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楽園の御業を使う者

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CAST10

「さぁ…いつでも来やがれ相棒」
「そうさせてもらう!」
俺の挑発に対して達也が殴りかかってくる。
サイドステップで避けようとしたが握った拳が開かれた。
フェイント…!
ステップのベクトルを魔法で増大させ避けきる。
「おいおい、勘弁してくれよ相棒、頭一つは違うんだから掴み技なんてナシだろ…?」
「セメント(なんでもアリ)と言ったのはお前だろう?」
そう言いながら脚にサイオンを纏わせた蹴りを放つ達也。
おい!そう言うのはえーっと…レンジ・ゼロ?の十八番だろ!?
セルフマリオット、キャスト…
達也の蹴りを神経伝達速度以上の速さで上体を反らす事で避ける。
グキィ!
あげぁ!?
背中が!
しかしそれも一瞬の事、封印を解いておいた"老いる事も死ぬ事も無い程度の能力"によって回復した。
「あの…白夜さん…今の…大丈夫ですか?」
「No problem.…おい、達也、背骨が逝ったんだが?」
「今のはお前の避け方が悪いだろ」
「全然大丈夫ではないと思うのですが…」
何故こんな事になってるかと言えば…
それは少し時間を遡る。
俺は達也に連れられ、深雪さんと合流し、黒羽姉弟の部屋に来ていた。
「なぁ、俺の事について何か聞いてない?」
全員が首を横に振る。
「そか…で、暇なんだけどなんか無い?」
「白夜は宿題はやったの?」
と文弥に言われた。
「日記以外はな。
つか持ってきてねぇし、そもそも四葉に行ってましたなんて書けるか」
「それもそうだね…」
「じゃぁ…トランプでもどうでしょう?」
という深雪さんの提案に対し
「白夜は読心術、と千里眼を持っている。
本気になったらコイツの一人勝ちだろ」
「なんならやってみるか?達也だけは絶対負かすけど」
「遠慮させてもらおう」
うーん…
「白夜ちゃん白夜ちゃん」
「ん?どした亜夜子ちゃん?」
「また文弥を女の子に…」
「絶対反対!」
亜夜子ちゃんの提案に文弥が猛反発した。
「本人が嫌がってるからナシで」
「昨日はいきなりだったがな…」
「はい!そこ黙る!」
文句を言う達也を黙らす。
「あ、そうだ」
「はい、文弥」
「達也兄さまと白夜ってどっちが強いの?」
その問に対して、俺と達也は互いに顔を見合せ…
「「コイツ」」
と互いに指を指す。
「いやいやいやいや、お前の方が強いだろ、マヘーシュヴァラ。
なんたって敵艦隊を殲滅し、その上敵兵からも恐れられてるしな」
「いや、本気で戦えば確実にお前が勝つだろう、ヘイスーフーデイエ。
証言によれば未知の即死魔法が使えるらしいじゃないか。
その上天災を封じる程の力を持つ…」
「結局どっちが強いの?」
うーん…
「どっちもそうそう死なねぇしな…
分解…再生か…。
恐らく…………最後の手の内まで出せば…
あー…いや…どうかなぁ…?」
ゲートキーパーじゃぁ俺は止められないし…
境界を操る程度の能力で達也のATフィールドを消す…つまり世界と達也を分ける物を消す…いや…消える前に再生されるな…
「ならば御兄様と白夜さんで実際に戦ってみると言うのは…」
「深雪…それは…」
「多分太陽系が吹っ飛ぶけど…それでもいい?」
恐らく達也が本気を出せば…地球を丸ごとエネルギーに変換すれば可能だ。
「そこまでなのですか?」
「達也が地球にマテリアル・バーストしたらね」
「成る程…」
「だとしても白夜は死なないだろうがな…」
「おいおい、流石に死ぬって…」
「どうだか…」
いや、地球が吹っ飛んだら俺なんて一瞬で蒸発するからな?
あー…どうだろう?
魂が消えない限りは復活するのかな?
「では近接戦はどちらが勝つのですか?」
深雪さん…グイグイ来るね…
「体術じゃぁ体格で勝る達也が勝つよ。セメントならともかくね」
「セメント?」
「白夜…」
達也に視線を送られる。
意訳したら『妹に変な事教えてんじゃねぇぞ?あ"ぁ"ん!?』みたいな視線だ。
「説明頼むぜ相棒」
「はぁ…格闘技に於いてセメントと言うのは何をしてもいいという事だ」
「それなら白夜さんが勝てると?」
あっれぇ?深雪さんの目がこわいなー…
「ああ、近接戦で使える魔法の魔法のバリエーションは白夜の方が多いだろう」
おいおい…火に油を注ぐなよ相棒…
「では殺ってみてはいかがでしょう?」
おい、いま絶対字がおかしかったぞ。
「そうだな…やってみるか…」
と達也。
「達也兄さま、文弥と一緒に武道場の仕様許可を取ってきますわ」
といって亜夜子ちゃんは文弥を連れて出て行ってしまった。
許可って誰に取るんだ?
じゃなくて!
「俺の意思は?」
「諦めろ」
チキショウメ!
斯くして冒頭へ…
「その魔法…セルフマリオットか?
その魔法といい、構えといい…
マーシャル・マジック・アーツか?」
「多少アレンジしてるがな」
門下生に元MMA選手が居てソイツに習ったのだ…エリカもね。
「もう避けない」
「大きく出たな」
「ああ、コレはセメントだぜ?」
「そうか…シッ!」
達也の自己加速付きの右ストレートを…
"気を使う程度の能力"
ガァン!……ボキィ!
クロスガードで防ぐ。
て言うか達也…骨折れてない?
しかし達也は怯む事なくハイキックを放つ。
ガァン!
それを気で強化した片腕で受ける。
その後達也は後退した。
「おい相棒、手ぇ折れたんじゃねぇの?」
「問題ない」
そう言って達也は右手を閉じたり開いたりする。
再生で治したか…
「おい相棒、これ以上は周りを捲き込みかねん。次で終わらせるぞ」
「了解した」
互いに構える…
そして…
「「シッ!」」
同時に飛び出した。
俺と達也の距離が近づき…
トンッ……ベキィ!
抜き手の俺の指先が達也の胸に触れ、達也の拳が俺の顔面を捉えた。
イッテェ!……だけど!
次の瞬間、崩れ落ちたのは達也だった。
しかしポウッと達也の体が輝き、起き上がった。
「白夜、俺の敗けだ…」
ボウッ!と俺の顔が炎に包まれ、折れていた鼻等が元に戻った。
「あぁ、俺の勝ちだ」
危なかった…先に殴られてたら負けてたな。
「あの…」
「どうした深雪さん?」
「最後にいったい何が起こったのでしょうか?」
深雪さんの質問に黒羽姉弟も同意した。
「何をしたか?うーん…?
『気』って解るか?」
「『気』ですか?いえ、知りません」
「気ってのは古式で良く使われる言葉でな。
あらゆる生物が持つ生体波動だ。
さっき俺は達也の体に自分の気を流して達也の気を乱したのさ」
「「「?」」」
わかってないな…
くらった達也はわかってるみたいだけど…
「達也、説明よろしく」
「またか…」
と言いつつなんだかんだで説明してくれた。
「白夜、気って魔法じゃないの?」
「事象改変を起こす訳じゃないから魔法ではないな…」
気の追加説明をしていると…
「失礼致します」
武道場の入り口に葉山さんがいた。
「千葉白夜様、真夜様がお呼びです。
お一人で来て下さい」
あっれぇ!?俺なんかやらかしたっけぇ!?
「白夜、深夜様の件だ」
あ…そう言えば真夜さんと四葉深夜って仲悪かったよね…
あ…俺消されるかも…
 
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