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真田十勇士

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巻ノ百二十三 山を出てその九

「これがお仕事だからね」
「だからだな」
「行くよ」
 こう言ってだ、妖花はその背に何かを出した。それは紅蓮に燃える巨大な鷲を思わせる姿の鳥だった。
 その鳥を見てだ、幸村は言った。
「火の鳥、つまり」
「鳳凰だよ」
 妖花自ら和した。
「これはね」
「そうだな」
「私の火の術だよ」
「そしてその火の術でか」
「今から闘うから」
「では拙者も」
 幸村もだ、その動きを見てだった。
 姿を消した、そうして何処からか手裏剣を投げるが。
 妖花はその手裏剣を跳んでかわし鳳凰に言った。
「飛ばして」
「・・・・・・・・・」
 鳳凰は無言で応えそうしてだった、その翼をはばたかせた。するとその炎の羽根が周囲に飛ばされてだった。
 辺り一面を撃った、すると。
 羽根の一つが消された、妖花はそれを見て言った。
「そこだね」
「気付いたか」
「そうよ」
 こう言った、姿を表した幸村に。
「こうして攻めればね」
「例え隠れていようともか」
「居場所がわかる」
 こう言うのだった。
「だからな」
「それでじゃな」
「わかったよ。けれどね」
 妖花は再び対峙した幸村に言った。
「上手に隠れたね」
「万全に隠れたつもりだったが」
「半蔵様か私でないとね」
「見付けることは出来なかった」
「そうだったよ」
 幸村に微笑んで話した。
「とてもね」
「そうか、しかしな」
「しかしだね」
「拙者の手はまだある」
 それはというのだ。
「まだな」
「そうなんだ、じゃあ」
「その手も出そう」
「今度はどうするのかな」
「隠れても無駄なら」
 それならとだ、幸村は腰の刀を抜いた。その刀は村正だ。それを抜いて構えてそのうえで妖花に対して言った。
「隠れずに闘うのみ」
「そうくるんだね」
「左様、こちらで闘う」
 剣術でというのだ。
「それでもよいか」
「いいよ、私も炎だけじゃないからね」
 妖花も笑って応えた。
「だからね」
「それでか」
「こちらで闘うよ」
 この言葉と共に左手を前に出した、するとそこには忍者刀があった。その刀を手に幸村に対して言った。
「忍の剣術と体術でね」
「そちらでか」
「そう、こっちも隠れても無駄だろうし」
 幸村にはというのだ。
「だからね」
「そうか、ではな」
「行くよ」
 この言葉と共にだ、妖花は鳳凰を収めた。幸村はそれを見て彼女に問うた。 
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