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真田十勇士

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巻ノ百二十 手切れその八

「全く、しかし大名達はか」
「どなたもです」
「来ぬか」
「天下の浪人衆は別にして」
「では誰が来るのじゃ」
 その浪人達の中でというのだ。
「一体」
「明石全澄殿、後藤又兵衛殿、塙駄右衛門殿達が」
「聞いたことがあるのう」
 茶々にしてみれば天下の豪傑達もこの程度だった、家康はどの者の名を聞いても目を瞠ったが。
「後藤殿はよく知っておる、天下の猛者ではないか」
「はい、その方々にです」
 大野はさらに話した。
「岩見重太郎殿、それに長曾我部盛親殿の」
「前の土佐の主じゃな」
「その方も」
「それは心強いな」
「はい、それにです」
 大野はさらに話した。
「宮本武蔵殿や大家に刑部殿のご子息も」
「来るのか」
「そして真田家からも」
「真田?」
 真田と聞いてだ、茶々は少し声をあげた。
「確か九度山に流されておる」
「はい、お父上はもう亡くなられましたが」
 それでもというのだ。
「ご子息の真田源次郎殿がご健在で」
「その者がか」
「今文を送っております」
 大野自ら書いたそれをだ、実は彼は他の主な浪人達に対してもそうして来ると約束を貰っているのだ。
「そしてどうやら」
「来てくれるか」
「この大坂まで」
「そうか、して数はどれ位になる」
「十万位かと」
「では勝てるな」
 茶々は十万と聞いて笑みを浮かべて言った。
「それでは」
「それは」
 大野はその返事には窮した、勝てるとは彼もあまり思えなかったからだ。だがその本音は隠し。
 そのうえでだ、茶々にこう言った。
「後は戦次第」
「戦の場でどう戦うかか」
「左様です」
「わかった、ではじゃ」
「はい、兵が集まれば」
「戦じゃ、そして戦に勝ってな」
 そのうえでとだ、茶々は大名達の話から一転してそのうえで明るい笑顔になってそのうえで言った。
「天下人は誰かをな」
「天下にですな」
「はっきりさせようぞ」
「わかり申した」
「して修理」
 茶々は大野にさらに言った。
「戦の采配じゃが」
「そのことですか」
「誰が執るのじゃ」
 今度はこのことを聞いてきた。
「やはり右大臣殿か」
「それは」
「ならば申し分ないな」
 こう大野に言うのだった。
「右大臣殿ならば」
「天下人だからですか」
「天下人自ら兵を動かせば」
 それでというのだ。
「勝てぬ道理はないわ」
「そう言われますか」
「そうじゃ」
 何の根拠もなく言うのだった。
「だからな、この度の戦はな」
「右大臣様ご自身が采配を執られ」
「当然の様に勝つ」 
 そうなるというのだ。
「この度の戦はな」
「そうなりますか」
「うむ、何の問題はない」
 それこそというのだ。
「それでな」
「その様にされて」
「負ける筈がないわ」
 茶々の言葉は普遍のものがあった、だが。
 この話の後でだ、茶々の話を聞いた者達が大野に言ってきた。 
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