世界をめぐる、銀白の翼
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第七章 C.D.の計略
闇夜の影
これまでの、仮面ライダーアギトは―――――――
オーヴァーロード「闇の力」を父という、オルタという少年にも見える青年が津上たちの前に姿を現した。
オーヴァーロード一派が人類を危険因子と見なして生態系から排除しようとしたのはもはや以前のこと。
今、神の力を持つオーヴァーロードはその行く末を見届けるため、静観に入っている。
人類は、果たして異なる力、姿を持つものを共存ができるのだろうか。
そこで、一粒の種を蒔いてみた。
それがこの青年・オルタである。
完全な人間ではない。多少なりとも、父の力を持つ。
かといってアギトでもない。アギトの力は「光の力」から派生したものだからだ。
彼は人の世を見て、学び、回ると言って、津上たちの前に現れ、そして旅立った。
つい二か月ほど前の話だ。
もし彼がこの世界で無事に暮らせるというのなら、この世界も捨てたものではないはず。
そんな、余興にも似た一種の試み。
果たして、彼はどうなったのか―――――――――――
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「氷川から指揮本部。対象の姿はいまだ発見できません」
『十分に警戒しなさい。敵の力は未知数よ』
アメリカ合衆国ミシガン州デトロイト
かつては自動車産業で栄えたが、廃業に次ぐ廃業で景気が悪化し、今ではアメリカ一治安の悪い街として不名誉なトップに立っている街だ。
その廃墟と貸した工場の乱立する地帯を、青い装甲に身を纏った男が、警戒を続けながら先に進む。
男の名は、氷川誠。
アメリカに短期研修に向かった上司・小沢澄子に呼び寄せられて、今ここにいる。
というよりも、G3ユニットチーム丸々来ているのだから、もはや呼び寄せられたというよりは引っ越した感じだ。
「でもなんでこんなところに未確認・・・アンノウンが?」
「まだアンノウンと決まったわけじゃないわ」
「しかし・・・・」
「ただ背中に羽根っぽいのがあった、動物っぽい姿をして、頭の上に光が表れて武器を出したりするだけよ」
「それもう完全にアンノウンじゃないっすか!?」
「あのねぇ、そういう先入観を持ってるとこの先苦労するわよ?」
G3トレーラーの中で、小沢と小室の二人が雑談を交わしながらも指示を飛ばす。
現在、トレーラー内には二人のみ。目の前の無数のモニターには、メインにG3-Xのものを、周囲にはG5ユニットの隊員たちの見たままの映像が映し出されていた。
そう、今外を索敵しているのは、G3-X一人だけではない。
G5スーツを着た隊員たちが、三人チーム、計四チームいる。G3-X一人をチームとするなら、全部で5チームか。
事の発端は、一週間前。
この街での治安の悪さが、変なベクトルに向いたことのある。
「殺人が起きてる?」
その話を聞いたとき、小沢は特別驚きもしなかった。
殺人、という内容にしてはあまりにドライな反応だが、この職業でその手の話に一々驚いていては、仕事にならない。
だが、おかしいのはその被害者のことだ。
「聞いてくれたまえ小沢君。死んでいるのはいずれもこの街のクソッ垂れ共だ」
「・・・・?犯罪者が死んでるんですか?結構じゃないですか」
ズバッと言い切る小沢。
警察官としてどうなのかと疑いたくなるが、合理的すぎる彼女らしい。
だが話し相手の初老の刑事は先を進める。
「まあな。この街のくそどもがいくら死のうと知らん。むしろ俺たちの仕事が楽になっていい」
「そーですか」
「だがな、問題はこいつらを殺しているのは誰なんだという話だ」
「・・・・おっしゃっている意味が」
「これを見ろ」
パサリと彼女の前に放られるファイル。
それを手にして眺めてみると、何とも言えない奇妙な感覚に襲われる。
というか、これはなんだ?
「あの、この麻薬グループ、壊滅してますよね?」
「ああ。ボスをはじめ幹部数人。生き残ったのはこいつら以上に価値のないゴロツキばっかだ」
「で、その下手人の組織とされたのが」
「対抗する麻薬グループだ。だがこいつもその二日後に」
「・・・・それで、さらにその次、その次と行くと・・・・一周?」
「わかったか?この殺しに、最後に勝つウィナーがいないんだよ」
「・・・ルーザーオンリー?」
「これが正義の味方気取りのイカレヤロウだったらまだ楽なんだがな。こんな証言しやがったヤロウがいてね」
そういって、次に出してきたのはボイスレコーダー。
手のにらから少し余る程度の小型のそれを置き、スイッチを入れる男性。
ザザッ、という音と共に、特有のくぐもった声が聞こえてくる。
『おい、テメェは何を見たんだよ。お前のボスは誰にやられた?あぁ!?』
『お、おぉれはぁ・・!!悪くねぇ!!悪い奴はァお頭だ・・・・やめて下せえよ旦那!!』
「・・・・あの、これ拷m」
「勘違いスンナ。こいつ、ヤクのやりすぎで頭イっちまってんだよ」
『でも俺は見たんだ!!』
「?」
『お頭の悲鳴の後、あいつが来たんだ!!牛の頭した、おっかねぇ奴がよ!!』
「・・・牛の頭?」
『あ、ありゃあ使いだ・・・・オレ達が悪い事ばっかしたから、裁きに来たんだ!!』
『おい、お前何言ってんだ?』
『だーめだ。完全にぶっ飛んじまってるぜ』
『じゃあお前、背中に羽根あって!!頭の上に輪っかがある奴を何だと思うんだよ!!』
『HAHAHAHA!!天使が殺すって?』
『そりゃ悪魔の仕事だろうよ』
『でもほんとなんだ・・・!!』
ブツッ
「君は確かジャパンでそんなやつらの相手をしていたらしいな」
「そう、ですが・・・・」
「殺された奴らは、どいつもこいつも圧倒的な力でぶちのめされて死んでいる。とても人間技とは思えん」
「・・・アンノウンの仕業だと?」
「おう、まさに未確認。だから調べてもらいたい。来てもらったのは、そのためだ」
「・・・・・わかりました」
「行き先が行き先だ。エスコート付けようか?」
「ご心配なく。われわれには日本最強の警察官がいますので」
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「ってことがあって」
「じゃあもう絶対アンノウンじゃないですか!!」
「・・・・・・・」
話を聞いて、犯人はアンノウン。
確かに、小沢もそう思った。
だが考えてみると何かがおかしい。
物凄い力で捻りつぶす?
確かに人間のパワーを超えた者かもしれないが、それしきの重機が持ち込めない現場ではない。
アンノウンの犯行は、どうあがいても人間にはできないもので行われる。
木の内部に埋め込まれる。
天井のあるビルの一階に、屋上ほどの高さからの落下死。
水の一切ない場所だというのに、肺いっぱいに水が溜まって溺死。
それこそが、アンノウン犯罪最大の特徴。
だというのに、この無造作な殺しは何だ?
なにかが引っかかる。
『C班、不審な影を発見!!』
「どこ!!」
『D-1地点を、東に逃走中!現在チームで追跡中!!』
「無茶をしないで!!氷川君が着くまで、あなたたちは前に出ないこと!!氷川君!!」
『向かっています!!』
疑問が残りながらも、入ってきた報告に即座に反応して指示を飛ばす小沢。
こうなれば、ぶっつけ本番だ。直接この目で、確かめるしかない。
『目標、廃棄された工場内に入っていきます』
「出ました。元ジャージル自動車会社所有の工場です。見取り図出します」
報告を聞き、となりの小室がデータを引っ張り出してメインモニターに映し出す。
G3トレーラーに、昔のような手狭さはない。デスクがスライドして退き、メインモニターが宙に映し出される。
その前に立つ小沢の目の前で、展開されていく工場内地図。三つの赤い点が、その敷地内に入っていく。
『入っていった影は、牛のようなシルエットをした頭部でした』
『証言と合致します。おそらく同個体かと』
「小沢さん」
「・・・・まだ待ちましょう。全班が到着するまで、C班はそこで見張ってなさい」
『C班了解』
敵は未知数。
もし相手が上位のアンノウンなら、G3-X抜きで戦うには余りにも戦力不足。
数をそろえねば・・・・・
『A班、謎の影を発見。先ほどの物とは別の物と思われます』
「!?」
と、そこに入ってくるA班からの報告。
まさか、二体目!?
『どうしますか、主任!!』
「・・・・・ッ」
アンノウンが二体?
確かに考えてはいたが、確率は低かった。
よりにもよって、こんな時にそれを引いてしまうだなんて・・・・
『こちらA班。二体目を追跡します』
『こちらC班。こちらの目標が動きました』
「方向は!?」
『北西方向に・・・・!!』
「まずい、このままじゃ」
ズズン・・・・・!!!!
「!?」
「わっ、な、なにごとだ!?」
『C班の目標が、突如走り出しました!!壁を破壊して、なおも北西方向に進行!!』
「A班!!その場から離れなさい!!」
『A班了解。即時撤退する!!』
一体目の目標が走り出した方向。
それは二体目の目標の方向であり、一切の脇目も振らずにその方向へと向かっていた。
もしも二体が同じ目的で動いていて、一斉にこちらに牙を剥いたら勝ち目は薄い。
少なくとも、全員無事では済まなくなる!!
『僕が行きます』
「氷川君!!?あなた一人じゃ無理よ。下がりなさい!!」
『行きます!!』
「あっ、こら!!」
ぶちっ、と斬られてしまう通信。
だが情報は残そうとしているのか、モニターはまだ生きている。
「・・・頼んだわよ・・・・!!」
ぎゅうっ、と手を握ってモニターを睨む小沢。
果たして、その先の光景には何が・・・・・
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「はぁ、はぁ・・・・・」
G3-Xが、二体の合流地点に到着する。
すでに二体は出会っているはずだ。だが、どうにも中の空気が張りつめている。
一触即発。
まさしくそれを漂わせたかのような
「―――――!――――――!!」
「何がいけないの?」
「日本語?」
『氷川君、もっと近づけない?もう一方の声が聞こえないわ』
「いえ・・・そもそももう一方は人間の言葉ではなく・・・アンノウンの言葉ですね」
「―――・・・・――――――ッ!」
「でも、悪い人だよ?」
「しかしヒトだ。それを殺めるとは、神にもそむくのだぞ!!」
「背いたのはあの人間だ。お前・・・・」
「―――――!?」
「五月蠅いぞ」
ドンッッ!!
空気が弾かれたかのような、そんな振動音。
身体にそれを感じたG3-Xが次に見たのは、ウシ型のアンノウンと謎の戦士が闘っている姿だった。
(あのアンノウン、途中までは奴らの言語で話していた・・・・)
ということは、その相手をしているあの戦士もアンノウンに連なるものか?
しかし、怒っていたのは牛のほうだ。それも、あの戦士はどうやら人を殺したらしい。
「ヌゥゥぁああああああ!!」
「ぐえっ!?」
ウシの男の、後ろ回し蹴りが戦士の腹に炸裂。
身体をくの字にして、かつて自動車を作り続けていた機械の一つに突っ込んでそれをがらくたからスクラップに変えてしまった。
「さ、さすがにパワー、すごいね・・・・」
「神のもとに帰るのだ!!」
「・・・父は知らないんだ・・・この世界がどれだけどうしようもないかってことが!!」
「・・・・あなたは毒されてしまったのだ!この世界の闇に!!」
「ならば僕を毒したそれを、消し去らないといけないじゃないか!!」
ダォッ!!
「ヌっ!?」
「たかだか父の小間使いのくせに・・・・」
「うぉっ!!」
「五月蠅いんだよ!!」
跳ね上がるように飛び起きた戦士が、ウシの男の片足を掴んで、持ち上げる。
そのまま思い切り地面に叩き付けられ、そのまま放られて落ちる。
予想外の反撃に体勢を崩すも、即座に取り出した杖の先端から、十字型のエネルギー紋を発してそれを戦士へと受け手飛ばしていった。
「我が手で沈むがよい!!」
「だから・・・五月蠅いって!!」
紋章、爆発。
だがしかし、戦士はその爆風の一瞬前に飛び出し、利用して加速。
ウシの男―――バッファローロードの腹部に、一瞬輝きを放った拳をめり込ませて、殴り飛ばす。
哀れ、バッファローロードは殴り飛ばされ多挙句に頭上に光の輪を羽化して断末魔と共に爆散。
その後に杖ががらんと音を立てて落ちるも、それもすぐに砕けて消えた。
「はは・・・僕を倒したければ、エルでも出せばいいのに・・・・」
そういって、手のひらを眺める戦士。
戦士の姿は暗がりでよく見えない。
だが、G3-Xに取り付けられたカメラには映っていた。
放った拳からの一瞬の光。それによって映し出された、戦士の姿が
「これは・・・アギト?」
「でも、色が違いますよね?」
その姿は、変身した津上、即ちアギトに酷似していた。
だが、その体色が違う。
仮面ライダーアギトグランドフォームは、黒を下地に金の装甲を纏った戦士だ。
だが、この戦士はそのカラーリングが逆になっている。
何とも不気味な色をしたライダーである。
そのライダーはというと、工場内から歩いて出ていきその先に止まっていた彼の物であろうバイクに向かった。
それを見て、氷川は思わず飛び出していた。
「待て!!」
銃口を向ける。
あのアンノウンの言葉が真実なら、こいつは殺人犯人だ。
その疑うべき理由がある以上、警察官としてこの場から彼を去らせるわけにはいかない。
「一緒に来てもらうぞ」
「・・・・氷川さん」
「え」
こちらに振り返る戦士。
その戦士の口から漏れたのは、氷川の名前。
何故だ?
この戦士は、なぜ氷川のことを知っている?
G3-Xの姿を見て、その名前が出てくるのは一般市民ではありえない。
銃を握る力が強くなる。
対して、戦士は体までこちらに向けてゆっくりと歩を進める。
止まれと叫ぶ氷川だが、それを無視して、戦士はまるで微笑むかのようなゆったりさで話しかけた。
「ボクは、悪いんですか?」
「・・・なに?」
「悪というのもを見てきました。いろんなところで見てきました。だって、たくさんいるんだもの」
「なにを・・・・」
「ボクは悪になれていますか?この世界は真実だ。真実が生き残る。悪人の割合が多い、この世界が真実なんですか?」
「それは」
「違うっていうんなら、否定して見せてください」
「な!?まさか君は」
「ボクはオルタ。善か悪か。世界は一体、どっちが正しい姿なの?」
「ッッ゛!?」
トントンと軽く足踏みして、一気に走り出す戦士・・・仮面ライダーオルタ。
その仮面に、かつて挨拶に来た青年の面影はなかった。
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Alternative―オルタナティヴ―
・代案
・二者択一
それはアギトに代わるものなのか。
人間と代わるものなのか。
善か悪かの二者択一。
その名づけの真意とは裏腹に、青年は暴走を始める。
仮面ライダーアギト
~right and wrong~
後書き
夏休みっていいね。
こうしてまた更新できる。
「闇の力」が「オルタ」と名付けたのには「共存か拒絶か」という二者択一の意味を含まれています。
だけどそれはどっちかな、というよりも「共存してくれるだろうな」という、人類に対する希望的な思いからのものです。
アメリカにしたのは何となく。
レンガ造りの廃工場で、G3-Xとオルタの戦いが展開!!
仮面ライダーって、なんとなくアメリカ映えするんですよね・・・・
スピリッツで一号がニューヨークの街を疾走してましたけど、マジあれかっこよすぎでしょ
ではこの辺で
氷川
「次回。戦いの後」
ではまた次回
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