大阪の一反木綿
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第五章
「博多からそうしたばい」
「博多、九州ですね」
「そうばい、この街がいい街と聞いてばい」
「移住してきてですか」
「ずっとここに住んでいるばい」
ナターシャの前をひらひらと浮かびながら話した。
「そうしているばい」
「そうなのですね」
「それでおいは焼酎が好きでばい」
「私に味を聞いたのですね」
「その通りばい。外国の人からみて焼酎の味はどうばい」
「飲みやすいです」
これがナターシャの返答だった。
「とてもです」
「美味しいばい」
「はい、ごくごくと飲めます」
「ほう、ごくごくとばい」
「アルコール度が適度で飲みやすいです」
「焼酎は強い酒ばいが」
一反木綿はこう言ってナターシャの今の言葉に驚きを見せた。
「それをばい」
「強いですか?」
「この娘ロシア人なんて」
裕介がここで一反木綿に事情を話した。
「それでお酒強いんです」
「ああ、露西亜ばい」
一反木綿は昔の言葉を出して頷いた。
「それならわかるばい」
「あの国から来てまして」
「あそこは酒の国ばい」
一旦木綿もこう言った。
「それでばいな」
「この娘もお酒に強いです」
「わかったばい」
「そういうことで、ただ」
「何ばい?」
「またどうしていきなり出て来たんですか」
裕介から聞いた、どうして一反木綿が出て来たのかということを。
「僕達の前に」
「いや、さっきまで妖怪の新年会に出ていたばい」
「そうだったんですか」
「妖怪にも新年会があってばい」
自分からこのことを話したのだった。
「それで大阪の妖怪達が集まって大阪城の天守閣でばい」
「宴会していたんですか」
「今年は焼肉だったばい」
一旦木綿は目をにこりとさせて話した。
「牛肉はやっぱりいいばい」
「何か人間みたいですね」
焼肉で新年会をしたと聞いてだ、ナターシャはこう思った。
「日本の妖怪は」
「まあ人間臭いのは確かだね」
裕介もそのナターシャに話した。
「日本の妖怪は」
「やっぱりそうなのです」
「うん、それでね」
「焼肉で新年会もするのです」
「そうみたいだね」
「皆で飲んで食べて天守閣から絶景を楽しんでばい」
そうしてとだ、一反木綿は上機嫌のまま話した。
「今阿倍野の家に帰るところだったばい」
「そこで僕達の話をですか」
「たまたま聞いてばい」
「それで、ですか」
「そこのお嬢ちゃんに聞いたばい」
ナターシャにというのだ。
「そうしたばい」
「成程、そうだったんですね」
「そういうことばい、それで焼酎が美味かったと言われてばい」
それでというのだ。
「よかったばい」
「実際に美味しかったです」
ナターシャは焼酎の味についてまた話した。
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