魔法科高校の劣等生 〜極炎の紅姫〜
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前書き
今回は短いです。
すみません、模擬戦のシーンは丸々カットしています。
「達也くん、深紅ちゃんおはよう!深雪さんもおはようございます」
次の日、深紅、達也、深雪が登校していると、真由美が走り寄ってきた。
「おはようございます会長」
達也がそう言い深紅と深雪が腰を折る。
「いきなりで悪いんだけど、今日のお昼の時間生徒会室にきてくれないかな?できれば三人とも」
「わかりました」
「お邪魔させていただきます」
「伺います」
「ふふっ、じゃあよろしくね」
真由美はそれだけ言うと、軽やかな足取りで去っていった。
♦︎♢♦︎♢
昼休み。
「失礼します」
三人が一緒に生徒会室に入る。
そこには大きなテーブルがあり、周りに四人の女子生徒が座っていた。
「さっ、三人とも遠慮なく座って座って」
真由美が進め、深紅たちはそれぞれ席に着いた。
「えーと、入学式の時も紹介したけど、一応もう一度紹介するね。
こちら、生徒会会計の市原 鈴音。通称リンちゃん」
「……私のことをそう呼ぶのは会長だけです」
整ってはいるが、少しきつめの印象を受ける顔立ちは、美少女というより、美人と表現する方がふさわしく見えた。
呼び名も、『リンちゃん』より『鈴音さん』の方が合っている気がする。
「こちらはもう知ってるわよね?風紀委員長の渡辺摩利」
「よろしくな」
摩利はにこりとハンサムな笑みを浮かべた。
−−−女子にも人気がありそうな人ね。
深紅がそんなことを思う。
「こっちは生徒会副会長の中条 あずさ。通称あーちゃん」
「下級生の前で“あーちゃん”はやめてください!わたしにも、立場というものがあるんです!」
顔を赤くして涙目で訴える、真由美よりもさらに小柄な少女。
あずさにとっては不本意だろうが、その姿は大変あだ名に見合うものだった。
「あと、副会長のはんぞーくんを加えたメンバーが、今期の生徒会役員です。
それではまず、お昼にしましょうか」
♦︎♢♦︎♢
「渡辺先輩はそのお弁当をご自分で作られたのですか?」
深雪がプレートの中の食事をつつきながら、一人お弁当を持参していた摩利に尋ねた。
「そうだが……意外か?」
摩利は意地悪そうな笑みを浮かべて問い返す。
「いいえ、そんなことはありませんよ」
それに対して答えたのは、深雪ではなく深紅。
「手を見れば、普段から料理しているかどうかくらいわかります」
そう言いながら、摩利の手元に視線を向ける。
全てを見通すかのような、深紅のまっすぐな視線に羞恥を感じ、摩利は手を隠す。
「お兄様。わたしたちも明日からお弁当にいたしますか?」
「深雪のお弁当は魅力的だけど、食べる場所がね」
「あっ、そうでした……」
「……まるで恋人同士の会話ですね」
達也と深雪の会話を聞いて、鈴音がかすかに呆れを含んだ視線を向ける。
「深雪にはちゃんと付き合っている恋人がいますよ」
「お、お兄様!」
達也がさらりと言い、深雪が顔を真っ赤に染めた。
「えっ?!深雪さんって恋人がいるの?」
真由美が達也の予想を上回って食いついてくる。
「誰なんだ?!」
摩利も真由美同様食いついてきた。
「一条将輝さんです」
深雪がほおを染めながらも嬉しそうに言う。
「一条のクリムゾン・プリンスとですか」
「すごい方とお付き合いしてるんですね」
鈴音とあずさが感心したように言う。
「へぇーすごいのね……羨ましいわ」
そう言いながら、真由美が唇を尖らせた。
「深紅は付き合ってる人とかいないのか?」
摩利が深紅の方に視線を向ける。
−−−だからなんで毎回わたしに話が飛んでくるんですか!
深紅はそう叫びそうになるのを必死で堪える。
しかし堪えた代わりに激しく咳き込んでしまった。
「わ、わたしはいないですよ。付き合ってる人なんて」
咳き込むのが収まってから、そう言う。
「じゃあ好きな人はいないの?」
「なんで会長まで乗っかってきてるんですか?!」
「面白いからに決まってるじゃない」
語尾に音符マークがついてそうな真由美の言葉に、深紅はがくりとうなだれる。
「い、いないことはないですけど……言いませんからね!」
「えぇ〜、なんでよ〜。教えてよ〜」
「そんな声出しても教えませんからね、会長!」
「言ってしまった方が後が楽だぞ」
「なんで尋問みたいになってるんですか〜!!」
深紅が絶叫に近い叫び声をあげる。
それを横目に見ている四人−−鈴音・あずさ・達也・深雪−−は……
「完全に会長たちのおもちゃになっていますね」
「た、助けた方がいいのでしょうか」
「深紅もいっそのこと言って仕舞えばいいのに……」
「……!深雪は深紅の好きな人を知っているのか?」
「深紅は見ていてわかりやすいですから」
深雪は面白そうにそう言って、からかわれる深紅の方に視線を向けた。
♦︎♢♦︎♢
「さて、そろそろ本題に入りましょうか」
昼食が大体終わり、やっと、真由美がそう切り出した。
「これは毎年恒例のことなのですが、新入生総代を務めた子には生徒会に入ってもらうことになってるんです。
……深雪さん。わたしたちは、あなたが生徒会に入ってくれることを希望します」
それを聞いた深雪は、少し俯いた後
「先輩方は、兄の入試の成績をご存知ですか?」
いきなりそう言い出した。
達也は妹がいきなり口に出した言葉に驚き、目を見開く。
「もちろん知っています。前代未聞の好成績だったと」
「生徒会が有能な人材を欲していると言うならば、兄こそ相応しいです。
勿論、わたしを生徒会のメンバーに加えていただけると言うのは大変光栄です。喜んで末席に加えてもらいたいと思いますが、兄も一緒というわけにはいきませんでしょうか?」
これを聞いて、達也は頭を抱えたくなった。
重すぎる身贔屓は、他人にとって不愉快なものにしかならない
賢い深雪は、そんなことぐらい簡単にわかるはずなのに、と。
「それは無理ですね」
立ち上がった深雪に、鈴音が冷静な声でこう返す。
「現在、生徒会に入れるのは一科生だけと決まっています。
司波くんを生徒会に加えるためには、学校の規則から変える必要があります」
これに、深雪がかすかにうなだれた。
「そうでしたか……。分を弁えぬ身勝手な言動、お許しください……」
「エッ、と。じゃあ深雪さんには書記として生徒会に入っていただけると言うことで?」
「はい。精一杯努めさせていただきます」
「……チョットいいかな?」
摩利が突然、スッと手を挙げた。
「どうしたの、摩利」
「風紀委員に二科生を選んでも、規則違反にはならないよな?
現に、二科生である不知火が、風紀委員会の推薦枠で風紀委員に決まっている」
「……はぁ?!」
いきなり出てきた自分の名前。そしてありえないはずの摩利の発言に、深紅が思わず間抜けな声を出した。
「ナイスよ! そうよ、風紀委員なら問題ないじゃない。
達也くん。生徒会はあなたを風紀委員に推薦します!」
「はぁ?!」
深紅を全く無視して、話を進める真由美。
そしてまたしてもいきなりのトンデモ発言に、達也が間抜けな声を出す。
「わたしが風紀委員の推薦枠に入ってるなんて、まだ聞いてないんですけど!」
「ん?言ってなかったか?もう決定事項だぞ」
「嘘でしょ……」
信じられない−−信じたくない、でも可−−というように、頭を横に振る深紅。
「ちょっと待ってください。俺たちの意思はどうなるんですか?
第一、風紀委員がどんな委員会かも説明を受けていませんよ?」
「妹さんにもまだ、生徒会についてお話ししていませんが」
達也の抗議は虚しくも、鈴音によって論破される。
「風紀委員は、学校の風紀を維持する委員会です」
会長がそう説明した。
「……それだけですか?」
「ハイ?」
達也と深紅は、鈴音の方に視線を向ける。
若干同情の視線を送りながらも、助ける気はなさそうだ。
その隣、摩利の方に視線を向ける。
ニヤニヤと面白そうに笑うだけで、助ける気は皆無だろう。
その、隣。
あずさの顔に、狼狽の色が浮かぶ。
さらにじっと見つめる。
「あ、あの!風紀委員の主な任務は、魔法乱用による校則違反者の摘発と、魔法を併用した騒乱の取り締まりです」
外見を裏切らない気弱さだった。
「念のため確認しておきます」
「不知火、なんだ?」
「今の説明からすると、魔法使用時の騒乱も力づくで止めなければならない、ということでいいですか?」
「できれば、使用前にやめさせるのが望ましいがな」
「あのですね!」
摩利の軽い言葉に、深紅と達也の声が重なった。
「自分たちは実技の成績が悪かったから二科生なのですが?!」
そういう達也に同意するように、深紅が強く頷く。
しかし摩利はそのもっともな指摘に対して、涼しげに、簡潔すぎる返事をした。
「構わんよ」
「何がです?!」
「力比べならわたしがいる…………っと、昼休みはそろそろ終わりだな。悪いが続きは放課後にしてくれ」
深紅と達也の意思を全く無視し、二人は放課後にまた生徒会室へと行くことになった。
♦︎♢♦︎♢
放課後になり、三人はまた生徒会室の方に向かった。
深紅と達也の足取りはかなり重い。
一方深雪は、二人と反対に軽い足取りだった。
「失礼します」
そう言って中に入ると、先ほどのメンバーの他に一人の男子生徒がいた。
彼が、生徒会副会長のはんぞーくんだろう。
「わたしは生徒会副会長の服部刑部です。
司波深雪さん、生徒会へようこそ」
服部が、深紅と達也を完全に無視して深雪の方に挨拶をする。
深雪の顔に、微かな怒りの色が浮かんだが、服部はそれに気づかなかった。
「おっ、来たな」
「達也くん深紅ちゃん、深雪さんもいらっしゃい。
じゃあ、あーちゃん早速お願いね」
「……はい」
あずさは真由美のあーちゃん呼びにガックリと気落ちしながらも頷いた。
「さて、わたしたちも行くか」
摩利がそう、深紅と達也に声をかける。
「どこへ、ですか?」
「風紀委員会の本部だよ。生徒会室の真下にある」
「……変わった造りですね」
深紅が若干呆れを含んだ口調でそう言う。
その時、
「ちょっと待ってください、渡辺風紀委員長!」
「どうした?服部刑部少丞範蔵副会長」
そのあまりに長ったらしい名前と、はんぞーが本名だったことに、深紅が結構本気で驚いた。
「フルネームで呼ばないでください!」
「じゃあ、服部範蔵副会長?」
「服部刑部です!学校側にもその名前で届けが受理されています……っではなくてですね!
わたしは、その一年生たちを風紀委員に指名することを反対します」
「何故だ?」
「何故って、それは彼らがウィードだからです」
服部がそう言った瞬間、摩利の目が鋭くなった。
「風紀委員長の前で堂々と違反語を使うとは……いい度胸だな」
摩利の低い声に、少し怯んだ服部だったがすぐに持ち直す。
「今更のことでしょう?それとも委員長は、全校生徒の三分の一を摘発するつもりですか?
とにかく、そこの二科生たちを風紀委員にするのは反対です」
「待ってください!」
すると今まで黙っていた深雪が、服部の言葉に被せるように口を開いた。
「兄が二科生になっているのは、兄の実力がこの学校の基準にあっていないからです。
お兄様も、それから深紅も、実戦なら誰にも負けません!」
段々と口調をヒートアップさせて行く深雪に、服部が諭すような口調で言い出した。
「司波さん。我々魔法師は常に冷静を心がけるべきだ。身贔屓に目を曇らせるようではいけない」
しかしそれは、全くの逆効果だった。
「お言葉ですが、わたしは身贔屓に目を曇らせてなどいません!
お兄様も魔法だって本当なら……」
「深雪!」
思わず口を滑らした深雪を、達也が鋭く制する。
深雪はハッとしたような表情を浮かべて俯いた。
「服部副会長」
今まで、当人のくせに傍観に徹していた達也が一歩前に出た。
「俺と模擬戦をしませんか?」
これは、第三者から見たら、無謀としか言いようのない提案。
「調子にのるなよ!ウィードの分際で!!」
馬鹿にされたと思った服部が、顔を赤くして叫ぶ。
それを見ていた深紅が、くすくすと笑いを漏らした。
「何がおかしい!!」
深紅の方に鋭い視線を向けた服部に、深紅が更に笑う声を高くした。
「魔法師は常に冷静を心がけるべき、ではないのですか?服部刑部少丞範蔵副会長?」
「だからフルネームでは呼ぶなとっ……!」
完全に馬鹿にされ、更に頭に血を登らせる服部。
そしてその後、服部対達也の正式な模擬戦が行われ、達也が圧勝したのは言うまでもない……。
♦︎♢♦︎♢
「そういえば、わたしの実力とかは確かめなくていいんですか?」
模擬戦が終わり服部が演習室を出て行ってから、深紅がポツリとこう言った。
「わたしは達也ほど強くないですし、風紀委員になっても足を引っ張ってしまうと……」
風紀委員なんて面倒くさいことはしたくない、これが深紅の思いであった。
「不知火には風紀委員に入ってもらいたいと思ってる。何せあの不知火だ。武術の方もかなり長けているだろう?」
「いやぁ、わたしはそれほどでも……」
「深紅、何嘘をついているんだ?俺と試合をしても、ほとんど引き分けの実力を待っているだろう?」
一人だけ逃げるのは許さないぞ?と言わんばかりの顔をした達也に、あっさりと自分の強さを暴露される。
「それに深紅は、術式解体が使えるじゃないか」
おまけに、完全に確信犯のとどめの一言だ。
「なに?!不知火は術式解体が使えるのか?」
摩利をはじめとし、その場にいる先輩たち全員の目に驚きが走る。
「ええ……使えることには使えますけど……」
そう言いながら、達也の方に恨めしそうな視線を向けるも、そっぽを向かれてしまう。
−−−覚えておきなさいよ、達也。
その意を込めて、達也の方に精一杯の笑顔を見せる。
その笑顔の意味をきちんと汲み取ったのか、達也の表情がこわばった。
「術式解体が使えるなんて、風紀委員としては最高じゃないか。
よし、これから頑張ってくれたまえよ」
摩利の嬉しそうな声と反対に、はいと返事をする深紅と達也の声は暗かった。
後書き
なんか、オリキャラの登場・発言回数が少ないですね……。
にしても、達也の口調が難しい!
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