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DQ8 呪われし姫君と違う意味で呪われし者達(リュカ伝その3.8おぷしょんバージョン)

作者:あちゃ
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第十話:タイミングを見誤るな。怒られるゾ!

 
前書き
リュリュちゃんが怒られます 

 
(リーザス村・アルバート家邸)
ヤンガスSIDE

家主が口論を止めたのを見計らって、ウルフの旦那も貴族の若造を苛める事を止めたでがす。
そのタイミングで兄貴がウルフの旦那に目で合図を送ると、共に家主の側へと近付いていくでげす。
あ……兄貴のネズミが勝手に何処かへ行ってしまったでがす……良いんでがすかね?

「どうも……我々は旅の者なんですが、この度はご愁傷様です」
「ご丁寧にありがとうございます……」
気の強い女性が苦手と言っていたでがすが、腰が引けた状態で話しかける兄貴。

「まだ犯人は捕らえられて無いと聞きましたが、我々にお手伝いできることはありますか?」
「……申し出は有難いのですが、犯人を捕らえる為にはリーザスの塔へ出入りして貰う事になると思います。ですが、あの塔は我が村の者だけが出入りを許されております故、今回は申し出をお断りさせて戴きます。出入り方法を知ってるのも村の者だけですから。ですが本当にお心遣いに感謝致します」

「そうですか……残念ではありますが、そう言う理由でしたら致し方有りませんね。ところでドルマゲスと言う名に聞き覚えはありますでしょうか? 我々はドルマゲスを探して旅をしてるのですが……」
「これも申し訳ありませんが、聞いた事はありません」

トロデのオッサンに対してとは打って変わって低姿勢に会話を進める兄貴。
そんなタイミングで兄貴のネズミが帰ってきたでがす。
ですが兄貴のポーチに戻る事なく、リュリュ姐さんの肩へと昇るネズ公。

「ちゅーちゅちゅう!」
「え……それはマジですか?」
リュリュ姐さんは動物の言葉が解るらしいのでがすが、何かを話しかけられて驚いてるでげす。

「ねぇ大変だよ……あの娘「ちゅー! ちゅちゅちゅうー!(怒)」
何かを話そうとしたリュリュ姐さんの耳元で怒鳴るネズ公。
「うわぁ、ごめんなさい! あ、あの……ちょっとあっちでお話しがあるんですけど!」
如何やら家主に聞かれたくない話しがあるらしく、兄貴とウルフの旦那にこの場から離れる事を希望するリュリュ姐さん。

「……それではアローザ様……我々はこの辺で失礼致します」
兄貴はウルフの旦那と目を合わせ、軽く頷くと家主との会話を切り上げて、廊下へと移動するでげす。勿論あっし等も付いて行くでげすよ。



「リュリュさん……もしかしてネズミに怒られてた?(笑)」
「そうなんですよぉ……ものっそい怖いのぉ!」
ウルフの旦那に笑われながらも、苦笑いでネズ公が怖い事を伝えるリュリュ姐さん。

「ちゅー!!(怒)」
「うわぁ、ごめんなさいです! 今すぐ伝えるであります!」
折角あの場から離れてきたのに、用件を伝えないリュリュ姐さんに耳元で怒鳴る(多分)ネズ公……本当に怖そうでがす。

「あ、あの……先刻(さっき)の娘さんが、部屋から抜け出しちゃったらしいであります……多分リーザスの塔へ犯人を捕まえに行ったんだと思うであります!」
「それは本当ですかリュリュさん?」

「トーポ殿が自身の目で見てきた事であります! 如何やら死を覚悟してるらしく、置き手紙も部屋の中に存在するそうであります!」
相当怖かったのか、リュリュ姐さんはネズ公に敬語を使っているでげす。

「ウルフさん……助けた方が良くないですか?」
「それは流石に俺も思うけど……」
リーザスの塔には村人しか入る方法を知らないと、先刻(さっき)女家主が言ってたでげす。如何するんでがすかね?

「……これから俺は幼気(いたいけ)な少年に嘘を吐くから、皆は黙っていてくれるかい?」
「先程の虐め劇も黙って見てましたよ、我々は。今更なんですか?」
ウルフの旦那の突然の発言に、ラングストンの旦那が冷ややかに反論するでげす。

「じゃぁ同じスタンスでいてくれ」
ウルフの旦那はラングストンの旦那の言葉にニヤリと笑うと、クルリと踵を返してお嬢ちゃんの部屋の前で門番をしてる二人の少年に近付いて行く。

「おいポルク……お前等、姉ちゃんに騙され利用されてるぞ」
「はぁ? 何言ってるんだよウルフさん……ゼシカ姉ちゃんが何で俺等を騙すんだよ?」
凄ぇでげす……あんなに虐められてたのに、ウルフの旦那を『さん』付けで呼んでるでがす。

「俺等は冒険者だから、生き物の気配を常に感じ取ってないと危険なんだよ。だがら分かるんだが、お前等が守ってる部屋の中には人の気配がしない。先刻(さっき)誰かが窓から出て行く気配がしたんだ……間違いなくゼシカ姉ちゃんだぞ」

「いくらウルフさんでも、見てもいない部屋の中までは分かる訳ないよ。そうやって俺をまた虐めようとしてるんだろ?」
「疑うのなら、お前が自分の目で部屋の中を確認して来いよ。それでゼシカさんが中に居たら、俺はお前にもゼシカさんにも土下座で謝罪するからさ」

「ほ、本当だな? 本当に土下座するんだな?」
「ああ土下座する。何だったら村の真ん中で大声で謝りながら土下座してやる。だから今すぐに部屋の中を確認しろ」
ネズ公の言う事(しかもリュリュ姐さんの通訳後)をここまで信じれるって凄いでがすな。

「じゃ、じゃぁちょっと待ってて……」
自信満々なウルフの旦那の態度に、半信半疑になりながらも大勢の前での土下座という内容に魅力を感じた少年は、恐る恐る嬢ちゃんの部屋をノックして、扉を開けて入室するでがす。

そして数十秒後……
(バン!)「ほ、本当だ!!! ゼ、ゼシカねぇ(ガバッ!)もがぐがが………」
「大声で騒ぐな。周りの人間にバレるだろ……」

勢いよく部屋から出てきた少年は、大きな声で事態を知らしめようとしたでげすが、それをされては内密に話しかけた意味が無くなるので、ウルフの旦那が彼の口を手で覆って黙らせるでがす。なお、もう一人の少年は状況が解って居らず、ボーッとアッシ等を見上げてるだけでがす。

「ど、ど、ど、どうしようウルフさん……ゼシカ姉ちゃん、一人で盗賊を倒しに行っちゃったよ。サーベルト兄ちゃんでも勝てなかった相手なんだぜ! ゼシカ姉ちゃん一人じゃムリだよぉ」
ほほぅ……亡くなられた青年は、この村では一目を置かれる強者だったでがすな。

「解ってる……だから俺達が助けに行く」
「ほ、本当に!? ゼシカ姉ちゃんを助けてくれるの!?」
かなり慕われてるんでがすな……少年は涙目でウルフの旦那を見上げてるでげす。

「だが……俺等はリーザスの塔への入り方を知らない。それをお前に教えてもらいたいのだが……まだ俺等が盗賊だと疑うかい?」
「……ううん、信用するよ。だからお願いだよ、ゼシカ姉ちゃんを助けてくれよ!」

「よし、決まりだ。……って事で、口で説明されるよりも、直接見せて貰った方が解りやすいから、お前もリーザスの塔まで来いよ」
「うん。じゃぁ急ごう!」

「待て……屋敷の中で慌てた様子を見せれば、周囲の人々に感付かれる。ここは落ち着いて屋敷を出るぞ……」
「は、はい」
数時間前までは虐められてたのに、何時の間にか素直に従う良い子になったでげす。ウルフの旦那の話術の所為でがすかね?

「おいマルク……お前はゼシカ姉ちゃんの言い付けを守って、ここで門番してろ。ラング……お前は屋敷を出たらポルクを肩車しろ。皆……ラングがポルクを担いだら、全速力で塔までダッシュだ!」
淡々とアッシ等に指示を出すウルフの旦那……仕切り慣れてる感じがするでがす。

でも塔までダッシュでがすかぁ……
アッシは足が遅いから、あまり走るのが得意ではないでげすよねぇ……
でも手遅れにするわけにはいかないでがすからね!
ここは一丁、腹を括って……



(リーザスの塔)

と思ったのは良いでがすが……
早すぎるでげすよ!
何なんでがすが、ウルフの旦那等の足の速さは!?

内容を伝えられなかった為、トロデのオッサンと馬姫が一緒に付いてきてしまったでがすが、ウルフの旦那に併せて走った馬姫様ですら息切れを起こしてるでげす。
しかも途中で、ウルフの旦那はアッシ等にスピードを合わせてくれてたでげすよ……

兄貴も足には自信がありそうでがしたが、それでも塔に付いた時には肩で息をしていたでがす。
ウルフの旦那の早さに息切れせずに付いて行けたのはラングストンの旦那だけ……
彼は子供を担いでる状況だったのに、涼しい顔でウルフの旦那と併走してたでげす!

リュリュ姐さんですら、多少の息切れをしてるでげすよ……まぁ姐さんに関しては、胸が大きすぎて大変なのかもしれないでがすがね。
アッシは兄貴と同じで、大きい胸のご婦人にそれ程興味はないでげす。

「さて……リーザスの塔に付いたは良いが、何でトロデさんまで居んの?」
「馬鹿者! お前等が凄い勢いで村から出て行ったから、置いて行かれないようにと付いてきたのではないか!」
これまでの遣り取りから、置いて行かれる恐怖心が植え付けられてたでがすな。(笑)

「そっか……ゴメンね。ちょっと急ぎだったからさぁ……説明出来なかった」
そう言うと微塵も悪びれず、これまでの敬意をオッサンに説明するウルフの旦那。
勿論、簡潔に説明してるでがすが、その間に息を整えるアッシ等。

「なるほど……そういう事情があったのか。それなら致し方なかろう」
「なぁウルフさん……何で魔物と仲良く話してんだ!?」
ラングストンの旦那の強烈なスピードに放心状態だった少年が、オッサンと会話してるウルフの旦那を見て我に返り、当然の質問をしてきたでげす。

「おいおい、また見た目重視問題再発か? ちょっと見てれば分かると思うが、見た目と裏腹に悪い奴じゃないんだぞ、この化け物オッサンは」
「ば、化け物オッサンとは何じゃ!!」
そのままでげす。

「うっ……ま、まぁウルフさんが大丈夫って言うのなら、俺は信用するけど……」
まだラングストンの旦那に肩車されてる少年は、オッサンの怒り顔に怯みきって身を縮めてるでがすが、何時の間にか大いなる信頼関係を構築したウルフの旦那が平常心で居る為、それにあやかって大丈夫なフリを続けてるでげす。

「さて……時間を無駄に出来ないし、塔への入り方を教えてくれ」
「あ……う、うん」
ラングストンの旦那から降ろされた少年は、オッサンを警戒しながらも塔の入り口に近付いて扉に手を掛ける……そして、

「絶対に誰にも言わないでくれよ」
と念を押して、
「よっ!」(がらがらがら)
と掛け声と共に塔入り口の扉を上へと引き上げた!

「うわぁ……誰が作ったの、この塔? 性格の悪さが滲み出てんじゃん! 普通の扉の様に見せておいて、実はシャッターの様に上へ引き開けるなんて……何処ぞの国の金庫室みたいな作りじゃん(笑) あ~性格悪!」
ウルフ殿は知ってる国の金庫室を引き合いに出し、性格の悪さを強調するでがす。

「何処の国か大体想像付きますが、性格の悪さでしたらウルフ閣下も負けておりませんよ。自信持ってください」
何処の国の事なのか分かるラングストンの旦那は、励ますかの様にウルフの旦那の性格を批難する……アンタも同類でがすよ。

「さぁそんな事よりも、ゼシカちゃんを助けに行きましょうよ」
放っておくと嫌味の応酬合戦になりそうな二人を見て、リュリュ姐さんが塔へ急ぐ様に仕向ける。良いタイミングだと思うでげす。

「リュリュさんってさぁ……本当に自分の事しか考えてないよね」
だがウルフの旦那からは何故か姐さん批判の言葉が……
何事でがすかね?

「如何いう意味よ!?」
「あのね……この場にはお子様も居る訳ですよ。そのお子様を放置して塔の中に行く訳にいかないし、危険な状況になりかねない場所に連れて行く訳にもいかないじゃん。解る?」

「ウ、ウルポンが連れてきたんじゃないですかぁ!」
「それはさぁ……急いでたから、塔への入り方を実地でレクチャーして貰う為じゃん。面白半分でお子様を連れてきた訳とは違うんだよ。解ってる?」
何故に一々腹の立つ言い方をするでがすかね?

「じゃぁ如何するのよ!?」
「う~ん……そうだな」
睨みで殺す勢いで問い返すリュリュ姐さん……ウルフの旦那は気にしてないでげす。

「よし、ラングとリュリュさんはポルクを連れて今すぐ村へ戻ってくれ。もしかしたら盗賊は村を襲う計画に変更したかもしれないから、万が一に備えて二人は村で待機な! 俺等は当初の計画通り、あの巨乳嬢ちゃんを救う為、これから塔へと突入する。トロデさんは如何する?」
各々に役目を振り当てると、付いてきてしまったオッサンに如何したいのか確認したでがす。

「ワ、ワシ等は……ここら辺でアハトが戻ってくるのを待ってようと思う」
「そうか……じゃぁ、盗賊が来ても見つからない所に隠れてろよ」
如何やらオッサンはリュリュ姐さん等を、まだ100%信用してない様で、兄貴から離れる事を嫌ってるでげす。

リュリュ姐さん等と一緒に村へ帰った方が安全だと思うでがすが……
まぁ本人の意思でがすから、危険が迫ってもアッシは関知しないでげすよ。

ヤンガスSIDE END



 
 

 
後書き
ネズミに怒られるリュリュが可愛いと思う。 
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