儚き想い、されど永遠の想い
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193部分:第十五話 婚礼その二
第十五話 婚礼その二
「三人になりさらに」
「子供は一人だけとは限らない」
「私達がそうである様にな」
「はい、私達は四人兄妹ですから」
「それと同じだ」
「一人とは限らないのだ」
兄達はまた義正に話した。
「家族は増えていくのだ」
「幸せはな」
「幸せは増えていくもの」
義正は兄達の話を聞いて呟いた。そのこともまだ信じられなかった。
「二人だけではなく」
「実際に父上と母上がそうではないのか?」
義愛は弟に対して述べた。
「御二人は。実際にだ」
「結婚し二人になり」
「そうだ。私達を産みだ」
「より幸せになったのですね」
「子供はその存在自体が幸せなのだから」
父親になるからこそ。だからこそ言える言葉だった。
「だからこそだ」
「左様ですか」
「そう。幸せは増えるもの」
今度は義智が言う。このことはだ。
「限りがあるものではないのだ」
「限りなく増えていくもの」
「それが幸せだ」
義智はこう義正に話す。
「そうしたものなのだ」
「二人だけでなく。限りがあるものでもなく」
「その無限の幸せがだ」
「今からはじまる」
兄達は温かい目になり。弟に話していく。
「現実のものとしてな」
「そうなっていくのだから」
「今はそれが次第にわかってくる時なのだ」
「だから。今はだ」
「今はそれを実感する時ですね」
このこともわかった。兄達と話して。
「私自身が」
「だから。しっかりとな」
「そうしてくれ」
「わかりました」
このことはわかったのだった。現実になるかどうかはまだだが。
そうした話もするのだった。そして義正は兄達にこんなことも話した。
「それでなのですが」
「うむ、何だ」
「何かあるのか?」
「現実のものだとわかる幸せについてです」
そのことだとだ。彼は笑顔で兄達に話す。
「それを味わって欲しいのですが」
「味わう」
「というとそれは」
「ワインです」
微笑んでだ。それだというのだ。
「それは如何でしょうか」
「ワインか」
「どの国のワインなのだ?」
「我が国です」
つまりだ。日本のワインだというのだ。
「甲府でとれた葡萄からのワインですが」
「あれか。我が家も売っている」
「あのワインか」
「飲んでみましたが美味です」
この時代ワインといえば舶来のものだった。北原白秋も詩に残していることからもわかる。だが義正はだ。あえて我が国のワインだというのである。
「それは如何でしょうか」
「そうだな。我が家のものを確める為にも」
「ここは」
「飲みましょう」
笑顔でまた言う義正だった。
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