碧い銀河
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夢想 その1
行動の準備
ヤン提督は帝国領から秘密裏に帰還の数日後、シェ-ンコップ隊長を招いた。
「司令官殿、御機嫌麗しゅう存じます。
今度は、ガイエスブルグ要塞を盗む準備ですかな?」
「以前に話した通り数十年の平和、慎ましい年金生活を望んでいたんだけどね。
ローエングラム侯爵の御尊顔を拝みに行って、致命的な欠陥に気付いた。
自由惑星同盟が無くなってしまえば、人生設計が成り立たない。
対策には君の協力、薔薇の騎士連隊の隠密活動が要るんだ」
「ほう、面白そうだ。
口説き文句としては、上出来の部類です。
まだまだ、精進は必要ですがね。
微力を尽くし、御希望を叶えてさしあげましょう」
「ありがとう、肝に銘じるよ。
ロボス元帥は《昼寝中》と称し、ピュコック提督の直訴を拒んだ。
フォーク参謀の献策を盲信し続け、候補生でも解る欠陥に眼を瞑り続けたのは何故か?
ローエングラム侯に麻薬中毒の為と疑うに足る書類、情報を見せられた。
そんな馬鹿な、と言いたい所だがね。
真実に指摘に耐え切れず、卒倒した精神疾患者の献策が盲信された事実と妙に符合する。
軍内部の医務官が健康診断データ改竄、真実の隠蔽を図った確率は高いと思う」
「なんてこった、世も末ですな!
失礼しました、先を続けてください」
「同盟軍内部に蔓延る破壊工作員の排除、大掃除が可及的速やかに必要だ。
フェザーンの領主、地球教団が陰で糸を引いている傍証も散見される。
御偉方の体面を慮り、非公式の査問委員会を開く方が良いだろう。
証人として艦隊指揮官、主要参謀達にも臨席を願わなければならないな」
「お言葉ですが貿易商人、地球教の坊主共を過大評価されとる様ですな。
帝国の陰謀、と見る方が妥当ではありませんか?」
「私も或る文書に接するまでは、全く同意見だった。
ローエングラム侯爵も認識を改めなければならない、と言っていたよ」
「ふむ、もうひとつ、お聞かせ下さい。
同盟首都ハイネセン制圧、最高評議会の刷新を図らない理由は?」
「テロ頻発の事態は目に見えている、首都の警備に戦力を割く余裕は無いんだ。
憂国騎士団を取り締まれない警察に、テロリスト達を抑えられるとは思えない。
ハイネセンの治安維持活動は無理だ、攻勢終末点を超えているよ」
「首都に残った輩が後釜の座を狙い、非常事態と称して最高評議員を見棄てるのでは?
臨時政権をでっちあげ、反乱軍の汚名を着せる事は確実と思われますが」
「その時は、その時だ。
もうひとつの第三勢力、イゼルローン共和国が誕生する事になるだろうね。
私としては最高評議会に最前線で陣頭指揮を執り、現実を御理解いただく方が望ましい。
官僚機構は優秀だから、首都を離れても問題は無いだろう」
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