| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

世界をめぐる、銀白の翼

作者:BTOKIJIN
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第六章 Perfect Breaker
  Attack/進撃



今までのあらすじ

ついに、セルトマンの目的である「王」の召喚が為された。
召喚されたのは、巨大生物。

破壊神、人類の敵、水爆大怪獣
怪獣王・ゴジラ。

放っておけばこの世界を破壊しかねない存在を相手に、「EARTH」は、どうすればいいのだろうか。



------------------------------------------------------------


「ゴジラ」
この単語を聞いて、詳しいことは知らずとも、その姿かたちを想像できないものはそうはいないだろう。

水爆実験の放射能によって、生き残りの恐竜が突然変異して誕生した怪物。
人類の、暴走した科学が生み出した業ともいえる。

人類は幾度となくこの怪獣王を相手に戦い、敗北してきた。
撃退したことはある。無力化したこともある。

だがそれは甚大なる屍の上に積まれた結果であり、ただ一度の事例を除いて、この生物の息の根を止めることに成功したことはない。

そういう意味で、セルトマンが人類を超えた存在として自らを証明するにはもってこいの対象だろう。
人類では決して勝てぬ敵を作り出し、しかしそれに勝てたのであれば人類超越の何よりの証拠なのだから。

ただし、その戦いの結果世界が破壊されてしまう危険がある。
なぜならば、ゴジラは作品の中において「世界を破壊する者」「世界を滅亡に追い込む者」と認知されているからだ。


この最大世界には、未だ「ゴジラの原典」は結合されていない。
つまりはフィクションの存在だ。

それを、この男は概念ですら実体化させるサーヴァントシステムを用いて、召喚という形で実体化させたのだ。


だが、だからこそ厄介である。
今のゴジラは「概念」によって守られているものが大きすぎるのだ。

先ず、通常兵器は効果が望めない。
噴火する火口に落としても、こいつはマグマの中をも悠々と泳ぐ。

低温、冷凍には弱いが、一時的に動きを止めるだけだ。
こいつは完全に消滅、つまりは殺さねばならない。消極的方法では話にならない。

そして例え爆破に成功したとしても、この生物は心臓一つになっても活動することが可能なのだ。


故に完全に殺害するためには、過去にこいつを葬った、その一つの方法しか残されていない。


しかし



(だが・・・それはフィクションだぞ――――!!)

無茶もいいところである。
架空のものを倒すために、架空のものを用意するのだから。

ゴジラを一度だけ滅殺し得た兵器は「オキシジェンデストロイヤー」という水中酸素破壊剤だ。
原子よりも酸素を細かくさせて破壊するこれは、結果としてミクロ化した酸素が他の物質の隙間に入り込んで分解して融解させる。

最終的にはこの兵器を用いた区画一帯の生物はドロドロに溶けて、骨すら残らず消滅する。


しかし、それは架空の人物によって作られた架空の存在だ。
おそらく、あの大怪獣はセルトマンが特別に組み込んだもので作られたもの、いわば特注品だ。

今はこの世に「存在しない」死者の召喚。
本来は「存在しない」が、もしかしたらあったかもしれないifの姿での召喚。
そして、原典には存在しないが、あったであろう者の召喚。

アーカイヴを基にしながら、段々と存在の希薄なものを召喚して行くことでそのデータを収集し、最終的には原典にないものを召喚するに至ったのだ。

仮に兵器の開発者を召喚するとして、そのデータもない「EARTH」にそれを行うことは不可能だった。


「く・・そ・・・・」

べったりと張り付く地面を引きはがすように、腕に力を込めて起き上がろうとする蒔風。
だが、溜まった血で手が滑り、再び胸が地面に落ちる。


「が・・・は」

セルトマンの大地咆哮のダメージは甚大だった。
そもそも、蒔風はライダーの増援があったとはいえ再戦してからのダメージが多い。

今この状況で立ち上がれれば御の字だ。
とてもゴジラに向かっていくだけの体力はない。



ぼやける視界にセルトマンが映り、端に移動していって視界からいなくなる。
おそらく、ゴジラと戦うために向かっているのだろう。

『巨大生物、出現地点から陸地を目指しています!』

『あわわ、巨大生物をゴジラと判別、呼称します・・・』

『ヤバい、上陸するよ!!「EARTH」まで一直線だ!』


「EARTH」から見える海というのは、海岸ではなくテトラポットがゴロゴロした堤防が境界線になっている。
それらのコンクリートの塊を踏み砕き、大地を陥没させながらゴジラはついに陸地へと立つ。


セルトマン襲撃から三日。もう数時間で四日目になるだろう。
そのおかげで、周辺地区の住民避難はすでに終わっている。

だが逆を言えば、この地区でとどめなければ一気に人が死ぬということに他ならない。




『目標の到達まで残り3分!!』

『ここを戦場にしようってのか・・・・』

通信や念話を通じて聞こえる仲間の声。どうやら皆がやられたわけではないらしい。
おそらく、「EARTH」(仮)に残った者や、大地咆哮の範囲外にいたメンバーも多かったはずだ。


『行くぜ行くぜ!!』

『デカいのにはびっくりしたけどな』

『デカい相手には、それなりの戦い方がある!!』


次々に飛び出していくメンバーたち。
だが蒔風にそれを止めるだけの手段はなく、ただぼそぼそと、唇から言葉が漏れていくだけ。


「やめろ・・・行くな・・・・」

ゆっくりと、ゆっくりと
つぶやく蒔風の意識は希薄になっていき、瞼は降りていく。

ただ言葉だけが漏れていき、段々と意味を失っていく。



「いって・・・くるね・・・・」

その蒔風の意識を、引き摺りあげる声がした。
蒔風の目の前に、なのはが立っていた。


「ま、て・・・・」

蒔風の言葉は届いたのか。
しかしそれを確かめることもできないうちに、なのはは飛び出していってしまった。

その後に続いて、またほかのメンバーも飛び出していく。
大地咆哮を食らったメンバーの中にも、まだ立ち上がれるやつがいたらしい。



「お・・れも―――行くぞ・・・・」

「待ちなさい!!」

必死になって立ち上がろうとする蒔風。
その体を引き上げ、しかし行かせはしないと肩に担ぐのはアリスだった。


自分も行くんだと暴れる蒔風。
だがそれはあくまでも彼の意識内での動きだ。

実際の蒔風の身体はというと、指先がぴくぴくして腕と足がぶらぶらしているだけでしかない。


「ハァ・・・ハァ・・・・わ、私だって無傷じゃないんですからね!そんな運んでもらえるだけありがたく思いなさいよッ、と!!」

担がれていく蒔風のほか、ショウや翼刀が大きなシートの上で仰向けに寝かされていた。
ドサッと半ば乱暴気味に蒔風の身体も下ろされ、その横にアリスがドッカリと腰を下ろした。


「お、れはいくぞ・・・あんな怪物・・・世界ごとくわないと・・・消せないだろっ・・・!!」

「動かないでください!!動かない、うご、動くなぁッッ!!」

「ぐええ」

身体が動かないと納得し、仕方ないと身体を休ませる蒔風に対し、隣ではショウは無理やり身体を動かそうとしてシャマルに縛られいていた。

それでも芋虫のように進もうとする(実際には進めていない)ショウに、ついにエルルゥの煎じ薬が投与された。
お椀の中の何かザラリというかドロリというか、そんな物質がショウの口から流し込まれていく。

すると、動かないはずだというのに四肢がピーン!と張ってからバタリと落ち、ショウは沈黙してしまった。


「なにあれ怖い・・・」

「翼刀も、下手に動こうとするなよー?」

「動けませんって。あれ見たら余計に」

多少休んだからか、彼女たちの治癒がさっそく効いているのか。
お互い口は動くらしく、段々と大きくなる振動音と地響きの中で言葉を交わす。



「オレ、あのシリーズよく見てないんですけど・・・ショウさんなら最終手段で世界ごと喰らって消せるんじゃ?」

「あのデカさからして、世界ごと切り取って食ったら大変なことになる。ゴジラだけを喰おうにも・・・」

「喰おうにも?」

「あいつ、一回ブラックホール砲叩き込まれても逃げ切って生存してんだよ。一回でもそういう実績がある以上、あれには効かない」

なんすかそれ・・・と蒔風の言葉に呆れる翼刀。
その隣で、比較的ダメージは少なかったのか座り込む唯子が聞いてくる。

「ゴジラに勝てる怪獣っていないんです?」

「・・・・いないことはない」

「じゃあ」

「でも殺したのはいない」

「うぐ・・・」


じゃあどうすればいいの、と唯子がうなだれる。
蒔風からすれば、あれが召喚された時点で詰みだ。

残る希望は、皮肉なことにこの状況を生み出したセルトマン。
彼がゴジラに勝ち、なおかつ世界が崩壊しないうちのダメージで済ましてくれればいいのだが。


「もっと教えてください、舜さん」

「・・・は?」

「ほかのみんなが戦ってるんすよ?こうするしかないとはいえ、俺はこのまま踏みつぶされるのを待っているのはごめんです」

「・・・・・・・」

「だったら、せめてどうするかを話し合いましょう」

「そ、そうですよ!もしかしたら初めて知る私たちなら、何か弱点に気付くかもしれないし!!」


「・・・・・なあ、みんなの回復までどれくらいかかる?」

「そろそろ観鈴さんが着くわ。そうすればスピードは速まるわね」

「じゃあ俺ら以外のメンバー優先で。翼人の回復には時間がかかるだろうし」

「わかったわ。伝えておく」

そうしてほかのメンバーのもとにシャマルがいくのを見て、蒔風が口を開いた。

「じゃあ・・・手始めに1954年の第一作の話から―――――」


------------------------------------------------------------


夜の闇は深い。
だが、その闇も街の光で薄まっていくのがここの空だ。

人類は「夜の闇」という未知の中に、様々な怪異を夢想してきた。
それを、自らの力で、科学で、乗り越えてきたのがこの光景だ。


住民はいないにもかかわらず、点灯される街の明かりは、頑なにその怪異を拒絶しているように見える。

そう
明かりとは、ただそれだけで恐怖を紛らわせる。


その町の上空を、様々なものが飛び交っていた。


巨大なものだとデンライナー、小さくとも飛行能力を有するメンバーたち。
無論、地上を駆ける者たちもいる。

だが彼らはある一線以上は前に出ない。
まるでここが防衛線だと言わんばかりに、そこに並んでその時を待つ。



暗き夜を、明るく照らす光。
結果、人類に夜の闇を恐れるようなことはなくなった。

そう、光とは人類の生み出した力だ。
火から始まり、現代まで発展し続けてきたそれらの光は、抽象的な話ではなく真実、あらゆるものを克服しようとする人類の英知のその最たるものだ。


だが、その巨体は

その巨大なる漆黒の巨躯は、その人類の|科学≪ちから≫を踏みつぶすかのような漆黒の巨躯は

まるで、人類のそれを憎悪し、否定し、破壊するような黒き巨体は

ただ一つ、その頭部にギラつく眼光は


「グルルルル・・・・・グゥォォォオオャァァァアアアォォオオオオオア!!」

ズン―――――ズン―――――ズン・・・・・・・・


咆哮とともに大地を踏みつけ、その体躯を回転させて攻撃を開始した。


「散れぇッッ!!」

振るわれる尻尾。
大地を削り、衝突するものを一切の慈悲もなく粉砕するその一撃を、「EARTH」メンバーが一斉に散って回避した。


「攻撃を開始する。全員、奴の頭部を狙え!!地上のものは足元を!!」

誰が出したかを確認する暇もなく、それに従い攻撃を開始する。


こいつはここで倒す。
生物である以上、倒せない道理はない。


大地咆哮を食らわず、この場に飛んでこれたクラウドはそう思っていた。

巨大生物とは、戦ったことがある。
こいつのサイズを比べると、はるかにミニサイズかもしれないが。


凄まじい勢いで、無数の砲撃や攻撃がゴジラへと放たれている。
だがそれは奴の表皮で爆発を起こすだけで、内部に震動が通るどころか、表面すら焼けていない。


「熱攻撃は無効か・・・?」

『データによると、あの生物は核爆弾の影響で異常進化したものだそうです』

「そうか」

ならば、炎が効かないのは納得がいった。
だが、元が爬虫類に近いというのならば。


「ブリザガ!!」

クラウドの大剣が冷気に染まり、飛翔。
砲撃の閃光や、周囲を飛び交うメンバーに気を取られるゴジラの背後から、首筋を狙って急降下していく。


「ウゥオおおおおおお!!」

咆哮を上げて近づいていくクラウド。
その殺気に気付いたのか、ゴジラの目玉がギョロリと動く。

そして到達しようとするその瞬間に振り返り、大口をあけて迎え撃つ。

そこに

『喰らいやがれ!!』

ドドドンッッ!!

「今だ――――!!」


デンライナーからの攻撃が口内に命中。
ビクンと頭が揺れ、その隙にゴジラの顎を回避してクラウドがゴジラの首に向かって剣を突き立て肩に着地した。


「ォォォオオオオオオオオオオッッッ!!!」

吹き出す魔晄エネルギー。
蒼炎とともに、氷の結晶が噴き出して行く。

さらに、そこから剣を握って駆けだすクラウド。
斬りつけられた部位から凍り付き、首周りを一周する。

ゴジラの表皮を斬るだけの技量もすごいが、それを凍り付かせる魔力もすごい。
振り落されずに走りきれたのも、突き刺した瞬間に体内から冷やされていたからだ。

首の周囲には頸動脈がある。
そうでなくとも、首元から急に冷やされればどんな生物も動きは止まる。

そうして一周したクラウドは剣を振り抜き、そのまま空中へと飛び出していった。


振り返ると、首から頭と胸元へ、クラウドの凍気による評決がビキビキと広まっていっていた。
それに伴い、動きが緩慢になっていくゴジラ。


「動きを止めたぞ!!」

「あとは全身凍ったところで砕くだけなのか・・・?」


嫌に簡単に終わるな。
クラウドもそれには疑問を持っていた。

だから、油断せずにその光景を睨みつける。


すると

ジッ・・・・ジジジッ・・・・


何か、電磁波のような音がしてきた。
そして気が付くと、ゴジラの背鰭が発光していき―――――


「ガアッッ!!!」ゴゥッッッ!!

「ヅッッ!?」

口から吐き出された放射熱線の熱が、融解をすっ飛ばしてその氷を一気に蒸発、昇華させてしまった。

青白い熱線は地面に向かって吐き出され、大通りを一直線に破壊する。
そしてそのまま上空へと向けられて、振り回すように方向転換。

上空を飛び回るメンバーは攻撃をやめ、その回避に全力を尽くして飛び回る。


旋回し、潜り込み、回り込み、逃れていくメンバーだが、追われ続けたアリシアとフェイトが段々と追いつめられていた。


「クッ・・・行くよ、アリシア!!」

「オッケイフェイト!!」

「「真ソニック!!」」

デバイスが展開し、ウイングシステムが起動する。
鋭い翼が背から展開し、一気に砲撃から逃れていく二人。

グゥンッッ!!と一瞬のうちに足元に迫りつつあった放射熱線を置き去りにして、ゴジラの背後に回っていく。


「これでなんとか・・・・」

「・・・あ」

だが、逃げ切れたと思うには早すぎた。

ゴジラを時計回りに逃げていたフェイトたち。
逃げ切れたと思ったその瞬間、彼女たちの左側から熱線が振り回されてきたのだ。



「あ、あの野郎な追いつけねぇからと分かって・・・あの一瞬で反対方向に振りなおしやがったぞ!!」

「ダメだ・・・私たちなんかじゃどうしても・・・・」

「バカ!あきらめんな!!」

地上から足を崩そうと攻撃を繰り返す杏子とさやかが愕然とする。
見上げる空では、今にも熱戦が二人のもとへと向かい


『だァァアアアアあああああああ!!』

ゴゥッ、ドォッッッ!!

そのフェイトとアリシアを轢き飛ばさんとする勢いで、真下から突っ込んできたデンライナーが二人を攫って回収していった。


「はぁ、はぁ、はぁ・・・・・」

「二人とも大丈夫かい!?」

「怪我なかったかいな!!」

「だ、大丈夫・・です・・・・」

「し、死ぬかと思った・・・・」

ゼェゼェと息を切らす二人に、声をかけるウラタロスとキンタロス。
だが、その息を整える間もなく車内放送が彼らの意識を引きもどしにかかる。


『おいオメェラ、ヤバいからどっか掴まっとけェ!!』

「ちょ、先輩何をうわぁ!?」

「いたっ!!頭打った!!モモタロスのばか!!」

「言ってる場合じゃないでしょ!!」

急激に揺れだすデンライナー。
何事かと窓から外をのぞくと、デンライナーを捕まえようと腕を振るうゴジラが見えた。

邪魔をしてきたものを、徹底的に追うらしいその攻撃的な性格。
しかも、また邪魔をすればそちらを狙うのだから執念深いのかそうじゃないのかが分からない。


「全速力です!!」

『わぁってるよ!!』

よもや電車とは思えない軌道を描いて、空中を走りまわるデンライナー。

尻尾に腕、さらには牙をも回避して逃げ回る。
一直線に逃げ出せばいい。

そう思っていた電王であったが、それをこの怪獣は阻んでくる。
一直線に走らせてくれないのだ。

「こぉの野郎邪魔しやがってよ!!」

『モモタロス!!危ない!!』

操縦席で、マシンデンバードを必死になって操作する電王だが、逃げ切れているのは奇跡というほどの紙一重の隙間だ。
しかもそれは、オーナーがとっさに連結器操作で回避しなければ攻撃が直撃する危機もあった。


「ちょっと!!いったん時間の中に避難しない!?」

『んなことができたらとっくにしてらぁ!!』

とっさに叫ぶウラタロスだが、モモタロスとてそこまで考えなしの猪ではない。
だがそれを許さないのがこの大怪獣の攻撃だった。





「ディバインバスター!!」

狙われているデンライナーを救おうと、なのはの砲撃がゴジラの顔面めがけて一直線に向かっていく。

だがゴジラは背を向けてそれを後頭部で受ける。
しかも同時に尻尾まで振るい、その先端がなのはの身体を掠めていった。


「あぐっ!!」

「なのはさん!!グッ!!」

飛んでいくなのはを何とかキャッチしたスバルだが、勢いに負けて一緒になってビルへと突っ込む。
ガラガラと崩れる壁の中、何とか立ち上がる二人の傍らにはキャロが立ち、衝撃吸収用のネットを張っていた。

「大丈夫ですか、二人とも!」

「うん。キャロ、助かったよ」

「掠ってこの威力だなんて・・・・」

掠めただけでこの威力。
バリアジャケットがなければ、一瞬でミンチだっただろう。

しかし

《マスター。それは違います》

「え」

《掠ってもません。風圧に殴られただけです》

レイジングハートからの報告。
そう。彼女たちは風圧に吹き飛ばされただけだ。

遠心力も効いたあの尻尾の先端など、どうであれ当たればこの程度ではない。





「うぉぉぉおおおおおお!!!」

別の場所には、ビルの壁を駆けあがる杏子がいた。
そしてゴジラの腹部あたりの高さに達すると、そこから跳躍して槍を構えて突っ込んでいった。


「これでも――――くらいなァ!!」

手にした槍が、彼女の魔力に応じて巨大化し、ゴジラの左太腿の付け根部分に突き刺さった。

だが先端が突き刺さったくらいのわずかな傷だ。
簡単に抜けてしまいそうなそれだが、杏子の役目はこれでいい。


「任せたよ!!」

「任せとけ!!」

その杏子の後から、ランサーが飛び出してきた。
杏子の槍を踏み台にして、さらに上空へと跳び出した。


「この槍の一撃、受けてみよ!!」

ランサーがゲイボルグを構える。
いつもの突き刺す動きではない。これは投げ放ち突き貫く形だ。


突き穿つ死翔の槍(ゲイボルク)!!!」

投げ放たれるゲイボルク。
その紅の閃光は、ゴジラの心臓部へと確実に突き刺さっていく。


「グッ・・・にしてもこいつかてぇな・・・!!!」

投げ放ち、その経過を見るランサーだが、表皮の硬度に驚いていた。
このゲイボルク真の一撃を、堪えるのがまだいたとは。

しかし

「耐えきれる、なんてことはねぇ」

ランサーの言葉通り、ゲイボルグは侵攻を遅らされてはいるものの止まってはいない。
そして、まるで堰が切れたかのように、ゲイボルグは一気に飛び出していってゴジラの身体の反対側から抜け出してきた。

「心臓、確かにいただいた」

ブシュウ、と血が噴き出す。
同時にゴジラの身体がガクンと止まり、デンライナーへの猛攻も止まった。


戻ってきたゲイボルグをキャッチし、着地するランサー。
サーヴァントの霊核は心臓と頭にある。そこを切り離すか破壊すれば、そいつは消滅する。

しかし



「ぐぅお!?」

『な・・・なんで!?』

デンライナーを衝撃が襲う。
ゴジラの腕が、念願のデンライナーを掴みとっていたのだ。


「バカな!!「奴」の心臓は確かに貫いたぞ!!」

ドォンッッ!!!

ランサーの驚愕の叫び。
同時に、その場所がゴジラに踏みつぶされるのを霊体化して逃れる。



彼らは知らないことだが、ゴジラには驚異的な生命力を裏付ける、ある再生細胞がある。
「オルガナイザーG1」と呼ばれたその再生細胞は、小さな傷なら即座に再生するだけの治癒能力を持つ。

つまるところ、心臓に穴が開いた程度ならば数秒の活動停止で再生してしまうのだ。
ゲイボルグの攻撃は確かに強烈だ。だがその大部分を表皮突破に割かれ、ただ貫通しただけとなっては意味がない。

心臓が再生する、ということは霊核ももどるということ。
ゴジラを破壊するためには、再生すら追いつかないほどの攻撃で大きく身体を破壊するしかない。


さらにいうならば、首を落とそうにもゴジラは活動を続けるだろう。
この巨体の腰に当たる部位に、小さな器官が存在する。

運動神経を司る中枢、「第二の脳」と呼ばれるものだ。
この部位がゴジラの驚異的な身体能力、反射神経の正体である。

だがここを破壊しようにも、この体に対して第二の脳はあまりにも小さい。
しかも強固な肉体に守られているそれは、真上から突き刺すように攻撃して破壊しなければ決定打は与えられないのだ。





「こいつは不死身なの・・・!!」

『ウラタロス、みんなを連れてデンライナーから出て!!』

操縦席から聞こえてくる声。
それを聞き、ウラタロスは反論することもなく即座に動いた。


「オーナー!!」

「仕方有りません!!」

オーナーが投げてよこしたライダーパスでロッドフォームへと変身するウラタロス。
そして車両の扉を開けると飛び出し、その体をデンライナーイスルギが拾い上げた。


「みんな、こっちに!!」

「良太郎はどうするんや!!」

「そういってる暇があったら早く!!」

レドームが展開し、分裂するイスルギ。
車両に近づくと、キンタロスの手を引いて落とすようにレドームに乗せる。

フェイトたちは自分で飛び出して戦いに戻り、残りのメンバーはレドームに乗ってその場から離脱した。




『モモタロス、僕たちも!』

「くそ、良太郎。そうはいかねぇみたいだぜ!?」

皆の脱出を確認し、前部からのマシンデンバード射出で脱出しようとする電王。
だがゴジラは、その最前車両部を握りしめてしまったのだ。

さらには後部車両をもつかみ、引きちぎろうと伸ばし始める。


「くそ、走って飛び降りんぞ!!」

『う、うん!!』

デンバードを置いて操縦室から逃げ出して、火花を散らし、ひしゃげていくデンライナーの中を駆けていく電王。
バチバチと爆ぜていく中を駆け抜け、ひしゃげて変形したドアを蹴破り、そこから飛び降りる。

ボンッ!!ドンっ!!と連続的に爆発を起こし、ついには連結部が砕けて引きちぎられるデンライナー。
ゴジラは手を放し、破壊されたそれを落とし、改めて「EARTH」のほうへと向き直る。




「おいおっさん、走れそうか!?」

「無理ですねぇ。武装車両は滅茶苦茶。操縦車両もこうなっては、修理に出すしかありません」

捨てられたデンライナーのもとに駆けつけたオーナーたち。
そこにあったのは、崩壊した街並みの中に捨てられ、ビルをつぶして落下した、ボロボロになっているデンライナーだった。

原形はとどめているが、正面の右側は割れており、フレームも曲げられている。
握りつぶされなかっただけ、幸運というものだ。


「ともあれ、我々にできることはもう」

「・・・くそっ!!」

こぶし大の石を蹴り飛ばし、憤慨するモモタロス。
だが、その中でガラガラと何かの音がする。


「良太郎?なにしてるの?」

「デンバードを出すんだ。そうすれば、あの場所に行ける」

ゴジラはすでに数百メートル先。
走ればいけない距離ではないが、戦いに参加するにはどうしても足が必要だ。

「良太郎君。君はまだ行く気なんですか?」

「・・・はい」


確かにデンライナーは使えなくなった。でも、まだ僕たちがいる。
外は滅茶苦茶でも、中がつぶされてないならデンバードも大丈夫なはず。

「今は、戦わないといけないから」

「でもよぉ、あいつにデンライナーなしで勝てるのか?」

「モモタロス。できない理由は、確かにある。僕らにはデンライナーがない」

でも

「できないことを理由に引き下がりたくない。今何ができないかじゃなくて、今何ができるかを考えたい。そしてそれがあるのなら、それが見つからなくなるまで、僕は絶対にあきらめたくないんだ」

はっきりと、野上良太郎は言った。
弱々しい口調だが、その芯は絶対に揺らぎようのない意思。

だからこそ、彼らはここまで駆け抜けてこれたのだ。

「ちっ、しゃーねーなぁ。オメーは一度決めたら頑固だからな」


そう言って、モモタロスも瓦礫をどかしていく。
その後を、ウラタロス、キンタロス、リュウタロスが続いていく。


「オーナー、勝てるんですかね?」

「わかりません。この世界は様々なものを内包していますからねぇ。予測がつきません」

「やばいんですか?」

「さぁ?ただ、絶望や左折なんてことと同じくらい、希望も未来も存在すると、私は思いますねぇ」

「ふーん」

「ところでナオミ君。チャーハンは作れるんでしょうか?」

「オーナー?空気読んでくださいね?」

「・・・読めてませんでしたか・・・・・・」










突き進む怪獣王。

その足が、ついに「EARTH」ビルの立つ区画へと入っていった。
ここから、「EARTH」敷地内まではもう一キロあるかないかだ。


そこで、ゴジラの動きが止まる。
ゆっくりかと振り向き、背後にいたそれを見る。


ゴジラの尻尾を、ウィツァルネミテアと化したハクオロが掴み取っていたのだ。
そしてさらに力を籠め上げ、それを肩に担ぐ。

≪ヌゥゥゥウウウウウウアアアアアアアアアアア!!!≫

ズッッ!!とゴジラの身体が後退する。
ほんの少しではあるが、確かにこのゴジラの巨体が動いたのだ。


≪アアアアアァァアアォォオオオアアアアア!!!≫

ブンッ!!!

「ガ―――――!?」

そしてついに、浮いた。
ブォッ!!と浮き上ったゴジラの身体は、ハクオロを支点にして反対側へと投げ飛ばされたのだ。

ドォン―――――

「倒れたぞ!!」

「立たせるな!!!」


仰向けに倒されたゴジラは、身体を返してうつ伏せに。
そこから立ち上がろうとするが、後頭部にクラウドの蹴りが叩き込まれて、さらに右手を装甲響鬼の巨大炎刃で切り裂かれて再び地に沈む。


「頭をつぶせェ!!!」

「私が、やります!!!」


倒れるゴジラの頭部前を前に、聖剣を輝かせるセイバーが躍り出た。
クラウドをはじめとして、魔力を持つメンバーがセイバーへと魔力を譲渡する。

未だかつてない聖剣の輝き。
目の前の漆黒すら塗りつぶす聖なる光。

世界を守らんがため、強大で巨大な人類の敵に向けられたとき、この聖剣は真の威力を発揮する。


しかし、チャージに時間がかかりすぎた。
クラウドが即座に抑え込みに戻るものの、ゴジラは後頭部へと自ら尾を叩き付けたのだ。

その一撃を回避しようと飛び出したクラウドだが、左肩に尾がぶつかり、コンクリートにめり込んでいく。
地下街にまで落下し、大きく陥没させてクラウドが動かなくなってしまう。


「クラウドさん!!」

「行きます!!!エクスッカリバァーーーー!!!」

「ガァォ!!!」

これ以上の時間はまずいと、セイバーが即座に撃ち放った。
対して、ゴジラは身体を逸らして上半身だけを起き上がらせた。

そして、セイバーのエクスカリバーに向かって放射熱線を吐き掛けたのだ。


正面から衝突する熱線と熱線。
多くのメンバーから預かっただけあって、太さは互角だ。

しかも、エクスカリバーの熱戦がゴジラを押している―――――?


「行けるぞ、セイバー!!」

「く・・・グッ―――――!!!」

その光景に喜ぶメンバーだが、当人は顔を青ざめていた。
剣から伝わる、微妙な力加減がそれを教えてくれる。


「この怪物は――――!!」

ググッ、と
ゴジラの身体が起き上っていく。

しかしそれは手や足を使ったものではなく、何かに押し上げられるかのような――――


「こいつ・・・まさか」

「エクスカリバーを利用して起き上がって」

ドンッッ!!!


強大な熱線が、エクスカリバーの光を飲み込んだ。
ゴジラは合わせていたに過ぎない。立ち上がるのに面倒な相手がいる(それも潰したが)から、じゃあ相手のこれを利用しよう、と。

だが、立ち上がればもう用はない。
首を小さく振り、吐き出していく熱線はエクスカリバーを包み込んで、さらにセイバーをも吹き飛ばしにかかり



「加賀美ィ!!」

「ハイパークロックアップ!!」

「ハイパークロックアップ!!」

直後、カブトとガタックが、その場の全員を回収して退避していた。
戻るころには、セイバーたちのいた場所は粉々に砕け散っていた。原形をとどめていたものは存在しない。



だがゴジラは敵が消えたということでこれで良しとしたのか、方向を「EARTH」ビルに戻して再び進む。





「待ってたぜ、怪獣王」





その一直線の大通り。
そのど真ん中に、セルトマンはいた。

仁王立ちして笑い、ポケットから手を抜いて掌を向ける。


「「EARTH」もなかなか頑張ってたが、お前らじゃ威力不足だよ」

そうして、最強の人類が最強の怪獣へと向かっていく。



勝つのは、どちらか



そして


「顎疲れた」

「なんすかもー!!まだ平成VSシリーズの最後聞いてないっすよ!!」

「早く話してください!!何か思いつくかもしれないでしょ!!」

「・・・お前ら楽しんでない?ほんとに考えてます?」

「「もちろん」」

「・・・・じゃあ次はデストロイアのな」



彼らは、なにか思いつくのだろうか?





to be continued
 
 

 
後書き

さすがはゴジラさんやでぇ・・・・
次回も怪獣王無双になりそうです。

ギル様だそうかと思ったけど、長くなりそうだったからカット。
たぶん次回出す。どうやって出そうかを考えている。


ギル
「我が相手をしてやろう!!」

怪獣相手にお前が出てくるとはな・・・
ああいうの嫌いだろ?お前

ギル
「セイバーが我の一日メイドをしてくれると言ってきたからなァ!!!」

ダメだこのギル・・・早く何とかしないと・・・・



みたいな
でも出てくる以上そんなあほなこと言えないから多分それらしいこと言って参戦かな?

エヌマ・エリシュならゴジラ殺せそうかなぁ?
まあそこら辺は考えてます。TYPE-MOON wikiとか見ながら



そしてこんな時でもデンライナーに乗っているナオミさん。
オーナーはわかるけど、彼女もすげぇ

何気に熱い良太郎。
出来ないことを理由に諦めたくない、っていうのは彼らしいです。



そしてハクオロさんぱねぇ。
まあ彼自身、神様ですからね。力技で投げることくらいするでしょうな。真っ向からだとさすがにウェイトの差でやられますが。

でも投げるとかすごいな


恐ろしいのは、ゴジラの知能。あいつ何気に頭いいんですよ。

ヘドラが乾燥に弱いっていうのも最初から気づいてたっぽい節あるし。
ブン回してたり踏みつけてみたり、最終的には電極版使ってたし。

シェーしたりするあたり、人間の文化も学んでますよ



というかセイバー。
緩衝材もなくエクスカリバーぶっ放したら町がなくなるぞ。

まあ放射熱線と相殺しあって、しかも飲み込まれたから消えたけど。
ってかゴジラが暴れている時点で町がなくなるとか今更でしたぁ!!



そして、ついに出てきたセルトマン。
これであっさりつぶされたらマジで「お前ふざけんな」ですよ。

セルトマン
「問題はない」

敵キャラにそう言われてもなぁ・・・・




蒔風
「次回。怪獣王止まらず」

翼刀
「舜さんの話、だんだん俺の世代に入っていく」

唯子
「うぅ・・・ハム太郎見に行った時のトラウマが・・・うわぁぁあああ!!」




ではまた次回 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

感想を書く

この話の感想を書きましょう!




 
 
全て感想を見る:感想一覧