ドリトル先生と奈良の三山
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第二幕その九
「そうしたものは比較的よく守られてきたからね、それにね」
「それに?」
「それにっていうと」
「宗教弾圧とか文化統制がなかったから」
他の国にあるそうしたものがです。
「それでなんだ」
「ああ、他の宗教へのだね」
「色々な国であったわね」
「けれど日本ではそれがなかったから」
「仏像とかも残っていて」
「他の資料や記録も」
「明治の頃には廃仏運動もあったけれど」
それでもというのです。
「こうしてかなり残ってもいるから」
「実物を見られて」
「そのことからも勉強出来る」
「そうなのね」
「日本にいたら」
「奈良時代みたいな大昔のことでも」
「そうだよ、これが欧州だとね」
先生達の祖国であるイギリスもあるこちらはといいますと。
「古代ギリシアやローマはともかくね」
「何かよくわからない時代もあるよね」
「暗黒時代とかね」
「具体的にどういった時代か」
「はっきりしない時代があるね」
「資料や記録が残っていないからね」
そのせいでというのです。
「どうしてもね」
「わかりにくいんだね」
「暗黒時代の頃は」
「西ローマ帝国から滅んで暫くは」
「よくわかっていないのね」
「そう、けれどね」
それでもというのです。
「日本はこうしてね」
「暗黒時代と大して変わらない時代でも」
「普通にわかってるのね」
「奈良時代でも」
「そしてその前の飛鳥時代も」
「そうだよ、このことが有り難いよ」
学者として言う先生でした。
「何かとね」
「戦争が少なくて宗教弾圧もなかった」
「するとその分だね」
「平和でものも残る」
「そういうことね」
「そうだよ、このことがどれだけ有り難いか」
また学者としてお話する先生でした。
「日本は学ぶ環境は整っているよ」
「資料や記録が残っているから」
「昔のことまで」
「だからだね」
「いいのね」
「そうだよ、じゃあ正倉院の次は」
さらにと言う先生でした。
「春日大社に行こうか」
「ああ、あの鹿さん達の神社ね」
「何か凄い大きいっていうけれど」
「あの神社に行くの」
「今度は」
「そうしよう、あと今は大丈夫だけど」
こうも言う先生でした。
「鹿君達に角があったらね」
「ああ、危ないよね」
「そういえば雄の鹿さん達には角あるからね」
「その角には気をつけろ」
「そういうことね」
「毎年秋に切っているんだ」
鹿達のその角をというのです。
「本当に危ないからね」
「そのことも気をつけているんだ」
「鹿さん達の角のことも」
「そうだったの」
「只でさえ仕返しをしてくるからね」
奈良の鹿達はそうした鹿達なのです、ちょっかいをかけられて黙っている様なことはしないのです。
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