DQ8 呪われし姫君と違う意味で呪われし者達(リュカ伝その3.8おぷしょんバージョン)
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第五話:ゴミの分別は守りましょう。自治会からのお知らせです。
前書き
今回のエピソードは
書いてて凄く楽しかった。
ウルフ・ラング・アハトのトリオを
遺憾なく発揮出来たと感じております。
(滝の洞窟)
リュリュSIDE
いやぁ~、洞窟ってぇのは日の光が届きにくいから、何時でもジメジメしてて不快ですなぁ……
先程ウルポンのアホ行動の被害に遭ったから、余計に不快な感じが致しますよ。
“滝の洞窟”って名前だし、滝壺があったら突き落としちゃおうかしら?
まぁそんな事をしたら、お父さんに『最低女』ってまた言われちゃうだろうから、グッと我慢しますけど。
敵がそんなに強くないから、うっかり死んじゃった的な言い訳も出来そうに無いし……
さてさて……そんなお茶目な事を考えていると、狭い通路に一匹の大木槌が陣取り通せんぼをしている。
何なのかよく分からないけど、ここを通らない事には話が進まないので、見なかった事にして通ろうとする……と、
「待て待てぃ! ここは俺様の縄張りだ。通りたければ俺様と勝負し、倒してからにしろ!」
う~ん……予想以上に面倒臭い事態。
如何見ても弱そうなのに、何を根拠に威張ってるのかしら?
ちょっと困ってウルポンに視線を向けると……
何て事でしょう。我がパーティーの性悪トリオ“ウルポン・ラン君・アハト君”が、水を得た魚の様に生き生きした笑顔で佇んで居りました。
「ど~しましょうアハト殿ぉ? この方を倒さないと我等は目的を達成出来ませんよぉ?」
「ええ、これは困りましたねぇ!! ウルフさん、如何すれば良いのですか? 凄く強そうですよ、この方は!」
「ホント困ったなぁ!! でも戦って倒さないとぉ……でも怖いなぁ!!」
はい。皆さん、溢れんばかりのニヤニヤ顔で、言葉ばかりの困惑状態を作ってます。
「わぁ~はっはっはっ! 俺様に敵うと思ってるのか!? 痛い思いする前にここから逃げた方が身の為だぞ!」
「ウルフ殿ぉ~……あんな事言ってますよぉ! 逃げた方が良いのではないですかぁ?」
「そうですよウルフさ~ん。怪我をしたくはないですよぉ、俺~」
「なぁにを言ってるんだい? 我々はこの先に行かなきゃならないだろう。町で待ってる美少女の為にも! 我々3人で一斉に襲いかかれば、1人くらいは先に進めるさぁ!」
「ほ、ほぅ……そ、それは見事な作戦だな……だが俺様に通用するかな? 俺様は凄く強いぞぅ! 逃げた方が良いぞぅ!!」
多分トロデさんと良い勝負をする実力しか持ち合わせてない大木槌君は、あからさまな動揺を隠そうと強がりを大きくした。いぢわるな彼等には逆効果だ。
「ウルフ殿ぉ~……作戦がバレてますよぉ! 逃げましょうよぉ(笑)」
「ですがラングストンさ~ん。一か八か戦ってみましょうよ。万が一があるかもですよぉ(ゲラゲラ)」
「そうだぜ。俺達は困ってる美少女の為に命をかけるんだ(ハラ痛ぇ)」
もう笑いを我慢出来なくなってる。
ウルポンなんかお腹抱えて苦しんでるわ。
逆に本当に負けちゃうんじゃないの?
「お、お、お、お前等の勇気は本物だな……よ、よ、よし。と、と、通して「戦うのなら準備体操が必要だぁ! 皆さん、軽くでもウォーミングアップしておきましょう」
戦う気満々な彼等に怖くなった大木槌さんが、自分の矜持を保ちつつ通過を許可しようとした途端、言葉を遮って準備体操を促すアハト君。
「よ~し。頑張るぞぉ~!!」
その掛け声と共に近くにあった大岩を、グランバニア鉱石製のバスタードソードで一刀両断するラン君。それを見た大木槌さんは目を丸くして固まる。
「俺も負けないぞぅ!」
この掛け声はアハト君……ラン君と同じ様に近場の大岩を鋭い斬檄で粉々にした。涙目になる大木槌さんが哀れに思えてきたわ。
「俺だって戦えるんだぜぇ!」
ある意味真打ちウルポン。何も無い場所目掛けてベギラゴンを炸裂させる。
あ、大木槌さんが漏らしちゃったわ。
「「「さぁ、尋常に勝負!!」」」
「え!? 勝負? ええ!!」
大木槌さんの狼狽えっぷりが凄い。
剣を構え完全臨戦態勢のラン君とアハト君……
その後ろで両手に大きな炎を灯し全てを燃やし尽くせる状態のウルポン。
そして涙目で可哀想な大木槌さん。
「ねぇ……可愛そうだよぉ」
「な~にが可哀想なのかなぁ?」
私の言葉に、解ってないふりで応えるウルポン。
「だって通してくれそうだよ。虐めちゃ可哀想よ」
「ええ! 通してくれるだってぇ!? でも先刻通さないって言ったし」
これまた大袈裟なリアクションで驚くアハト君。
「い、いや……お、お前等の勇気に免じて……と、通してやろうかと……」
「はぁ? 渋々お情けで通して戴けるくらいなら、我々は正々堂々と戦って通る権利を得ます! ねぇ皆さん?」
あぁ……ラン君楽しそう。
大木槌さん……言い方が拙いわよ。貴方の実力は理解してて通せんぼが楽しくなってるんだから。
「い、いえ……是非通って下さいませ」
「戦わなくて良いの? 俺達、勝たなくて良いの?」
泣いて道を譲る大木槌さん。それを受け入れようとしないのはウルポン。
「如何か通って下さい……邪魔してゴメンなさい。本当にゴメンなさい」
「いや、邪魔じゃ無いですよ。戦いましょうよ」
未だ意地悪をするのはアハト君だ。
「もう! 本当に止めてあげて下さいよ。泣いてるんですよ!」
「そうですよ、お二人とも! 泣いてる相手を虐めるなんて最低ですぞ!」
あ、ラン君が裏切ったわ。
「お前……本当に解りやすいな」
「何アイツぅ? 一瞬前までコッチ側だったじゃん」
ウルポンとアハト君がチラチラこちらを見ながらヒソヒソ話し合う。
「煩いですよ。美女の意見は絶対なんです! 知らないんですか?」
「美女じゃなくて惚れてる女だろ?」
「……ラングストンさんの意見は最もですね。俺もイジメはダメだと思います。ミーティア姫がここに居たら、絶対に制止するでしょうから」
ウルポンのラン君への白い目をかいくぐりこちら側へ来たアハト君は、洞窟内は危険だという理由で残してきたミーティアさんの事を思い出して寝返った。
「お前等……弱いなぁ(苦笑)」
う~ん……確かにウルポンだったら、マリーちゃんやリューノちゃんの意見であっても、自分を曲げずに物事をやり通しそうだわね。それが強いのか否かは解らないけども、国家の重鎮としては頼もしいのかもしれない。
私は嫌いだけど!
完全涙目の大木槌さんのご好意を受けて、洞窟の奥まで到達した私達。
目の前には綺麗な滝が轟々と流れている。
その滝の少し手前には、綺麗な水晶玉が魔法の力かなんかで宙に浮いており、まるで誰かを待っているかの様だ。
「アレですかねぇ? ユリマさんが言ってた水晶玉って」
「そうじゃねぇの? 洞窟の奥にこれ見よがしに存在するんだから」
「ですが罠の匂いがしませんでげすか?」
アハト君の確認に、ウルポンが興味なさそうに答えると、この状況を冷静に分析してるヤンガス君が危険を提唱する。
う~ん、真面目な人が居ると話が進んで助かる。ティミーお兄ちゃんが居れば大助かりだったのに。
「罠かぁ……じゃぁ俺は手を出さね!」
「あぁズルイ。私だって嫌ですよぉ」
早々に関わりを拒否するのはグランバニア勢。
「え~……俺だって嫌だなぁ」
「アハト君が受けた依頼でしょ。君が勇気を振り絞って犠牲になるべきだ!」
共通の敵(からかう相手)が居る時は仲が良いけど、面倒事に直面すると仲間割れを始めるトリオ。
「何で犠牲になる事が前提なんですか? 大丈夫かもしれないでしょ?」
「そこまで言うのならば、やっぱりアハト殿が水晶玉を取るべきです」
「そうだそうだ。可愛いユリマちゃんの為に、男を見せろアハト君」
「此処に居ない美少女の為にですか?」
「ここには居ないけど、占い師の端くれでがすから、もしかして見てるかもしれないでげすよ兄貴」
なるほど……上手い誘導の仕方だわ。
「良し! 俺も男だ。ユリマさんがご所望の水晶玉を手に入れようじゃないか!」
元々本気で嫌がってた訳では無いので、ヤンガス君の安い挑発に乗ったフリをし、スマートな仕草で水晶玉に手を伸ばす。
すると……
(ザッパ~ン)
「とうとう現れたな不届き者め! この滝に物を投げ捨てるなど無礼千万! 今こそ天罰を喰らわせてやる!」
と、額に大きな傷を持つ半魚人的なモンスター的な何かが現れた。
「はぁ? 何言ってるのオッサン? 俺等は此処に物を投げ捨てたりはしてねーよ。勝手に無礼者扱いすんなよ!」
いや十分無礼者だよ、ウルポン。
初対面の相手に対して、その言葉遣いは素質有りだよ。
「なぁにぃ!! お前等ではないのか、此処にこの水晶玉を投げ捨てたのは?」
「だから違ーって言ってんだろ!」
敬語使おうよ……何か年上っぽいしさ。
「くぅ~……長い年月待ち続けて居るが、未だに無礼者は現れぬか! もう良い。お前等に用は無い故、立ち去るが良い」(サッポ~ン)
言いたい事だけ言い終えると、水晶玉を残して滝壺に消えていった半魚人的なモンスター的な何か。
「立ち去れってさ……水晶玉を貰って帰ろうぜ」
「そ、そうですね……」
一方的だが、立ち去れとも言われたから目的の水晶を手に入れようと、再度手を伸ばすアハト君。
すると再び……
(ザッパ~ン)
「とうとう現れたな不届き者め! この滝に物を投げ捨てるなど無礼千……ん? 何だ、先程の者達ではないか! やはりお前等がこの滝に物を投げ捨てたのか?」
「違ーよ! 先刻もそう言っただろ」
「では早う立ち去れ!」(サッポ~ン)
今度も一方的。
水晶玉を捨てた張本人では無い事が分かると、私達の話を聞かずに滝壺に帰る半魚人的なモンスター的な何か。
「何だあいつ。人の話を聞かねー奴だな(怒)」
半魚人的なモンスター的な何かの態度にイライラし始めるウルポン。
近場から大きめな岩を見付け、抱えて滝の直前まで歩み寄る。
「アハト君。もう一度水晶に手を伸ばせ」
「は、はぁ……」
すると勿論……
(ザッパ~ン)(ひょい)(ゴツ~ン)
「ぐはぁ!!!!」
半魚人的なモンスター的な何かが出てくるタイミングを見計らって、大きめの岩を滝壺に投げ入れ、見事半魚人的なモンスター的な何かの脳天に直撃させる。
流石に滝から陸地に身を乗り出し、頭を抱えて身悶える半魚人的なモンスター的な何か。
何だか可哀想に思えてくる。
リュリュSIDE END
後書き
DQ8をプレイしてない方にお知らせしておきますが、
この大木槌さんは、原作にもちゃんと登場する方です。
原作をプレイした時は、今回のエピソードを思い付いてニヤニヤが止まりませんでした。
……私は、あのトリオのように性格が悪い訳では無いと思いたい。
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