ガルパン主人公に転生したけど、もう限界な件
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原作主人公に転生しました。だげど、もう無理です
俺は転生した。いや、何いってんの?と思うかも知れないけど事実である。俺は正真正銘に本当のことを言っている。前世の俺はミリタリー好きな以外は至って平凡なサラリーマンだ。学歴だって威張るほど優秀でもない。偏差値が下から数えたら見つかりやすい大学を一浪してぎりぎり卒業というレベル。何とか内定をもらって就職した企業だって就活でもしなければ世間に知られる事もない中小企業だ。企業の成績だって平凡であり、上司の自分に対する評価だってイマイチである。そんな自分がガルパン世界に転生してしまったのだ。
もしこれでただのモブにでも転生したら俺だったら原作主人公達の戦車道を見るんだって嬉しく思っただろう。ただ、俺の転生した人物が物語では重要な人物であったなら話は変わってくる。俺を転生させた変な爺さんは俺を原作主人公である西住みほに転生させたのだ。俺はこの事実を知った時は転生した事をひどく後悔した。だって俺に西住みほになる事なんてできない。だって俺は何処にでもいる平凡な男だ。そして西住みほのような奇抜なアイディアを実行する力もない。ならばどうすか?俺は転生した時に特典は貰わなかった。「転生した時に三つの特典を使わせてくれ」とお願いしたからだ。それが幸か不幸か分からないが、俺が西住みほに転生した時に特典の三つのうちの一つを願った。
「西住みほのあらゆる可能性と経験を自分に継承させろ」
だった。俺には西住みほのように自分で奇抜なアイディアを考える力も戦車道のような才能がない事は理解している。ならば西住みほのあらゆる可能性と経験を継承して戦車道のアドバンテージを作ろうとしたのだ。西住みほの経験と可能性を継承した時に俺は西住みほがどれだけの戦車道の化け物なのかを理解させられた。戦車道が学校行事に取り入れている学校は基本的に学園艦の気質によって戦術も思想が決まられている。実際にドイツ式の黒森峰は、戦術的に西住流とマッチしているため西住流の影響力があり、聖グローリアーナはイギリス、サンダースはアメリカ、アンツィオはイタリア、プラウダはロシアのように、あらゆる学園艦の学校はあらゆる国の気質を受け継いだ学校であるため、戦車道における戦術もその国の気質を多く受け継いでいることが多い。
もし、西住まほが先ほどあげた学校で隊長をやっても黒森峰以外だと機能しない事がある。実際に西住まほの戦術は西住流の一糸乱れぬ陣形から繰り出される圧倒的火力によるものだ。もし、他の学校で実行に移そうにも戦車による違いで実行に移しても受け入れられない可能性があり、たとえ実行に移しても重戦車があるプラウダならまだしも中戦車以下の編成が目立つ他の学園では難しいからだ。その点を考えると西住みほのあらゆる可能性と経験を継承した俺は、西住みほがどれだけ凄い事を思い知らされた事を簡単に説明する。それは、あらゆる戦術を取り入れて相手に合わせて最適解の戦術を直ぐに実行する事だ。
実際にこれを言う事は簡単で当たり前だろうと思うかも知れないが、実際に実行するのは難しいのだ。あらゆるスポーツにも言える事だが、人は自分に合った型を作る事から始まる。それが自分に合ってるにしろ合ってないにしろ、型を作り、ようやくスタートラインに立つことだ。だが、この型というのがやっかいであり一度自分の型を作ると人は修正する事が難しい。戦車道に対しても同じであり、いきなりこの戦術が有効だから実行しよう言っても「自分達の学校に合わない戦術だ」ではなく「練習した事もない戦術をやっても失敗するだけだと」思う事が過半数を占めるため、こんな戦術は嫌だではなく、練習した事がない動きは失敗するからやらないという事が大きい。だけど、西住みほは違った。
平凡な自分には理解できないが、西住みほは周りがどんなに他の学園で正反対な戦術を提案しても納得させるだけの力があった。初めは難色を示しても周りの人間は徐々に西住みほの戦術を受け入れて実行に移した。そして黒森峰以外の学校では大洗女子学園のように戦車道全国高校生大会において優勝もしており、プロリーグに進んだ時間軸においてもその奇抜な発想と周りを納得させるだけの影響力があり、常に好成績をたたき出していた。この可能性と経験を継承した俺は、これで自分はこの世界の原作を崩さないと思わなかった。その逆で、自分がどれだけ平凡な人間なんだと分からされた気分しかなかった。西住みほと俺では見ている世界が違い過ぎると実感したからだ。それは当然だ。西住みほはあらゆる平行世界において戦車道において常に頂点に立つ成績を残している。中には優勝は二の次で戦車道の講師としての世界もあったが、それでも優秀な人材を育て上げていた。
どんなにあがいても西住みほになれないと諦めた俺は、西住みほという人形を演じる事で周りを誤魔化した。原作のように引っ込み思案だと周りから何かしらされると恐れた俺は常に笑顔でいる事で自分の内面を隠した。あらゆる時間軸の西住みほの戦術を模倣してそれを実行に移した俺は戦車道において好成績をたたき出した。まわりは流石は西住流だ。流石は西住まほの妹だと褒めるが違う。俺はただ最適な方法を知っているから、それを実行に移しているだけなんだ。それでも実行に移して常に失敗したらどうしようと、常にビクビクしている。俺が失敗したら西住みほの名に傷がつくんじゃないかと俺は常に戦車道をやる事に対して恐怖していた。
だけど、それを知らない皆は……。
「流石は西住流の次女だ」
違う
「長女に続き次女も優秀ですな」
違う違う
「これで西住流も安泰ですな」
違う違う違う
「私はみほの姉である事が誇らしいよ」
違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う!!!!!!!!!!!!!。
俺は西住みほじゃないんだ!!俺は、俺は○○○○なんだ!
このように周りの自分に対する場違いな評価を否定したい気持ちは何回も思った。戦車道の試合が終わるたびに俺はトイレに駆け込み何回も吐いた。今日も勝てたと……だけど、もう限界だ。俺は西住みほを演じる事に限界を感じた。これ以上西住みほを演じたら、もう自分が自分でいられないと感じた。もういつ精神が崩壊しても可笑しくないと感じた俺は黒森峰で高校生一年で戦車道全国高校生大会において俺は西住みほは……。
死ぬことを選んだ。
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