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獣篇Ⅰ

作者:Gabriella
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30 犯人の分かりやすいミステリー小説は、なかなかに面白くない。

戦っていると、万斉に肩を叩かれた。

_「零杏、」


刀を合わせながらの会話になった。

_「万斉殿!」

_「ケガはないか?」

_「あなた方のせいでスゴくケガしましたわ、
晋助(かれ)に、慰謝料を請求するから、覚悟なさい、って伝えてくれるかしら?もちろん、着払いで。」


剣を面に振り上げる。
もちろん、阻止された。

_「あァ。もちろん伝えておくでござる。」

_「頼んだわ、万斉殿。
もうお行きになるんでしょう?」

_「…零杏殿には敵わぬでござる。
全てお見通しでござったか。」

_「ええ。今回の件は、最初から怪しい箇所が多すぎましたわ。鍛冶屋といい、伊東殿といい。裏で鬼兵隊が動いているのではないか、と簡単に推測できてしまいましたもの。」

_「そうか、では晋助に伝えておくでござる。」

_「頼んだわ、」



と言ったところで、万斉に逃げられた。



そのあとはとにかく、戦い続けた。


明け方、夜が白み始めた時にやっと、戦いは終結した。鬼兵隊、真選組のどちらもたくさんの死者を出したらしい。


今は、伊東と副長の最後の因縁対決をするべく、隊士たちが円陣を組んでいるところだ。


私は、銀時たちの近くに立っている。

_「そうさ、放っといたってヤツはもう死ぬ。
だからこそ…だからこそ、斬らなきゃならねェ。」


放り出された、伊東。


_「立て、伊東。決着着けようじゃねェか。」

と、土方。
銀時を見ると、銀時(かれ)は言った。


_「アイツら、ヤツを薄汚ねェ裏切り者のまんま、死なせたくねェんだよ。
  最期は、武士として。仲間として。
  ヤツを死なせてやりてェんだよ。」


そうだな。
私にもいつか、あんな風に送り出してもらえる日か、
来るのだろうか…。


_ 土方ァァァッ/伊東ゥゥゥッ !


伊東は片腕がない。
当然勝ち目はなかったが、最期は仲間に死出の旅への引導を渡してもらえて、幸せだっただろう。


_「や、…っと…あり…がと…」


そう言い残して、伊東(かれ)の遺体は地に伏した。




私たちは残って、彼の弔いをするため、
銀時たちは先に帰ることになった。

_「じゃあな、零杏。達者でな、」

神楽ちゃんは、名残惜しそうだ。

_「澪ちゃん、またネ…。」

_「新八くんも。またいつか。:)」


と言って、お別れしてきた。



伊東(かれ)の弔いがすんでから、
私たちは屯所に戻った。


だが私は、高杉の船に向かった。
 
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