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真田十勇士

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巻ノ百二十二 集まる豪傑達その十

「先程と長曾我部殿ともお話をしたが」
「やはりな」
「茶々様が色々と動かれ」
「しかも織田殿が」
 織田有楽斎がというのだ、そしてその子の頼長もだ。
「何かと」
「怪しいでござるな」
「どうにも」
「おそらく幕府に」
 この親子はというのだ。
「通じておろう」
「間違いありませぬな」
「おかしな振る舞いがあり申す」
「あれはやはり」
「つながっているかと」
 こう話す、それは豊臣家譜代の者達も同じで。
 木村はその若く端正な顔で大野のところに来て彼に言った。
「修理殿、織田殿とご子息殿は」
「うむ、どうもな」
「怪しいですな」
「あの方は茶々様のご一門」
 茶々の母お市の方は信長の妹、そして織田有楽斎も信長の弟だ。つまり有楽は茶々にとって叔父にあたる。
「だからな」
「滅多なことは言えませぬが」
「あれではな」
「やはりですな」
「そう思うしかない」
「始終戦に反対しておられましたし」
「ご子息殿に至ってはな」
 頼長、彼はというと。
「わしも見たが」
「遊女達を連れるだけでもですが」
「その遊女達に武者の恰好をさせて興じておられる」
「ああして白の中を見回っておられますと」
 そうしたことをされてはというのだ。
「城の士気にも関わります」
「実際集まってきた浪人衆が眉を顰めておる」
「あれが一軍を率いる将かと」
「わしも止めておるが」
 実質的に戦の采配を執る大野にしてもだ。
「しかしな」
「それでもですな」
「お二人共聞かれぬ」
 有楽も頼長もというのだ。
「全くな」
「そしてですな」
「幕府ともじゃ」
 敵である筈の彼等ともというのだ。
「そうであるならば」
「最早ですな」
「放っておけぬが」
 しかしと言うのだった。
「言っても聞かれぬ」
「では」
 ここで木村は剣呑な目になり大野に言った、無意識のうちに腰の刀に手が添えられているのが余計に剣呑だ。
「それがしが」
「止められよ」
 大野はその木村を穏やかな声で制した、穏やかなのは豊臣の采配を振るう者故の器の大きさであろうか。
「それは」
「やはり茶々様のご一門だからですか」
「そうじゃ」
 まさにそれが故にというのだ。
「それは出来ぬ」
「左様ですか」
「元々豊臣にとって主筋の家じゃ」
 織田家はというのだ。
「しかも茶々様のご一門」
「それ故に」
「何もじゃ」
 まさにというのだ。 
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