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とある3年4組の卑怯者

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113 中部大会

 
前書き
 小学生のスケートの中部大会への出場の為に長野県の松本へと向かう藤木。そして藤木の応援の為に花輪とヒデじい、そしてリリィや笹山も松本へと向かう!! 

 
 リリィ達が松本に着いたのは夜の七時過ぎの事だった。
「やっと着いたわね」
「それじゃあ、lady達、部屋に上がって寛ごうか」
 四人はヒデじいの車のトランクから荷物を出し、旅館にチェックインした。そして食事を先に済ませてから入浴することにした。

 浴槽の湯につかりながらリリィと笹山は会話をしていた。
「そう言えば笹山さんは好きな人いるの?」
「え!?」
 リリィの急な質問に笹山は驚いてしまった。
「ううん、いないわよ」
「そう、花輪クンは?私もみぎわさんも好きだけど他の人にも好かれているけど惚れないの?」
「う~ん、友達としてはいいけど・・・、そこまでは考えてないわね」
「藤木君は?時々庇ってるけど・・・」
「う・・・」
 笹山は言葉に詰まった。藤木の想いに気づくまでは友達としての認識だった。堀内との一件でその想いに気づいてからは自分とリリィどちらを選ぶか猶予を与えている状態だ。しかし、自分があれだけ藤木を気にしていると言う事はもしかして自分も・・・。
「藤木君はその、友達の一人よ」
 笹山は誤魔化した。
「そう・・・。でも藤木君がどっちに決めるのか待ち遠しいわね」
「そうね・・・」
 その時、笹山はある事を思い出した。そういえば一時藤木と絶交していた時、彼と仲良くなり、藤木がスケート大会に参加するきっかけを作ったあの堀という女子を藤木はどう思っているのだろうか。まさか彼女にも鼻を伸ばして彼女を選択するのだろうか。
(今はその事は考えないようにしよう・・・)
 笹山はそう思い、浴場を出た。


 藤木は寒かったが朝はかなり早く目覚めた。まだ6時にもなっていなかったが、とにかく起きた。
(今日はリリィに笹山さんが見に来てくれる・・・。僕のあの技、君達にも見せるよ!!)
 藤木は地区大会の時で見せた技をリリィと笹山に見せたいと思っていた。そして自分の目標・世界一を目指すための一つのステップ、この中部大会で銅賞以上を獲る事を目指し、顔を洗った。

 藤木達はバスでスケート場へ向かった。藤木は心の中で笹山とリリィの応援する声が聞こえる気がした。
《藤木君はスケート上手いから、きっと賞を獲れるよ》
《藤木君、頑張ってね!貴方の滑る姿、私にまた見せて・・・!》
 藤木はそんな幻聴が聞こえた。こんな事は球技大会でゴールキーパーとして試合に出ている時にもあった。
(そういえば、僕をわざわざここまで応援に来たって事は、きっと僕の事をそれだけ気にかけてくれてくれているんじゃないのか?なら、その気に答えるよ・・・!)
 バスはスケート場の前に到着した。藤木とその両親は降車し、スケート場の出入口を通った。

 藤木はスケート場に入ると、控室へと誘導され、両親はギャラリーへと通された。控室にて自前のスケート靴に履き替える。
「やあ、おはよう藤木君」
「和島君。そういえば君は僕に勝つための新しい技を生み出したのかい?」
「ああ、もちろん、それは本番までのお楽しみだよ」
「へえ」
「キミは何かあるのかい?」
「いや、地区大会の時と変わりはないさ」
「ふうん、それで勝てるのかな?まあ、あの時はボクはたまたま調子が悪かっただけさ。今回は地区大会の時のようにはいかないよ。み、て、ろ、よ!」
 和島はそう言って自分のスケート靴に履き替えた。

 リリィ達は旅館の売店で松本土産を買っていた。
「これ、パパとママ喜ぶかな?」
「いいんんじゃない?」
 リリィはを、笹山はを購入した。
「Hey、それじゃあ、そろそろskate場へ行こうか、baby」
「うん」
 一行はヒデじいの車に乗り込んだ。

 スケート場では出場者が順番に練習をしていた。藤木は18番であり今は1番から9番までが練習をしている様子を控室のモニターを見ていた。和島は8番だったため、リンクにて練習をしていた。軽々とステップを踏み、ジャンプをこなした。そしてフライングキャメルスピン。地区大会の時の和島と異なる感が藤木にはした。
(和島君、さすがだな・・・。いや、和島君だけじゃない、ここにいる皆もそれぞれの地区大会の時よりも上回る演技を見せようとしているんだ!僕だって・・・、絶対に地区大会以上の演技を見せてやる!!)
 藤木は焦ったが、負けてはならぬとおもった。そして10番から18番の出場者の練習が始まった。藤木はリンクに入った。そしてステップをし、スパイラルの姿勢を取る。そして足換えのシットスピン、そしてフリップ、ループ、サルコウ、トウループ、ルッツ、そしてアクセルと6種全てのジャンプをこなした。しかし、全てを披露した事で本当に評価は上がるのか、藤木は不安になった。しかし、やるしかない。藤木は再びジャンプ全種をトリプルで行った。
 片山は既にスケート場の観客席に到着しており、各参加者の練習の様子を見物していた。そして藤木の出番となると、とりわけ彼に注目するのだった。
(ふうむ、どのジャンプもこなしたか・・・。ならどのような組み立てを見せるか楽しみだな・・・)

 リリィ、笹山、花輪、ヒデじいはスケート場に到着した。出場者たちは練習している最中で開会はまだしていなかった。四人が観客席に座ると、そこにジャンプを簡単にこなしてしまう少年がいた。
「あ、あれ藤木君だわ」
 リリィが指を差して言った。
「藤木君のジャンプ凄いわね」
 笹山は感心した。彼女は以前スケート教室などで彼の滑走する姿は見た事はあるが、それでもいつ見ても凄いと思うのだった。

 練習終了と19番から27番の参加者が練習するように呼びかけるアナウンスが発されたため、藤木はリンクを出た。そして、全ての参加者の練習が終わり、開会式が始まった。
『これよりアマチュアスケート大会小学生男子の部中部大会を始めます。まず始めに開会の言葉としてスケート協会長野県支部・山里薫(やまざとかおる)会長よりご挨拶です』
「皆さん、本日はご来場いただきまして誠にありがとうございます。この大会には信越、東海四県、北陸三県のそれぞれの地区大会で銅、銀、そして金の受賞した人達が集う場所、是非皆さんには地区大会で見せた素晴らしい演技を私達に見せるようにがんばってください。そして、各参加者の素晴らしい演技を是非皆さまもご覧になさってください。では、私はこれで以上となります。ありがとうございました」
『山里様、ありがとうございました。それでは、審査員の紹介と参ります』
 アナウンス係が審査員の紹介をする。同時に1番目の出場となる富山県の銀賞の選手が誘導係に呼ばれて向かった。遂に始まったと藤木は緊張した。そして参加者たちが次々と演技を見せていく。そして和島の番が来て、和島はリンクへと向かった。
(さて、和島君、君の新しい技ってどういうものか見せてくれよ・・・)
『8番、和島俊君。静岡県船越小学校』
(和島俊、地区大会にも出ていた四回転アクセルを得意とする彼か・・・!)
 片山も地区大会で見ていたため、和島の凄さを知っていた。
 和島がステップを踏み出していく。そして、ダブルルッツ、トリプルフリップ、次に、トリプルトウループ・・・、と思ったが、ジャンプの威力が足りず、シングルとなってしまった。
(そんな、だが、あの技は絶対に成功させてみせるぞ!)
 和島はとっておきの技を残していた。そしてターンをして、足換えシットスピンを見せた。そしてステップシークエンスを見せる。
(四回転アクセルは最後まで取っておくのかな・・・。それとも新しい技とは四回転アクセルじゃないのか?)
 藤木は和島の新しい技とは何か気になった。和島はここで四回転アクセル行った・・・、が、着地に失敗した。転倒して手をついてしまった。藤木はまさか和島が失敗するとは思わなかった。和島は気を取り直し、フライングシットスピンからもう一度四回転アクセルに取り掛かった。しかし、次は高く跳べなかった為に、ダブルアクセルとなってしまった。
(そんな、ボクの四回転アクセルが・・・!!)
 和島はダブルサルコウからのコンビネーションスピンを行った。そして、シットスピンを行い、そこからトリプルトウループを見せた。最後は決まった。拍手は送られた。
(シットスピンからのトリプルトウループか・・・。さすがに僕もそれは凄いと思うよ!さっきの四回転アクセルの失敗を帳消しにできるかもな・・・)
 藤木は和島にやや脱帽した。しかし、和島は四回転アクセルの失敗の悔しさを見せてリンクから引き上げたのだった。
(どうか、僕は失敗をしないでくれ・・・。リリィや笹山さんだって見てるんだ・・・。絶対に失敗したくない・・・)
 藤木は自分の胸の鼓動が激しくなっていくのを感じていた。 
 

 
後書き
次回:「前進(つぎなるみち)
 藤木の演技を行う番が訪れた。藤木は地区大会で見せたアクセルからのスパイラル姿勢での着地を試みる。果たして、全国大会への切符を手にする事ができるのか・・・。

 一度消えた恋が蘇る時、物語は始まる・・・!! 
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