DQ8 呪われし姫君と違う意味で呪われし者達(リュカ伝その3.8おぷしょんバージョン)
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第十四話:パペット・マペットのショートコント
(リーザス地方・ポルトリンク沖)
リュリュSIDE
「ねぇゼシカちゃん。もしかしてウルポンに口説き落とされたの?」
「はぁ? 何言ってるの……彼は気安く女を口説く様な男じゃなく、凄い紳士よ。まぁ多少口は悪いみたいだけど」
何と! 真実を知らないとは恐ろしい……
ウルポンとゼシカちゃんが妙に仲良しこよしさんだったから、思わず聞いてみちゃったけども、『紳士』とか正反対の言葉が発射され蕁麻疹が止まりません。
まぁ直ぐに宰相閣下の正体に気付く事でしょう。
さてさて、ウルポンは既に私達(主にアハト君等)の旅の目的をゼシカちゃんに説明していたらしく、ドルマゲス打倒と言う共通目的を理解した彼女は共闘を申し出たそうな……
好みの女性が旅の友になることを望ましいと思うウルポンは、アハト君やトロデさんの意見を聞く事無く、一緒に冒険する事を勝手に許可。
リーザス村を出立する前夜のうちに、怪しい人物がポルトリンク方面に向かったと言う情報を取得して、ゼシカちゃんと共にポルトリンクへ行く事をこれまた勝手に打合せ済みに。
そのくせ事前に通達する事無く、サプライズを敢行するからアハト君等は困惑気味。
お兄さんの敵討ちに燃えるゼシカちゃんを前に、共闘&共旅を反対する事が出来ないアハト君等は心底困ってますよ。
どうしてこんなに性格が悪いのに、ゼシカちゃんの口からは奴が紳士である旨の言葉が出てくるのか?
真の姿を知ればゼシカちゃんも目覚めるでしょう……って事は、時間の問題ですね。
んで、現在我々はポルトリンクから船で沖へと出てきてます。
何故かと言うと……
如何やら沖で船を沈没させる悪い子が居るらしいんです。
そんな悪い子をお仕置きするべく、ゼシカちゃんが船員さんに『私が戦うから!』と言ったそうなんですが、船員さんは『お嬢様にそんな危険な事をさせる訳にはまいりません』と拒絶。
最近戦わせて貰えない私も、彼女の立場にシンパシーを感じます。
んでんで、結局のところ如何なったかというと、お嬢さんには戦わせないで、旅の者である私達(と言ってもアハト君等だけ)を戦わせると言う事で、取り敢えずの決着が付きました。
なので現在、海の上!
お日柄も良く船に揺られてマッタリ気分。
ラン君と一緒に彼が作ってくれた甘いミックスジュースを飲み、幸せ気分を満喫。
ひねくれ者のウルポンは、難しい顔して何も無い海を眺めております。
折角の船旅なんだから、楽しめば良いのに……
ですが、そうも言ってられなくなりました。
突如海の中から大きなイカさんが出現!
そして……
「気に入らねーなぁ……まったく気に入らねー!」
何かが気に入らないらしく、とてもご機嫌斜め。
ラン君特製のミックスジュースでもあげようかしら?
「人間って奴は勝手に俺様の上を通過しやがる! まったく気に入らねーと思わねーかぁ?」
大きいイカさんの突然の出現にウルポン以外が驚いていると、イカさんは右の足をパペットの様に見立てて、何が気に入らないかを激白!
そして……
「おうよ兄弟。本当に人間って奴は気に入らねー!」
今度は左の足をパペットに見立てて右足と会話を開始。
イカは足が沢山あるのだし、何人の兄弟が出現するのでしょうか? ワクワクしませんか?
「ホント、ホント……人間は躾がなってねぇ!」
「おう、こりゃぁ海の生き物代表として人間を喰ってやろうか」
「おう、喰ってやろう!」
「では……「イオラ!」(どかん!!!)
結局二人しか兄弟が出てこなかったイカさんの足劇場に、イライラした顔つきでウルポンがイオラを放った。
その衝撃にイカさんは仰け反りながらも、慌てて二本の足(先刻の兄弟足)で船の両サイドを掴み体勢を整えようと試みる。
「アハト君、ヤンガス……二人で分担し奴の足を押さえ付け、こちらに引っ張り込め!」
「は、はい!」「りょ、了解でがす!!」
「う、うわぁ……ちょ、ちょっと待って……う、動けねぇ……」
船首に押し付けられる様足を引っ張られ、目の前にはイラつきがMAXの人間が……イカさんピンチ!
逃げて! その極悪宰相から早く逃げてぇ!!
「メラ」(ジュッ!)
「熱い!」
極悪宰相は腰から剣を抜くと、剣先にメラを灯しそのままイカさんの顔へ押し付ける。
ほのかにイカ焼きの匂いが……お腹が空きました。
「メラ」(ジュッ!)
「あ、熱い! か、勘弁してください!」
今このシーンを見ると、どちらが悪者なのか解りません。あ、ウルポンは常に悪者だった。
「気に入らねぇーなぁ……目の前でくだらねー寸劇を見せられて、気に入らねーなぁ兄弟」
「おう気に入らねー。この躾のなってねぇイカ野郎が気に入らねー!」
身動きのとれないイカさんの目の前で、今度はウルポンが両手をパクパクさせて寸劇を披露する。
「おい兄弟……お前のメラゾ-マでこのイカを丸焼きにして食っちまおうぜ」
「いいね兄弟。この気に入らねーイカ野郎を丸焼きにして食っちまおう!」
寸劇が終わったのか、台詞を言い終わると両手を頭上に掲げて巨大な火の玉を生成する極悪宰相。
「うわぁぁぁぁ!!! ま、待ってください! わ、私……先刻まで呪われてたんですぅ。もう目覚めました……貴方のメラでキッチリ目が覚めました!」
「ふざけんな……誰に呪われてたって言うんだよ?」
「あ、アイツです……海を歩いて渡った道化師野郎です!」
「海を歩いて渡った道化師?」
イカさんの言い訳を聞き突然何かを思い立った極悪宰相は、「ちょっと待ってろ」と身動きのとれないイカさんに告げ、自分の荷物を取りにその場を離れた。
即座に戻ってくるや、コッチの世界に来て早々に購入したスケッチブックにサラサラと何かを描いてページを破り取る。
そしてイカさんに描いた絵を見せて、
「お前の言う道化師ってのはコイツか?」
と確認作業。
その絵を見たイカさんは、
「こ、コイツです! 間違いなくこの男です!」
「ほう、やはりドルマゲスか……」
え? ドルマゲスって私達が追ってる道化師さんですよね。何で絵を描けるくらいウルポンが顔を知ってるの?
「うわぁ……とてつもなく絵が上手いわね!」
「ウルポンの特技なんですよゼシカちゃん。顔以外で誇れる唯一の長所なんですよ」
「羨ましいか? お前は容姿以外は誇れる物が何も無いからな」
くぅぅ……一々腹立つわぁ!
他の誰に言われても頭にこないけど、ウルポンにだけは言われると腹が立つ!
もう、口の悪さは神の領域ね。いや……悪魔か!
「さて……お前を呪った奴は分かった。だからと言ってお前を一方的な被害者にする訳にはいかない。って訳で、お前が沈没させた数々の船への罪を償ったもらう。死刑だね!」
『死刑』って言った途端、最高の笑顔を見せるウルポンは、やっぱり極悪野郎だと思う。
「ちょ、ちょっと待てください! 私の意思じゃ無かったんですよ!?」
「急に暴れたくなったのはお前の意思じゃ無いとしても、簡単に呪われる様な心の弱い馬鹿を放置する訳にはいかない。また例の道化師が現れたら如何する? また簡単に呪われてこの海域を行き交う船を沈没させるのか? そうなっては困るんだよ……だから今の内に貴様を死刑にする。納得出来るだろ(ニッコリ)」
「納得出来るか!」
うん。納得出来ないわね。
理解出来るけど、納得する事は出来ないわ……本人にとってはね。
「お前が納得出来なくても、船の沈没で死んだ人々の家族は納得出来る! だから大人しく殺されろよ……な」
「『な』じゃねー! 殺される事に納得出来るか!」
満面の笑みでイカさんを殺したがってるウルポン……悪人です。
「あの……旅の方」
楽しそうにイカさんを死刑にしようとしてるウルポンに、水夫の方が話しかけます。
「何?」
話しかけられた極悪人は面倒臭そうな顔……先刻の笑顔は如何した!?
「あ、はい……今回の沈没事件で死んだ者は居りません。被害は船や積荷だけです」
「そ、そうなんですよ! 私、人は殺しておりません!」
イカさんも初耳だったのだろう……一瞬は驚いていたけど、助かる為にその事を強調しております。
「……それ……関係ある?」
いやいやいや……関係はあるんじゃないの?
キョトンとした顔でウルポンは周りの人々に問いかけてる。
「先刻も言ったけど、また道化師が訪れたら、今度こそ死人が出るかもしれないんだよ? 今の内に殺しといた方が良いんじゃねぇーの?」
極悪野郎ウルポンは如何してもイカさんを死刑にしたい模様……悪魔ですね。
「待ってください! 前回は油断してたから呪われてしまいましたけど、今後は気を引き締めて生きて行きます。もう呪われたりは致しません!」
必死だ……イカさんも必死になって命乞いをしている。
これはイカさんを助けるのが、反ウルポン派の仕事ね。
「ねぇウルポン……今後はこの海域を守ってもらう事を約束させるってのは如何? 何も死刑にするだけが解決方法じゃ無いと思うんだけど?」
「流石リュリュさん! 何てお優しいのでしょうか? 私もリュリュさんの意見に賛成ですぞウルフ殿。今後は守り神として尽力する事をイカ殿に誓わせましょうぞ!」
おおぅ、ラン君が大いに賛成してくれた。
とは言え性格極悪野郎が簡単に死刑を免除するとは思えませんわね。
ゼシカちゃんにも色仕掛け方面で説得をお願いしましょうかしらね?
「そうか、皆がそこまで言うのなら、この海域を守る事を厳守すると言う事で、このイカの罪を許してやろうじゃないか!」
あれ! アッサリ免除を認めてくれた。如何した極悪野郎ウルポン……何か悪い物でも食べたのかしら?
「何様だアイツは? 随分と上から目線で死刑免除を受け入れたぞ(笑)」
私がウルポンの素直さに驚いていると、ラン君が彼の偉そうさ加減に苦笑いしてる。
極悪野郎の素直さは驚きポイントじゃ無いのですか?
「約束します! 私は今後はこの海域の安全を守るイカとして生きて行きますぅ!!」
ラン君の独り言は小さすぎて私にしか聞こえなかったみたいで、イカさんは守り神役を受け入れ体勢で命乞いしてます。
「よし。では貴様にはこの海域の安全を守る事を命じる! 良いか、俺は常にこの海域の出来事に注視し続ける……もしも何らかの事故が起きて、その情報が俺の耳に入ってきたら、世界の何処に居ても飛んできて、この海の水を全て蒸発させても海底から貴様を引きずり出し、地獄よりもキツイ罰を与えるからな!」
「はいぃぃぃ! 肝に銘じ、心を強く持って海の安全を守り続けますぅ!」
恐ろしいくらいの目力でイカさんを睨み付け脅すウルポン。
イカさんも本当に怖いのか、涙声で守り神役を誓ってる。
この海の水を全て蒸発させるなんて、出来る訳無いのに……嘘吐き野郎め。
「よし、アハト君・ヤンガス……イカの足を離して良いぞ」
「ふぅ、やれやれ」「まったくやれやれでがすね兄貴」
ラン君じゃありませんが、本当に何様ですかねぇ?
偉そうに……
リュリュSIDE END
後書き
リュリュさんがウルポンをどれくらい嫌いかと言うと、
ゴキブリ屋敷で暮らすのとウルフと同棲するのと
どちらを選ぶか聞いたら、
迷わず「ゴキブリ」と言っちゃうほど嫌いです。
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