儚き想い、されど永遠の想い
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313部分:第二十四話 告げる真実その二
第二十四話 告げる真実その二
確かな声でだ。伊上に述べた。
「それは」
「そうか。二人でか」
「どう思われるでしょうか」
「辛いぞ」
ここから話す伊上だった。
「真実を言うのは」
「それはですか」
「辛いですか」
「わかるな。辛いことがな」
それはだと。伊上は二人に話していく。
「君達もわかっているだろう」
「決断をするのに勇気がいりました」
「非常に」
そうだとだ。二人も話す。
「それがですか」
「辛いと」
「現に君達も今の顔も」
その表情からも話した。
「そうなっている。強張っている」
「強張っていますか」
「今の私達は」
「そう、強張っている」
実際に二人の顔を見ながら。そうしての言葉だった。
「勇気を振り絞って決めたな」
「それが辛いと」
「そうだというのですね」
「覚悟を決めることは辛いことだ」
伊上は言い切った。和服の袖の下で腕を組んでだ。彼の顔も強張っていた。
その顔でだ。述べたのだった。
「そして真実を言ってもだ」
「受け入れられるとは限らない」
「そのこともですね」
「わかっているな」
二人に問うた。このこともまた。
「君達は」
「確かに。不安ではあります」
義正がまた答えた。
「家族にどう思われるか」
「家族は信じているな」
「はい」
それは確かだ。家族を信じられる、幸せなことだ。
その幸せは義正にも真理にもある。しかしだ。
それでもだとだ。彼は言うのである。
「信じてはいますが」
「それでもだな」
「果たして。どうなるか」
家族に真理の病を受け入れてもらえるか、子供のことは許されるか、そして二人でいられるか、全てが不安で仕方なかったのだ。
そのことをだ。今二人は言った。
「若し受け入れられないと」
「どうなるか考えるだけで」
「それだけで苦しくなります」
「どうしても」
「そうだな。わかる」
伊上は短い言葉で述べた。
「だが。決めたのだな」
「やがてはわかることですから」
真理が答えた。今度は。
「ですから」
「そうだな。隠せるものではない」
死に至る病はだ。とりわけ労咳はだった。
「血を吐けばそれで終わりだ」
「それでわかってしまいますね」
「あの病は無慈悲だ」
死に至る病の中でだ。とりわけだというのだ。
「血は出してはいけない時に出てしまうものだ」
「それが労咳ですか」
「高杉さんがそうだった」
またここで彼の名前が出された。伊上にとって憧れの一人がだ。
「あの人もまた。動かねばならないというのに」
「血をですか」
「吐かれ。苦しまれた」
そうしてなのだった。高杉は。
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