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楽園の御業を使う者

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CAST19

「宜しかったのですか?」

「あら葉山さん。何に対してかしら?」

「計画の破棄や深雪様と達也く…達也様の名字についてです」

「ええ、構わないわ」

「ですが、研究員や使用人には戸惑いを覚えている者も多く存在します」

「もう、いいの。いいのよ。
私の復讐は果たされた。別の形で、別の結末で…」

「『彼』ですかな?」

「ええ、そうよ…」

「『私の王子様』…ですか?」

「わ、忘れてちょうだい!」

「ほっほっほ。いえいえ。嗤っている訳ではないのです。
貴方が『御嬢様』だった頃から見ている私にとっても、彼は希望であり、英雄です。
そう、例えるならば、心を閉ざし復讐に身をやつす仕える主を、闇から引き上げたヒーロー…と言った所ですかな?」

「葉山さんが冗談を言ったのを初めて見たわ…」

冗談…ですか…

「では、老人の冗談として聞き流して頂ければ幸いです」

ああ、白夜殿…。

貴方は、真夜様を救って下さった。

私の悲願も、叶う日が来るやもしれない。

死ぬ前に…真夜様の御子様を一目見たいですな…

その願いも、きっと、貴方なら…

「あら?もうこんな時間ね…葉山さん、テレビつけてちょうだい」

「この時間に、ですか?」

「ええ、たしか今日だった筈だわ」

はて…今日は…

「なるほど、彼ですかな?」

「ええ、ゴールデンで、ゲストなんてねぇ…」

リモコンを、大型テレビに向ける。

テレビとして使った時間よりもヴィジホンとして使った時間の方が圧倒的に多いであろうモニターに、番組が映る。

きっと、真夜様このモニターで白夜殿のご活躍をご覧になる度、四葉は平和になるのでしょうな…

side out










「本番三分前でーす!」

おかしい…明らかにおかしい…

何故俺はプロダクションに入って二月も経たずにゴールデンの番組に出てるんだ…?

「緊張しているのかしら?」

「ふぇ!? あ、はい!」

隣に座っている女性から声をかけられた。

「私は小和村真紀、よろしくね?」

「は、はい、千葉白夜です」

この人誰だっけ?

原作に居たような居なかったような…

「この前はあんなに堂々として格好良かった貴方も緊張するのね」

「えっと、経験が無いので…」

小和村さんがいった『この前』。

テレビ局にテロリストが侵入した。

そのテロリストをCMの撮影に来ていた俺とマネージャーとして来ていた水波が制圧したのだ。

それで社長とかプロデューサーとかに気に入られてゴールデンに出てるんだがな!

「一ついいかしら?」

「は、はい何ですか?」

「あなた……男の…子?よね?」

「ええ、まぁ、一応男です」

「何でポニーテールなの?」

今の髪型は、赤毛を後ろで束ねたポニーテールだ。

「"るろうに剣心"ってマンガ知ってます?
百年くらい前の作品なんですが」

「いえ、知らないわ」

「そのマンガの主人公がこんな風に髪を束ねてるんです。
同じ剣術家ですし、どうせ女顔なら一番カッコいい格好をした方がいいじゃないですか」

「ふーん…暇があれば読んでみるわ。
ところでどうして百年も昔のマンガを知ってるの?」

「俺は道場の出身でして。
門下生にそういうのが好きな奴が居たってだけです」

「ふーん…」

「本番10秒前でーす!」

「ほら、始まるわよ?」

「ひゃい!」

ちくせう…



番組の内容は普通のバラエティ番組だった。

具体的に? 〈世〇一受け〇い授〇〉みたいなのを想像してくれ。

タイトルコールとゲストの紹介。

その最後に…

「そして最後のゲストはこの方!
質葉白夜くんです!」

司会の方に紹介されて席を立つ。

「質葉白夜です。宜しくお願いします」

質葉白夜(たちば・びゃくや)というのは俺のビジネスネーム(芸名?)だ。

「彼は先日のテロリストを制圧した我々にとっての英雄です!」

すると出演者やスタッフから拍手が上がった。

「それにしても君…小さいね」

「あはは…少し事情がありまして」

「でもそっちの方が可愛くていいじゃない」

と横の小和村さんに言われてしまった。

「俺も男ですからカッコいいって言われたいんですけどね」

あれ?出演者が凍りついたぞ?

「どうしました?」

「君…男?」

「はい男です…出演者リストに書いてたかと…」

「年は?」

「14になったばかりです」

えぇ~!? 見たいな感じでスタジオが沸いた…

「はー…男の娘ってやつだね」

「親戚の子にも言われましたよ」

現在、俺の身長110センチ……

まぁ、アレだ。

小さい頃に"不変"になってから、自律神経…特に成長に関する身体機能が狂ったらしい。

「ちょうど私の膝にのせられそうね…」

と、小和村さんが俺の脇に手を入れた。

「ちょっ!やめてくださいよ!」

が、それをどうにか振りほどく。

「あら…以外に筋肉質ね」

「おーい、真紀さーん。そろそろ始めたいけど、いいかなー?」

と司会の方が小和村さんに声をかける。

「あらごめんなさい。好みの男の子だったものですから」

うぇあ!?

思わず身を引いてしまった。

「あら?可愛い者が嫌いな女は居ないわよ?
ですよね、皆さん?」

小和村さんが他の女性出演者に問いかけると、全員が頷いた。

「えー、では小和村さんの意外な性癖が暴露された所で…」

その後、収録は無事に終わり、解散となった。

「白夜君」

「はい、何ですか小和村さん?」

「この後食事でもどう?」

うーん…食事ねぇ…嬉しくはあるけど、無理かな…

「色々予定が詰まっているので。
今回はお断りさせて頂きます」

現在の俺はかなり濃密な日々を送っている。

まず、学生であり、千葉の剣術家である。

それに加え101旅団の軍人であり、演習などにも参加。

二日に一回は九重寺に足を運んでいる。

あとこの前真夜さんからFLTでエンジニアをやらないかとも言われた。

「あら、残念。
じゃ、また会いましょうね」

「はい」

小和村さんと別れ、水波の下へ。

「お疲れ様です白夜様」

「うん。疲れた。スッゴく疲れた」

「では、帰りましょう」

side out












「あの女……!私の白夜君に…!」

「少し落ち着いては?白夜殿も嫌がっておりましたし、そのご心配は杞憂と思われます」

「そ、そうよね…」

「ガーディアンからもそのように報告を受けております」

「水波ちゃん…は大丈夫よね?」

「真夜様直々に釘を刺されたのでご心配無いかと」

あの時は驚きましたな…

よもや"夜"を使ってまで釘を刺されるとは…

恋する乙女とは、強い者ですな…
 
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