叶才三」についてなら教えていいかな。
「じゃあ、オレは船内に「ちょっと待って」ってなんや龍斗」
「俺が気づいたことを二つだけ提供したくてね。俺は犯人が分かっててもそれを立証する筋道を立てるのが苦手だしそこは二人に任せるよ」
「なんやと!」
「龍斗は分かってんのか!」
「まあ。俺の感覚からの情報からね。でも今はそれが証拠にならないし」
「な、なるほどな」
「…それで?情報ってのは?」
「まずは海老名さんの荷物。あれ鞄ぎっしりに爆薬が仕込まれてるよ」
「な、なんだと!?」
「どういうこっちゃ、龍斗!?」
「ほら、七号室で立ち止まったでしょ?あの時あの部屋から相当量の爆薬の匂いがしたから」
「そらえらいこっちゃ。なんとかせな!」
「そうだな、スタッフに頼んでその荷物を救命ボートにでものせて放逐するしかないか」
「その作業は俺が。それともう一つ」
「つ、次はなんや」
「この主催者の名前。古川大ってひと。時計回りに90°回転させてみるとどうなる?」
「どうって…!!」
「か、叶才三になるやんか!」
「そう、叶才三になるんだ。多分、乗客の皆がそれに気付いて乗ってきてると思うよ」
俺が思い出したのは叶才三の名前の由来、そして主要登場人物が20年前の4億円強奪事件に何らかの関与をしていることだった。
「とにかく。情報あんがとさん。オレはスタッフに用事あるから一度船内に戻るで!ほな、この時計直しといて!」
そういって俺に黒焦げの時計を投げてきた。
「おいおい、いくら龍斗でも黒焦げの時計を修理なんてできないぞ」
「ちゃうちゃう、元の場所に戻しておいてくれっていうこっちゃ」
「了解したよ」
そういって平ちゃんは船内に戻って行った。俺は時計を新ちゃんに預け海老名さんの鞄を持ってきた。部屋には鍵が閉まっていたがそこは裏のチャンネルを経由して侵入した。船尾のデッキに戻ってくると新ちゃんはさっきの言葉から情報を収集するつもりかイヤリング型携帯電話で博士に連絡を取っているようだった。丁度博士は4億円強奪事件の特番を見ていたらしく新ちゃんに有益な情報をくれたようだった。…鮫崎さんの娘さんが事件時殺されたのか…あ、時計は戻しておいてくれたのね。
「ん?新ちゃん。なんか手すりに」
「なんだ?龍斗。…これは!?」
俺は救命ボートに鞄をのせて海に放逐する作業を進めていた。船尾の手すりに紐を括り付けている最中に気になる焦げ跡を見つけた。新ちゃんにそれを伝えると少し考えた後ドヤ顔をしていた。
「なるほどな。これならその場にいなくても…ナイスアシストだぜ龍斗」
そういって、隠れ場所を探すためか船内に戻って行った。
―
「いい隠れ場所?」
「ホラ。いつもは入っちゃいけないところとか普段は絶対人が立ち入らないところとか…いってええ!」
「まったく!殺人犯がいるっていうのにうろちょうろうろちょろしやがって!って龍斗君もいたのか」
「え、ええ。まあこの子がうろちょろするのは目に見えていたので一応お目付け役としてね」
「そりゃ悪いな。…おい、ちゃんと龍斗君にお礼を言っておくんだぞ!」
「えっと、ありがとうね龍斗にいちゃん」
スタッフの人に船内に隠れられる場所を聞いて回っていると小五郎さんに拳骨を食らってた。普通に考えたら小1がこんな状況で動き回るのは邪魔でしかないからなあ。危ないし。
「あれ、服部君は?」
「え、会わなかったの?」
「おかしいね、確か平ちゃんスタッフに用事があるって船内に戻ったはずだけど」
――――――ザパァン…
「「!!」」
「ね、ねえ今水の音がしなかった!?」
「ん?」
「カツオでも跳ねたんじゃないか?」
「ううん!絶対したよ、変な水の音!ねえ龍斗にいちゃん!…龍斗にいちゃん?」
「あ、ああ!小五郎さん。俺も聞こえました。あの水音は魚が跳ねたような小さな音じゃなかったですよ!」
「た、龍斗君も聞こえたのかい?」
「くっ!」
「あ、コナン君!?」
新ちゃんは突然走り出して船尾のほうに向かっていった。小五郎さんと蘭ちゃんもその後を追っていった。くっそ、油断した。まさか平ちゃんが襲われるとは!新ちゃんは音だけが聞こえたみたいだけど俺はその発生源が船首の方だというのが分かる。感覚を広げてみると…よかった、海の上で浮かんでるし心音もしっかりしてる。ばしゃばしゃって音がするからしっかり意識もあるね。距離は…約1.5kmか。でもどんどん離されてしまうから急がないと。
俺は走ってブリッジに行き、人が海に落ちたことを伝えた。
「なんだと、それは本当かい!?」
「ええ、落ちてからもう3分は経ってます。救命胴衣なんてつけてないんです、急いで戻らないと!」
「わ、分かった!」
俺は船長に落水の事を伝えた後、平ちゃんが落ちたであろう船首に向かった。…血の跡、そして舳先に縄梯子か。あの人誰だ?まだ息はあるみたいだけど。
取りあえずこれを伝えるために船尾に行った新ちゃんがいるであろう船尾に行った。
「これしか残っていないのよ、父の遺品はね…って、あら?船が旋回している?」
船尾に行ってみると鮫崎さん以外の乗客が船尾に集まっていた。
「俺が船長に言って船の航路を逆走してもらったんですよ」
「え?」
「蘭ちゃん、ココにいない鮫崎さんを呼んで来てもらえる?」
「う、うん」
蘭ちゃんは了承してくれて船内に戻って行った。
「それで?確かにこのガキや龍斗君は水音を聞いたって言うけど流石にそれだけじゃあ」
「小五郎さん、ココは俺を信じてください。平ちゃんは…関西の高校生探偵は襲われて海に落ちたんですよ。船首で、おそらくは殴られて…ね?」
「な、なんだと!?」
殴られて、の所で俺は鯨井さんを睨んだ。運がいいのか悪いのか、彼のシャツの袖口から血の匂いがする。これはさっき船首で確認した血と同じものだ。赤いシャツだから気づいていないか。おーおー、青くなってるな。でも許さないよ?新ちゃんたちの推理を待っていたけどこうなったらもうとどめさしてやるよ。
「おいおい兄ちゃん、蘭ちゃんに呼ばれてきたけど何の騒ぎだこれは」
「あ、鮫崎さん。これで乗客は全員ですかね。じゃあ船首の方に」
そして全員で船首の方に移動した。
「さて。さっきなんですがね。俺とコナン君は何かが落水する音を聞きました」
「ほう?だが、魚か何かがはねただけじゃねえのかい?」
「聞いたのは船内です。流石に魚が跳ねたような音じゃあ聞こえませんよ。人が落ちた時くらいじゃないとね」
「さっきも言っていたけど襲われたんだって?何を根拠にそんなことを言ってるのよ?」
「これを見てください」
「これって…血痕か!?しかもまだ乾いていない、ついさっきついたみたいだな」
「じゃ、じゃあ。服部君、本当に襲われて海に…!」
「そうなるね、蘭ちゃん。そしてなぜ殴られたのか。小五郎さん、舳先の方を見てください。船の側面です」
「あ、ああ。船の側面って…おいおいおい!ありゃあ、蟹江さんじゃねえか!」
「ええええ!?」
なるほどね、彼が蟹江さん。てことは爆発の方は亀田さんだったってことか。
「その蟹江さんの意識が戻れば誰が彼を襲ったのかはわかると思いますが。ここに動かぬ証拠を身につけている人いますし先にいっておきましょうか」
「な、何?」
蟹江さんをデッキに引き上げた後、俺はそう言って鯨井さんに近づき左手をとった。
「な、なんだね」
「鯨井さんのシャツ、暗赤色で気づきにくかったようですが。袖口に血がついてますよ?誰の血なんですかね?」
「!!」
「おい、見せろ!…確かに分かりにくいがこれは血だな。どういうことだこれは!?」
「い、いや。これは」
「デッキの血と照合してもいいんですけどね。…彼に聞いてもいいし、彼から血を提供して貰ってもいいかもしれないですね」
「彼?」
「あ、平次兄ちゃんだ!(よかった、無事だったんだな、服部!)」
話をしているうちに平ちゃんが落ちたあたりまで戻ってきていたらしく、無事彼を回収することができた。頭に怪我をしていたが意識はしっかりとしていてしっかりと鯨井さんに殴られたことを証言してくれた。
往生際悪く、爆発したときに皆がいたのに自分じゃ犯行は不可能だと喚いてきたが、そこは新ちゃんが小五郎さんを眠らせ煙草を使ったトリックを暴き引導を渡していた。
そんなこんなしていると船の後方で大爆発が起きた。…今更だが、船とつないでてよかったな。鞄だけで捨ててたら海流に流されて平ちゃんとかちあったり逆走した船とも遭遇してたかもしれない。確実に船の後方100mになるようにボートに乗せて流しておいてよかった。
その爆発を機に、次々と乗客が自分の素性を話し出した。殺された銀行員の父親に恋人、そして叶才三の娘。鯨井さんは20年間気付かなかった「古川大」の意味を聞き、意気消沈してしまった。
―
「ったく。結局オレが海を漂ってる間にぜーんぶかたづけよってからに。また龍斗に持ってかれたか」
「今回は新ちゃんと俺の合わせ技だよ。いや、犯人のしっぽを出させたって意味では三人の…かな?」
「そー言えるっちゃ言えるか?しっかし、いささか力技な気もするけどな」
「ははは、流石に平ちゃんが海に落とされちゃったし。ちょっと…ね」
「そ、その顔はやめてくれ龍斗。な、なあ服部?」
「せ、せやな?そーんな顔しとらんと笑顔や笑顔!」
「んー?まあ平ちゃんが無事だったし笑顔…でいいのかな?」
「「(おー怖。スイッチ入った龍斗だけは敵にまわしたくねえな)」」
後書き
三人の力で事件を解決しました!…しましたよ?
龍斗的に犯人に襲われるのは大阪の沼淵の件もありコナンに注意を払っていました。そのせいで服部が襲われた時に駆けつけられたなかったという事です。
落水事故の際に船が戻ってくれるかどうかは知りませんが人道的に戻ってくれるだろうということで戻りました。
今回の事件は登場人物の因縁と、なんか名前にシャレの利いた仕掛けがあったなあというのを途中で思い出した感じです。
そういえば龍斗のチートはトリコのゼブラに近いですが耳だけで声はチートに入っていないので、エコーロケーションは使用できずその姿形までは認識できない設定があったり。
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