新訳紅桜篇
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8 口は災いの元
身支度を済ませ、また子の部屋に向かうと、
彼女からこれからについての指示と、
必要なものを渡された。
特に重要だ、として渡されたのは、
トランシーバーだった。
_「これですか?」
_「そうッス、これッス。
あと、それの他に タブレットと、
スマホを渡しておくッス。
たぶん後からかなり必要になると思うんで。」
_「そうですか…。了解しました。
そして私は、工作がすんだら、船に戻る方向でいいのですね?」
_「うッス。宜しく頼んだッス。
あと、出発する前に、晋助様に挨拶していくッスよ。」
ゲゲゲッ!
なんで!?
_「高…総督自身から、わざわざ私のために餞別でもして
くださるんですか?」
_「そうみたいッス。今日の朝、晋助様にそう伝えておくように、と言われました。」
ヤダ、絶対
_「…先輩ィ、それ断ったら…」
_「そうそう、杏奈はそう言うだろうってことで、晋助様から「拒否権はない、もし逆らえば…俺の部屋に軟禁する」とのことでした。」
ゲゲゲッ!
なんだよ、逃げ道が全部塞がれてんじゃん!?
チッ、仕方ない。いうことを聞いておいてやるか。
_「……分かりましたよ、きっと挨拶して行きますぅ。」
_「上手くやるッスよ、杏奈。」
と、また子のとびっきりかわいい笑顔で送り出されてしまった。
憂鬱。とにかく憂鬱。
仕方がないので、受けとった道具たちを荷物の中にしまってから、(一応、)晋助の部屋にいく。
_「失礼します、零杏です。入りますよ、いいですか?」
と、一応断ると、中から返事があった。
_「入れ」
ったく、お前が呼びつけたんだろうが、
少しくらい紳士になれ、低杉野郎!
いかんいかん、口の悪さは命取り。
気を付けねば。笑
一応、中に入ってやった。
_「失礼します」
ドアを開けると、中のプレジデントオフィスのふっかふかの椅子に座って、こちらを向いていた。
_「オイ、零杏。扉を閉めて、ここ座れや。」
しぶしぶいうことを聞く。
_「一応、また子先輩から伝言を受けたので、参りました。何でしょうか?」
_「随分と、雑に扱われるんだな、オラァ。」
_「ええ、そうですよ。」
怒!
お!晋助が怒った、怒ったよー!!!
わーい、日頃の憂さ晴らしだー!
_「オイ、嬉しそうな顔するなや。」
_「すいませんね、笑笑笑」
立ち上がって、私の顎を掴む。
_「なんなら、すぐさまお前の任務を取り消して、お前を軟禁、いや、監禁することだってできるんだぜ?」
彼の右目が妖しく光る。
_「いえいえ、遠慮しておきます。
そんなことされたら私、自爆します。
壊れちゃいます。」
_「いいぜェ、いっそ壊れちまえ。オレと一緒に。」
ハイ、出ましたー!
晋助の厨二病!なんでもかんでも壊したい病!
_「高杉、」
_「晋助、だ。いい加減覚えろ。」
_「晋助、そんなんだから、背が低いのよ。
もっと大人になろうよ、ね?」
_「ほぅ…分かった、今日と明日は俺の部屋に監禁する。」
_「ちょっと待って、ちょっと待って、お兄サン?
分かった分かった、さっきのは撤回するから、
任務にいかせて、ね?」
_「ダメだ、おれを侮辱した罪、お前に分からせてやる。」
_「ヤダー!」
_「何をいっても無駄だ、零杏。
大人しくしておけ、お前に拒否権はない。」
クソォー!!!!!!
結局、今日の予定は全てパァーだ。
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