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真田十勇士

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巻ノ百十八 方広寺の裏その七

「そして豊臣家の江戸屋敷をもうけてな」
「そこに入ってもらって」
「静かにしてもらえばな」
 それでというのだ。
「よい、ではな」
「何とかですな」
「切支丹のことを収めてな」
「それでじゃ」
「さらにですな」
「そこまで話を進めていこうぞ」
「わかり申した」
 正純は崇伝と共に家康に応えた、そしてだった。
 早速片桐と大蔵局を迎えた、正純と崇伝は手筈通り片桐と会った。そうしてそのうえで話をするのだった。
 二人は駿府城のある部屋の中でだ、片桐に真剣な顔で話した。
「方広寺のことをです」
「お話して頂けますかな」 
 片桐に膝を詰める様にして近付き話をするのだった。
「鐘のことを」
「宜しいでしょうか」
「はい、それですが」
 片桐は二人に応え鐘のことをすぐに話した、するとだ。
 二人はすぐにだ、こう片桐に述べた。
「わかり申した」
「そうしたことでありましたか」
「では大御所様にお伝えします」
「このことはご安心下さい」
「そうですか、決してです」
 片桐は必死にだ、二人に話していった。
「我等は決してその様な考えはないので」
「大御所様も我等のお話を聞かれれば収められます」
「いや、我等の早とちりでした」
「このことは申し訳ありませぬ」
「わざわざお呼びして申し訳ありませぬ」
「いえ、わかって頂いたなら何よりです」
 二人が穏やかな感じになったのを見てだ、片桐もほっとした顔になってそのうえで応えた。
「それがしにしても」
「ではこのことはです」
「これで終わりということで」
「それでは」
「それでなのですが」
 崇伝がだ、ここで顔を戻して片桐に言ってきた。
「切支丹のことですが」
「片桐殿、あれはなりませぬぞ」
 正純も言ってきた、見れば二人共前よりも顔が厳しい。
「断じてです」
「幕府としては許せませぬぞ」
「茶々様のお許しの件はです」
「絶対に取り消して下され」
「さもなければです」
「幕府も放っておけませぬぞ」
「そのことですか」
 片桐は自分の危惧が当たったと感じ蒼白となって二人に応えた。方広寺のこと以上にまずいと思っていた。
「それは」
「弁明はいりませぬ」
「それは不要です」
「何とかです」
「取り消して頂きたい」
「宜しいですな」
「絶対にですぞ」
 二人で片桐に詰め寄る様にして言うのだった。
「このことはです」
「何としても」
「はい、承知しております」
 片桐にしてもとだ、彼は強張った顔で答えた。
「それがしも」
「ではです」
「この件頼みますぞ」
「そしてです」
「やがてはです」
 二人は片桐にさらに言った。
「豊臣家にはです」
「大坂以外の何処かを用意しております」
「そして茶々様もです」
「江戸にお屋敷を用意しますので」
 それでというのだ。
「このこともです」
「お考えになって下されますか」
「はい」
 この二つのことにもだ、片桐は答えた。 
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