| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

天才薬剤師

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第二章

「先生が要求される報酬は多いので」
「老後や学費や生活費よりも」
「先生の生活質素ですし」
 ロートは贅沢には興味がない。
「薬を調合するにも材料は」
「そう、私自身が持っているものもあるが」
「それでもですよね」
「私が受け取っている報酬からすればだな」
「はい、ちょっとですよ」
 まさにというのだ。
「ほんの些細な額で。報酬の殆どは残りますが」
「その報酬の殆どを何に使っているか」
「気になったんですが」
「だから答える必要はあるのかい?」
 ロートから弟子に聞き返した、逆に。
「私が」
「そう言われますと」
「犯罪捜査でもないね」
「ただ気になったので聞いているだけです」
「なら答える義務はないね」
「そうなりますね」
 弟子もそのことを認めた。
「それは」
「ではね」
「答えてくれませんか」
「そうさせてもらうよ」
 こう弟子に言った。
「今はね」
「そうですか」
「うん、ではね」 
 ロートはさらに言った。
「これからまた依頼が来ているから」
「薬の調合をですね」
「するよ」
「ではお手伝いをさせてもらいます」
 弟子としてこう答えてだ、彼はロートへの質問のことは忘れてそちらの手伝いをした。ロートは報酬の使い途を言わなかった。
 しかし大阪のある孤児院にだ、当然に何億もの寄付があった。それで孤児院の理事長さんは驚いて事務の人に聞いた。
「五億もかい?」
「はい、うちの孤児院にです」
 事務の人は理事長さんに答えた。
「寄付で」
「五億もかい」
「きています」
「驚いたよ、それだけあれば」
「借金を返せますし」
「孤児院の運営もね」
「困らないです」
 事務の人も言う。
「本当に」
「全くだよ、神様みたいに優しい人がね」
「寄付をしてましたね」
「そうとしか思えないよ」
「一体誰でしょうか」
 事務の人は差出人不明のその寄付の主について考えた。
「五億もポンと寄付してくれるなんて」
「うん、だから神様みたいな人とね」
「理事長さんも言われたんですね」
「そうだよ、そして誰かわからないけれど」 
 それでもとだ、理事長さんはさらに言った。
「その神様みたいな人にね」
「孤児院は救われましたね」
「孤児院にいる子供達もね」
 そうなったとだ、理事長さんは寄付をしてくれた人に心から感謝して言った。この寄付のことは大阪でも有名になった。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧