ハルケギニアの電気工事
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第17話:領内改革!(その2-3)
前書き
今回は予定通りに投稿できました。
順調に領内の改革を実施中です。
どうぞお読みください。
おはようございます。アルバートです。
休みも明けて今日はいよいよ予定していた面接の始まりです。
面接希望者は昨日までに、近くの村からは歩いて、遠くの村からは馬や乗合馬車に乗って移動して来て、あらかじめ確保しておいた屋敷近くの宿に宿泊してもらっています。
朝になるとそれぞれ泊まった宿から、続々と面接希望者が『改革推進部』1階の面接控え室に集合して来ます。
この面接控室は『改革推進部』の中で一番大きな部屋を使っています。30人もの人を収容できる部屋は、此処だけでしたからね。
そろそろ面接開始時間の9時になります。全員集まっているようなので開始前の挨拶を行いましょう。
「皆さん、おはようございます。本日は当家の新事業に参加して頂く為の面接に来て頂き、ありがとうございました。昨日はゆっくり休めましたか?」
見渡した所、具合の悪そうな人も居ませんから大丈夫でしょう。
「初めに自己紹介をします。私はボンバード家の嫡男、アルバート・クリス・フォン・ボンバードです。この度のボンバード家領内改革総責任者で、今日の面接責任者でもあります。私の後ろに立っているのは面接補佐官をして貰うウイリアム・カスバートさんとキスリング・ハワードさんです。」
僕が紹介すると後ろの二人が軽く会釈をしました。面接希望者達もしっかりとお辞儀しています。
「早速ですが、本日の予定をお話しします。これより面接を開始しますが、面接の会場はこの部屋から廊下を隔てた向かい側にある部屋になります。
この後順番を決めるくじを引いて貰い、1番になった人から順に会場の方に来てください。大体一人10分程度の時間を予定しています。本日は30人の方がいますので、面接自体に約5時間程度かかる物と考えていますが、途中1時間の昼食時間及び別に小休止をを挟みながら行いますので合計7時間位掛かるものと思って下さい。
この部屋は控え室として使って貰いますので、常時執事を2名控えさせています。後ろの方に軽食や飲み物も用意しておりますから自由にしてください。トイレの場所などは執事に聞いてくれれば教えてくれます。ここまでで何か質問はありますか?」
僕の問いに、皆さん特に質問はないようでしたので、話を続けます。
「皆さんは、私が各村に配布した募集要項を十分理解しているものと考えて、雇用条件等の待遇についての説明は此処では置いておきます。
それでは面接の前に仕事の内容について再度お話しします。
まず、各村に人を募集した理由についてですが、この度、領内改革を行う為の第1歩として『改革推進部』という部署を発足させました。言葉の通り領内の改革を推進する為の本部となる部署です。この建物の入口に書かれているものに気がついた人も居るでしょう。この『改革推進部』の中に幾つかの局を設置する事になります。そして最初に設置する局として『保険衛生局』を作りました。」
前置きが長くなりますね。まあ仕方ないでしょう、しばらく聞いて貰います。
「この『保険衛生局』の仕事は公衆トイレの設置、屎尿のくみ取り、収集・発酵管理、農家への肥料の配布、及び村や町の清掃・消毒となります。
なぜ、この仕事を行わなければならないか。それは、村にしても町にしてもハルケギニアは不衛生すぎることが問題だからです。はっきり言って臭くて汚い。私が初めて町に出た時、あまりの臭さに頭が痛くなって倒れるかと思うほどでした。
このような状況ではいつ疫病が発生しても不思議では有りません。
その為、私は集落毎に必要な数だけ公衆トイレという物を設置することにしました。そしてこの公衆トイレ以外で用を足すことを禁止し、違反した場合の罰則も設けます。それから消毒と消臭を魔法薬で行います。これで村や町の衛生状況を改善します。
次に公衆トイレの屎尿を収集し、一箇所に纏めて発酵させます。この発酵した屎尿は肥料になりますから農民に無料で配り、畑の肥料として使うことを教えます。
これにより病気の発生を大幅に減少させると共に、田畑に使う肥料を作り農作物の増産と品質の改良を行います。
こうした事業を行う為に必要な人手として募集を行った訳です。今回採用された人は『保険衛生局』の局員となります。そして、『施設課』、『清掃課』、『管理課』のどこかに配属となり、今言った事業を現場で実施する事になります。
各課の役割を説明します。
『施設課』はトイレの制作、設置及び補修作業を行います。この課には4人を予定しています。
次に『清掃課』は村や町の中にある汚物、ゴミ、動物の死体などを収集し、焼却処分にすると共に、消毒薬と消臭剤を使って村や町の消毒及び消臭を行います。この課には2人を予定しています。
最後に『管理課』は屎尿のくみ取り、収集・発酵管理、農家への肥料の配布といった作業を行います。この課には4人を予定しています。
以上、合計10人を採用する予定です。なお、作業に必要な服や資材類は此方で支給しますから、あなたたちが用意する物はありません。」
大体の仕事内容について説明が終わりました。今度は面接についての説明です。
「以上が今回の募集に対する説明です。それではこれより面接の順番を決める為にくじ引きを行います。全員のくじ引きが終わったら、結果を控えている執事に知らせて下さい。それから10分後に1番の人から面接会場に入ってください。なお、午前中は12人の面接を予定しています。残りの18人は午後になりますからそれまで宿に戻るなり、散歩するなり自由にして貰ってかまいません。午後の集合時間は1時です。それから面接の終わった人は宿に戻って貰ってかまいません。
面接の結果については明日の朝9時に発表しますので再度集まってください。」
説明が終わり、くじ引きが始まりました。僕とウイリアムさん達は面接会場の方に移ります。
面接会場は奥側に長机と僕たちの座る椅子が3脚、ドアの方を向いて配置しています。その正面に面接者の椅子が1脚、机の方に向いて置いてあります。僕たちの方は中央に僕、向かって右がウイリアムさん、左がキスリングさんです。
面接会場に移って5分位するとドアがノックされました。
「アルバート様。くじ引きの結果が出ました。」
執事の一人がくじ引きの結果をもって来ました。結果に併せて面接用の書類の順番を整理します。一番の人は男の人で25歳ですね。
やっと準備が出来て、ウイリアムさん達と確認が終わった頃、またドアがノックされました。
「どうぞ」
と言うと、遠慮がちにドアが開かれて男の人が入ってきました。身長180サント位、髪は薄い金髪です。四角張った顔で眉も太く、なかなか頑固と言った感じですが、こんな面接は初めてなのでしょう。どうして良いか解らないようです。
「どうぞ、座ってください。」
大分堅くなっているようですが、椅子に座りました。
「自己紹介をお願いします。簡単で良いですから、名前、年齢、出身地、今まで何をやっていたか等を話してください。」
「はい。わっ、私はヴェルナーといいます。年は25歳で、リーベナウから来ました。今まで畑を借りて麦を作っていました。よろしくお願いします。」
「有り難うございます。リーベナウというと、ここから南東に30リーグ位の村ですね。ヴェルナーさんの村では何人位の応募者が居ましたか?」
「30人位はいたと思います。村のみんなを集めて村長がお触れの事を話したとたん、我先にと村長に詰め寄っていましたから。男も女も働ける年の者は殆どが希望したと思います。」
「そんなにですか。それでは2人に絞られるまで大変だったでしょうね。」
「はい。後から追加の条件が届きまして、村長が説明したんですが、なかなか諦める人は居ませんでした。一旦解散になって、次の日の夕方にまた集められて話をされましたが、この時村長から指名されたのは私を含めて6人でした。」
「6人ですか?その後は?」
「その後は村長も決められなかったんだと思います。仕方ないのでくじを引く事になり、私ともう一人が当たって此方に来る事となりました。」
やはり、最後の決定は村長では無理なのでしょうか。それでも6人まで絞れたのはたいした物です。
「やっぱり最後はくじ引きですか。多分何処も同じような状況でしょうね。解りました。それでは、この度の仕事の内容は理解されていると思いますが、3つの班に分かれて働く事になります。あなたはどの班を希望しますか?」
「畑で麦を育てていましたから、肥料に興味があります。出来れば『管理課』を希望したいのですが。」
「そうですか。あなたは独身と言う事ですが、面倒を見る親などは居ないのですか?」
こういった話を聞きながら、受け答えの仕方や、話し方などチェックし、大体10分位で終了とします。途中、ウイリアムさんやキスリングさんも質問していましたが、特に問題もないようでした。
「ご苦労様でした。これで面接を終わります。後は自由にしてください。」
こうして一人目が終わり、交代です。二人目は女性で18歳ですね。無い物ねだりですが、面接用の書類に写真が欲しい所です。本人かどうかの確認もやりやすくなるのですが。
ノックの後入ってきた女性は、160サント位の身長で、明るい茶色系の髪をしています。顔の輪郭は細面で、瞳は綺麗なグリーンですね。椅子に座って貰い、先ほどと同じように自己紹介から初めて貰いました。
こんな調子で午前中に12人、昼食を挟んで午後に18人の面接をしました。予定通りと言った所ですが、途中に小休止を入れたにしても結構疲れました。最後の面接が終わった時間は5時近くになっていましたから、昼休みを抜いて7時間です。
その後、ウイリアムさん達と面接結果の確認をしました。『管理課』希望が1人、『施設課』希望が20人で、『清掃課』の希望は9人でした。やっぱり『管理課』は嫌われる仕事でしたね。最初のヴェルナーさんの他には希望者はいませんでした。でも、この仕事が一番重要な仕事ですから、きっちり選抜して割り振りしないとなりません。
「お疲れ様でした。纏めに入りたいと思いますが、それぞれの課に欲しい人材は居ましたか?」
「見た感じ、可もなく不可もなくと言った所でしょうか。中に2人ほど使えるかなと思える人が居ましたが、キスリングの方はどうだい?」
「そうだね、大体同じ感想かな?私の方では3人位、良いかなと思う人が居たが、他は大して代わりはないと思います。」
二人に目に付いた人達5人の書類を選別して貰い確認しましたが、大体僕と同じような感じですね。僕は他に3人を選別して、合計8人となりました。
「私は此方の3人も使えると思いました。この8人は採用するとして、残りをどうするかですね。」
「そうですね。後の人はどれをとっても大差ないと思いますから。それこそくじ引きにしますか?」
「それもちょっと安直すぎるかな?そうだ、それぞれの生活状況を見て、生活が苦しい人から6人選んでください。出来れば家族持ちの人を優先に。」
生活が苦しくて家族が居れば、多少きつい仕事でも頑張ってやってくれるでしょう。
「そうすると、此方の6人が一番当てはまると思いますが。」
6人分の書類が選別されました。この内5人を『管理課』に入れて、ヴェルナーさんと合わせて6人で決定です。結局、男ばかりで合計14人になってしまいましたが、『施設課』4人、『管理課』6人、『清掃課』に4人としましょう。『管理課』と『清掃課』が少ないかなと思っていたのでこれで良しとします。
「男ばかりで14人ですか。4人多くなってしまいましたが、構成としてはこれで良いと思います。それから、今後の事も考えて事務を専門に行う部署も必要だと思うのですが、どうでしょうか?」
「事務というと、どういった仕事をするのでしょうか?」
「主に書類の作成や整理と言った事や、各地から来る案件の受付とかいった外で身体を動かす仕事ではなく、机でする仕事ですね。」
「なるほど、確かに私たちは外での仕事が多くなりそうですから、そう言った仕事をする人も必要になりますね。」
「はい。そこで、こういった仕事は力もいらないので女性にお願いしようと思います。ただ、読み書きや算術が出来ないとダメですから、すぐに使える人が居るかどうかが問題になるんですよね。私の見た限りでは今回の面接で条件に該当する人は1人だけでした。せめて3人位欲しいのですが、素養があるかどうか面接の時間だけでは確認できなかったので、後で別に確認したいと思います。」
「解りました。それでは女性の書類を分けて、明日もう一度確認しましょう。」
「それでお願いします。それでは私は父上に了解を貰いに行きます。今日はこれで解散としましょう。ご苦労様でした。また明日お願いします。」
ウイリアムさん達には上がってもらって、僕は父上に話をしに行きます。父上は、この時間ならまだ執務室にいると思います。
屋敷に入って執務室に行くと明かりが付いていました。居るようですね。ノックをして返事を待ってから入ります。
「父上、お仕事ご苦労様です。ちょっと時間を頂いて宜しいでしょうか?」
「丁度終わりにしようと思っていたところだ。何かあったかな?」
「先ほど、面接が終わりましたので、御報告に参りました。」
「ああ、朝から大変だったな。それで、どうだった?」
面接の状況を省略して話しましたが、面接自体の時間が結構掛かったので省略しても説明に15分位かかってしまいました。
「そう言った訳で、当初予定していました10人の所、まず14人を採用としました。こちらが採用者の書類です。」
採用者の書類を父上に見せます。ざっと確認してもらいます。
「後は、事務専門の部署を作りたいので、明日、女性から3人選抜しようと思います。こちらは読み書きや算術が出来る女性を選びたいので人数が揃うか解りませんが、どうしても集まらなければ子供を集めて教育しようかと思います。」
「良く考えているようだな。解った。教育する事を考えるとかなり時間も掛かると思うが許可しよう。思いっきりやってみなさい。」
「有り難うございます。頑張ります。」
これでやっと第1段階の『保健衛生局』を始動するための局員が揃います。ついでに『事務局』まで作る事になりましたが、後は装備品を揃えて、作業方法を周知すれば作業自体は開始できます。ほっとしましたね。
忙しかった面接初日はこうして終わりました。
後書き
引っ越しから3週間が過ぎて大部落ち着いてきましたが、先週の雪にはまいりました。
こちらは除雪体制が無いみたいで、いつまでたっても雪が片付きません。
おかげで現場に向かうのにいつもの3倍くらい時間がかかりました。
今週もまた雪が降るようなので、今から心配です。
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