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とある3年4組の卑怯者

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92 使命

 
前書き
 藤木への想いを諦めかけていたみどりはリリィと出会い、彼女から自分にしかできない事をすれば振り向いてもらえるかもしれないとアドバイスを受け、みどりは堀に負けない事を決意する。一方、堀と共にいる藤木の姿を目撃した笹山は・・・!? 

 
 藤木はみどりを探していた。心当たりあるのがまる子の家だ。もしかしたら彼女に泣きながら相談しているのかもしれない。
(あ、でも、さくらに不幸の手紙を出したんだ・・・。追い返されるかもしれないな・・・)
 藤木は複雑な思いでさくら家へと向かった。

 みどりはリリィと別れた後、さくら家に行っていた。そしてまる子と対面していた。
「もう~、びっくりしたよ、どうしたの?」
「あの、まる子さん・・・、藤木さんの事なんですが・・・」
「はあ、藤木!?」
「はい、まる子さんに不幸の手紙を出したって聞いたんです」
「ああ、そりゃそうだよ、アイツは本当に嫌な事してたもんだよ!アタシとおじいちゃんは泣いてたもん!他の皆はくだらないって思ってたけど」
「でも、これだけは分かってください、まる子さん」
「え?」
 まる子はみどりがいつもより気の強そうな表情をしていた。
「藤木さんは好きで手紙を出したんじゃないんです!自分に不幸の手紙が来て慌てて出してしまったんです!!ですから、藤木さんを悪く言わないで下さい!!藤木さんも反省していますし、まる子さんにも謝りたいと言っていました!!」
「え!?藤木が?」
「はい!」
「そっか・・・、分かったよ・・・」
「まる子さん・・・、ありがとうございます!!」
 その時、まる子の母が来た。
「みどりちゃん、藤木君が迎えに来たわよ」
「え?は、はい・・・」
 みどりが玄関に来ると、藤木がいた。
「みどりちゃん・・・、やっぱりここにいたのか、僕も堀さんも心配してたよ」
「藤木さん・・・、すみません」
 その時、まる子が現れた。
「あ、さくら・・・、みどりちゃんがごめん・・・。それから不幸の手紙を出して本当にごめんよ・・・。それじゃ、僕はこれで失礼するよ」
「藤木・・・、う、うん・・・」
 藤木とみどりはさくら家を出た。
「あの、藤木さん・・・」
「何だい?」
「さっきは勝手にいなくなってすみませんでした。私、藤木さんが堀さんと仲良くなているのを見て、ヤキモチ妬いてしまったんです。でも私、簡単に諦めてはいけないと思いました。だからまる子さんに藤木さんの気持ちを伝えました!まる子さんも分かったと言っていました!!」
「そうか、ありがとう・・・」
 藤木はみどりが自分のために行動してくれているとは考えもしなかった。その時・・・。
「ちょっと、藤木じゃないのよ!」
 藤木とみどりは声の方向を向いた。みぎわが愛犬のアマリリスを連れ、さらに冬田と共に立っていた。
「み、みぎわに冬田・・・」
 藤木はとんでもない所で遭遇してしまったと思った。
「アンタ不幸の手紙を出した癖に女の子と歩くなんてホント変な神経してるわね!」
「そうよお、調子乗りすぎよお!」
 藤木はどうしようと動けなくなった。
「そこのアンタ、ソイツは不幸の手紙を出した卑怯者なのよ!離れた方がいいわよ!」
「そうよお、あなたも何されるか分かんないわよお!」
 みぎわと冬田はみどりに藤木から離れるよう催促した。しかし、みどりはこの二人の言動に怒りを覚えた。
「ふ、藤木さんはそんな人じゃありません!!」
 みどりは怒り返した。
「なんですって!?」
「藤木さんは好きで不幸の手紙を出したんじゃありません!藤木さんの所に不幸の手紙が来て、怖くなって出してしまったんです!それに、藤木さんはその事を今すごく反省しています!どうしてわからないんですか!?」
(みどりちゃん・・・)
 藤木はみどりがこんな真剣に庇う姿を始めて見た。まるで以前自分がみどりを彼女をいじめる男子から守った時と逆のパターンのように感じていた。
「な、何よお・・・」
「その前にどうして藤木さんに不幸の手紙を出した人を突き止めようとしないんですか!?藤木さんをそうやって責めるだけで解決したとお思いですか!?」
「何ですって!!?」
 みぎわは逆上した。
「藤木さんの気持ちを考えてから物を言ってください!!藤木さん、行きましょう!」
 みどりはそう言って去った。
「何、あの子お!?生意気ねえ!!」
「ホント、どこの子かしら!?」
 みぎわと冬田も去った。

「みどりちゃん、さっきはありがとう。僕、君があんな言い返すから驚いたよ」
「いえ、私、藤木さんの味方でいると決意したんです。ですから藤木さんを守ろうと思ったんです」
「うん、ありがとう・・・」
 みどりは藤木を守る事こそが今の自分にしかできない事かつ使命だと思っていた。藤木はみどりは以前よりも遥かに成長しているような感じがした。これも堀のお陰なのかなと思った。藤木とみどりは帰り道が分かれる時が来た。
「それでは、さようなら」
「うん、じゃあね・・・」
 藤木とみどりは別れた。

 藤木は家へ帰ると、堀の家へ電話をした。
「堀さん」
『あ、藤木君』
「みどりちゃん、見つかったよ。さくらの家に行っていたんだ・・・」
『そうだったの・・・、私は吉川さんの家に行った後、家に帰ったわ。藤木君、見つけてくれてありがとう』
「う、うん・・・」
『そうだ、明日スケートしたら私の家に招待してあげるね!お昼ごはんご馳走するわ!』
「いいのかい!?」
『うん、藤木君の事もっと知りたいし。それじゃあ、また会おうね』
「うん、さようなら」
 藤木は電話を切った。

 笹山は藤木が一人の女子と共にいた所を見た後、家に帰っていた。そして、そのショックで泣いていた。笹山は机の引き出しから藤木から貰ったケーキの形の消しゴム、藤木と共に遊園地へ行った記念に買ったストラップを取り出した。それらをゴミ箱へ捨てた。さらに遊園地で父親に撮ってもらった藤木とのツーショットの写真を取り出し、破り捨てた。
(藤木君のバカ・・・!!)
 笹山はもう藤木とは終わりだと感じていた。 
 

 
後書き
次回:「昼食」
 藤木はスケート場で堀と滑る約束をし、スケート場で練習を続ける。そして和島の凄さを見せつけられながらも堀やその場にたまたま現れた片山の言葉で立ち直った藤木は堀から昼食の招待を受けて彼女の家へ向かう・・・。

 一度消えた恋が蘇る時、物語は始まる・・・!! 
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