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年上メイド

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第三章

「そうかな」
「私はそうだと思います」
「そうなんだ、とにかくもう会えないんだね」
「そうなりますね」
「それじゃあ」
 この時どう言うべきかは祖父に教えてもらって知っていたので言えた、その言った言葉はというと。
「お元気で」
「有り難うございます」
「こうした時はお礼を言うんだね」
「そういうものです」
 沙織はにこりと笑って答えてくれた、そして再来月にだった。
 沙織は言った通りに結婚し退職した、そうして彼女の従妹である沙苗が来たが沙織とよく似ていた。
 それで彼は沙苗にも懐き次第に沙織のことを忘れて日常生活に戻った。そうして成長していき。
 中学生になった時にだ、彼は今度は沙苗が結婚すると聞いた時にだ。ふとこうしたことを思い出した。
 それでだ、彼は執事の若田部洋一にだ、こんなことを言った。家に古くから仕えている還暦の礼儀正しい執事だ。
「沙苗さんが結婚するけれど」
「はい、そうですね」
 まずは屋敷の廊下でたまたま会った若田部とその場で話した。
「是非幸せになって欲しいですね」
「そうだね、ただね」
「ただ?」
「うん、実はあることを思い出したんだ」
 若田部に考える顔で言った。
「あの人の従姉のね」
「茂木さんですか」
「そう、沙織さんね」
 沙苗の苗字も同じである。
「あの人も結婚したよね」
「今はお子さんもいて幸せに過ごしています」
「そうなんだね、実はね」
「実は。どうやら」
 若田部は主の表情から察してだ、こう申し出た。
「場所を変えてお話すべきですね」
「それじゃあ」
「はい、こちらに」
 若田部は彼を自分の部屋に案内した、そしてだった。
 そこでだ、こう話したのだった。
「あの方が辞められる時久修様は悲しんでおられましたね」
「悲しいというかね」
 どういう気持ちだったかをだ、久修は話した。部屋の中にあった席に座って二人向かい合ってだ。
「寂しくて残念で」
「そうしたお気持ちでしたね」
「そしてこの気持ちは」
 どういうものかをだ、久修は自分から話した。
「初恋だったんだね」
「そうだったかと」
「そうだよね」
「人は誰しもです」
「初恋を経験するんだね」
「そしてです」
「僕の初恋は」
 まただ、久修は自分から言った。
「あの時だったんだね」
「そうだったのです」
「沙織さんに対して」
 久修は自分から言った。 
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