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レーヴァティン

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第二十九話 怪盗その七

「だからな」
「騙すことはしないんだ」
「ああ、絶対にな。お多対に信頼出来ないならな」
 その場合も考えてだ、久志は声の主にこうも言った。
「炎を消すぜ」
「鎧の周りの炎を」
「そうするぜ」
「つまりおいらがここでだね」
「鎧を盗むのならな」
 そのつもりならというのだ。
「まずいよな」
「炎を消すとね」
「あんたを遮るものがないからな」
「じゃあ姿を見せても何もしない約束に」
「あんたが姿を表したらな」
 その時はというのだ。
「消すぜ」
「炎を」
「そこまで言うならね、それにね」
「それに?」
「君の声と目には嘘を言っている気配がないね」
 このことも察しての言葉だ。
「それも全くね」
「じゃあいいな」
「うん、ただね」
「ただ?」
「そっちから先にしてくれるかな」
「用心でか」
「うん、そうしてくれるかな」
 こう久志に言うのだった。
「まずはね」
「それからか」
「おいらも姿を出すから」
「わかった」
 一言でだ、久志も答えた。
「それならな」
「そうしてからね」
「あんたも姿を出すか」
「それであんた達の前に出るから」
 こう約束するのだった、そしてその約束を受けてだ。
 久志は実際に鎧の周りの青い炎を消した、すると。
 約束には約束で応えてだ、軽装のズボンとシャツ、それに革の鎧を身に着けた小柄な男が出てきた。癖のある髪は茶色で童顔だ。
 その彼がだ、笑って名乗ってきた。
「小磯淳二っていうんだ」
「八条大学の学生だよな」
「うん、文学部民俗学科のね」
 そこのとだ、淳二は久志に笑って答えた。
「そこのね」
「そうか、やっぱりな」
「八条大学の学生さんだってだね」
「思ったさ」
「五人共そうなんだ」
「ああ、八条大学の学生だよ」
 その通りだとだ、久志は淳二に答えた。
「善因な」
「どうしてか皆八条大の学生さんだね」
「この辺り本当に何でだろうな」
 正も首を傾げさせることだった。
「何かあるのは間違いないけれどな」
「ああ、うちの学園自体色々話があるからな」
「怪談とかな」
「そのせいか?」
「何か夢にまで干渉する何かがあるのか」
「そうかもな」
 こう推察するのだった。
「それでだよ」
「俺達全員八条大学の学生か」
「そうかもな」
「その辺りも考えていくか」
「おいおいな」
「そうだね、じゃあさっきの話だけれど」
 淳二は自分から言ってきた。
「おいらもね」
「ああ、これからはな」
「俺達とだよな」
「一緒にね」
 笑顔での言葉だった。
「行こうね」
「ああ、あとな」
「あと?」
「盗みだけじゃないだろ」
 久志はその目を鋭くさせて淳二に問うた。 
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