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真田十勇士

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巻ノ百二十四 大坂入城その十四

「やはり」
「では城の諸将の方々とですか」
「お話をしていきますか」
「南東に出城を築きつつ」
「そうしていきますか」
「そのつもりじゃ」
 こう十勇士と大助達に話してだった。幸村は話が一段落ついてからだった。彼等に明るい顔になって今度はこう言った。
「では話が終わったからな」
「はい、ではですな」
「もう夜ですし」
「これからですな」
「九度山を出てから控えていましたが」
「飲もうぞ」
 酒、それをというのだ。
「そうしようぞ」
「はい、それでは」
「今より樽と杯を出してです」
「そうしてです」
「心ゆくまで飲みましょうぞ」
「大助、お主もじゃ」
 幸村は笑って我が子にも声をかけた。
「飲むのじゃ」
「元服したからですか」
「そうじゃ」
 だからこそというのだ。
「ここはな」
「父上、そして十勇士達と共に」
「心ゆくまで飲め、そして朝酔いが残っておればな」
 二日酔いならばというのだ。
「まずは鍛錬で汗をかきな」
「その後の風呂か行水で、ですな」
「酒を抜くのじゃ」
「そうするのですか」
「そうじゃ、よいな」
「朝に酔いが残ると辛いのですか」
「これが相当に辛い」
 笑ってだ、幸村はその時のことも話した。
「重い風邪の様にな」
「そうなのですか」
「しかしじゃ」
「それがですか」
「鍛錬で汗をかきその後で風呂に入ればな」
「酒が抜けているのですか」
「そうじゃ、だからな」
 大助に笑って話すのだった。
「よいな」
「今は心ゆくまで飲む」
「そうしようぞ、では酒と適当な肴を持って来てな」
 そうしてというのだった。
「思う存分飲もうぞ」
「はい、それでは」
「これより酒を持ってきます」
「そしてそのうえで」
「殿のお言葉通り飲みましょうぞ」 
 十勇士達が早速幾つもの樽と大坂の海で獲れた見事な魚達を持って来た。そうして魚を刺身にして食べながらだった。大助も入れて心ゆくまで飲んだ。次の日の朝は幸村の言う通り鍛錬と風呂で残っていた酒を抜いた。


巻ノ百二十四   完


               2017・9・24 
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