DQ8 呪われし姫君と違う意味で呪われし者達(リュカ伝その3.8おぷしょんバージョン)
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第三話:各々の役割は守りましょう。でも例外だってあるはずだよ。
(トラペッタ地方)
ヤンガスSIDE
『大勢で押し掛けちゃ申し訳ない。悩み事はアハト君が代表して聞いておいてよ』
そう、取って付けた様な言い訳をして町の宿屋へと行ってしまったウルフの旦那等と別れ、ユリマ嬢ちゃんの家に行ったアッシと兄貴。
悩み事の内容を聞き、トロデのオッサンの下へ戻るのかと思いきや、ウルフの旦那等が泊まってる宿屋へ行き、ユリマ嬢ちゃんの依頼を奴等にも説明して一緒に宿泊する兄貴。
夜が明けて早い段階でトロデのオッサンと合流したが、当然の如く待たされた事を怒ってる。
しかし達者な口を持つ兄貴とウルフの旦那のツートップに押し切られ、有耶無耶のままユリマ嬢ちゃんの依頼を遂行すべく出立。
まだ付き合いは浅いでげすが、この二人の性格は近い物がある。
さて、お二人の性格の事はさておき、ユリマ嬢ちゃんの依頼の事をお伝えするでがすね。
ユリマ嬢ちゃんの親父さんは、昔は『占えない物は無い』と言われるほど凄腕の占い師だったらしいのでげすが、最近では全く当たらなくなり、親父さん自身も酒に溺れる毎日。
何とか出来ないかと色々調べた結果、仕事道具である水晶玉が偽物になってる事を突き止めたユリマ嬢ちゃん。
未熟な能力で占った結果、トラペッタの南にある滝の洞窟の奥に、本物の水晶玉がある事が判明。
危険な魔物も多数徘徊してる洞窟なので、アッシ等に水晶玉奪還を依頼してきたと言う事でげす。
当初の目的とは違う問題事に、トロデのオッサンは反対するかと思いきや、『えらい! 父の事を思ってワシ等に声をかける勇気……流石はミーティア姫と同年頃の少女。何としてでも助けてやらねばならんだろうて』と凄い勢いで賛成表明。
そういった諸々の事情でアッシ等は朝早くから滝の洞窟目指して進行中でがす。
町からそれ程距離は離れてないとは言え、昨今のモンスター事情からすれば、色々と攻撃される事暫し……
兄貴に命を救われた恩を返すべく、アッシも全力で戦闘を行う。
だが気になる存在が一人……
何時もデカイ口を叩き立派な剣をぶら下げてるウルフの旦那でがす。
異世界組他二名は戦闘が始まると抜刀し、ナイスなコンビネーションで敵を倒していくのでがすが、ウルフの旦那だけは直ぐさま後方へ下がり戦いの行く末を見守ってるでげす。
とは言え、サボってるという訳ではなく、常に周囲への警戒は怠らず何時でも戦いに参加できる姿勢はとってるんでがすが……
一体何を考えてるのでがすかねぇ?
因みに他二人でげすが……
凄腕の戦士風のラングストンの旦那は見た目通り、長身から振り下ろされるバスタードソードの威力を惜しみなく使って、どんな敵でも一撃粉砕。
一見可憐な少女のリュリュ姐さんは、素早い動きから繰り出されるショートソードでの攻撃と複合して、実は腰に短剣を隠しており、メイン武器に見せたショートソードに意識を向けてると、不意を突く一撃が意識外から襲ってくる戦法。
兄貴はスタンダードな戦い方で、鱗の盾で敵をいなしミドルソードでトドメを刺す。
足の運びも身体の移動も城の兵士風に基本に忠実で、しかしながら鍛え抜かれた全身のバネを使って、隙の無い戦い方で敵を圧倒しているでげす。
アッシは剣術や体術を習った訳では無いので、力任せに斧を振り下ろし、少しでも兄貴等の力になる為頑張っているでがす。
それでも戦闘に参加してる分、ウルフの旦那よりかは働いてる感を出しているんでげす。
だからだと思うが……
「おいウルフ。お前は何故戦わん!? 口先ばかりで役に立たんではないか?」
とトロデのオッサンに文句を言われる。
「俺は頭脳労働派なんだ。肉体労働は馬鹿共……ゲフンゲフン、体育会系の方々にお任せするんですよ」
アッシの見る限りでは嘘だ。
仕草や佇まいからして、ウルフの旦那もかなりの猛者であると思える。
「今……馬鹿共っつた?」
「いえ、気のせいですリュリュさん。リュカ家一番の家臣である私が、リュリュ様の事を馬鹿と言う訳ないでしょう」
これもきっと嘘であろう。ウルフの旦那のニヤケた顔が物語っているでがす。
「そんな事は如何でも良いんじゃよ! 兎も角、お前も戦えるのであろう……であれば戦うのが仲間への礼儀であろう!」
「あはははっ、オッサンも戦ってねーじゃん」
「ワシは戦う能力が無いから致し方なかろう!」
「じゃぁお前は何が出来んだよ!?」
多分、何も出来ないと思うでがす。
「ワ、ワシは王様じゃぞ! 何かが出来る必要など無いわい!」
「馬鹿じゃねーの? 王様ってのは国が健在で初めて威張れる存在なんだよ! 金も無い、力も無い、権力も当然無い、何より何の役にも立たない。何で威張ってんだよ?」
「そ、それは……ド、ドルマゲスを見付け、我が国にかけられた呪いを解かせれば、ワシは元の王様に戻れる! だから威張ってるんじゃ!」
今現在は何も無い事を認めるんでがすな。
「じゃぁお前一人でドルなんとかを追えよ。そして国を再建してから俺等に威張れよ。それまでお前の言う事は何も聞かん!」
「な、何じゃと!?」
「よく考えたら、俺等までドルマゲを追う必要って無いじゃん。だって俺等の目的はペットのアホ鳥を探し出す事だし。この世界の事がまだ解ってないから付いていこうとしてるだけで、他の冒険者に付いていっても良いんだよね」
「で、ではそうすれば良いだろ! サッサと何処かへ行け!」
「じゃぁお言葉に甘えて何処かへ行きますか。アハト君は如何する? 君がこのオッサンに付き従う意味が解らないんだけど?」
う~ん……確かにこんな態度のデカイだけのオッサンに従う意味は解らないでげすね。
「俺が陛下に付き従う理由ですか? そりゃぁ……あれ? 何でだろう? 別に国が滅びた訳だし、陛下の我が儘に付き合う必要性が無いですねぇ?」
「お、おいアハト……な、何を……言い出すんじゃ?!」
「じゃぁ俺等と一緒に行こうぜアハト君」
「あ、そうしちゃおうかなぁ?」
「ま、待てアハト! お前はこれまでの恩義を仇で返すというのか!?」
「え~……恩義と言われましてもぉ……何時も我が儘言われてただけですしぃ~……」
オッサンの元々青い顔色が、更に青く変色してるのが分かる。
兄貴とウルフの旦那の性格は本当に似ていると思うでげす。
「そ、そんなぁアハトぉ……ワシは……我が儘なんて」
「あははははっ、冗談ですよ陛下(大笑)」
本当に泣きそうなオッサンの顔を見て腹を抱えて笑い出した兄貴。
「俺が陛下は兎も角、ミーティア姫を見捨てる訳ないでしょう!」
「ほ、本当か!? ……ってか『陛下は兎も角』って何じゃ!」
見捨てられないと分かり嬉しそうにしたが、兄貴の余計な台詞に直ぐ憤慨するオッサン。
「何だ? アハト君は姫様のナイト気取りか? こっそり夜の寝室に忍び込んでたりしてたのかい?」
「そんな事する訳ないでしょう。ただ可愛いから人間の姿に戻したいんですよ。まぁそのお礼に……ってなったら良いなと思ってますけどね(笑)」
「馬鹿者! ミーティア姫はサザンビークの王子と婚約して居るのだぞ! 立場を弁えんか!」
「弁えてますよぉ……だから幸せになって欲しくて、こうやって祖国滅亡後も尽力してるんじゃないですか。陛下だけが呪いにかかっていたのなら、もう見捨ててますよ」
「ほら。アンタの様に威張ってるだけじゃ誰も忠誠を誓わないんですよ。その点、俺の主君は凄いですよ。あの人の為なら俺は命を捨てられるからね!」
「ほう。ワシと何が違うと言うのじゃ?!」
「そうだね……まず威張ってるだけじゃない。自らが率先して行動する人だ。それと、王様は国民の税金で生かされてる寄生虫だって理解してる。よく言ってるもん……『王様はそんなに偉くない』ってさ」
「何を言うか! 王様が居なくて、国が成り立つ訳ないであろう!」
「確かに王様(リーダー)は必要かもしれない。だけど、それは誰でも良いんだよ。食料を確保する人・家や道など町並みを造る人・内外の敵から身体を張って皆を守る人。それらを統括して管理するのが王様(リーダー)だ。先祖代々王族だからって、子孫が適任だとは言い切れない。実際歴史を振り返れば明らかだろ? 絶大な権力に振り回され、悪政を強いた偉大な王の純血種が何人居た事か」
「そ、それは……其奴の教育係が悪かったのだ! ちゃんと教育しておけば、間違いなく善政を行う王になっていた事であろう」
「教育が問題というのなら、それは生まれた後の事……即ち後天性の問題だ。両親の顔も知らない様な孤児を見付けて、一から帝王学やらを教え込んでいけば、将来は立派な王様になるって事だろ? 先天的な血統なんて必要無いじゃないか!」
「そ、それは……その……………う、五月蝿い! そんな事より何時までワシ等と一緒に居るんじゃ!? 何処かへ行くと言っておったであろう。サッサと消えろ!」
「うん。別行動しようと思ってたけど、アハト君が命をかけるほど助けたい姫様の容姿が気になっちゃったから、もう少し一緒に行動する。でもアンタは俺の主君じゃ無いから、横柄な命令は受け付けない。俺に何かして欲しかったら、低姿勢で懇願しろ」
「ふざけるな! お前の様な無礼な奴の同行などワシは認めんぞ!」
「アンタが認めなくても俺は勝手に付いていく。何せ俺はアンタの命令を受け付けないからね。付いてこられたくなかったら、低姿勢で俺に懇願しろ……そうだなぁ、額を地面にめり込ませて出血するくらいの土下座で考えてやる」
「だれがやるか! アハトよ、此奴等を追い払え」
「え? 嫌ですよぉ。折角一緒に旅が出来るんですから。戦力として十分に期待出来てるんですから、追い払うなんて出来ません」
「馬鹿者! これは国王からの命令だぞ!」
「じゃぁ陛下も戦ってくださいよぉ。俺は姫を危険に晒したくないんです。少しは自らも戦闘に参加して、俺の負担を軽減させてくださいよ!」
「アハト君……無茶を言うなよ。その王様は、きっと幼少期の教育が悪くて、国家を衰退させる事しか出来ない国王なんだよ。そんな奴が戦える訳ないじゃないか」
「なるほど……確かにそうですね。ゴメンなさい陛下。陛下は我が儘言う事しか能が無かったんですね」
「何じゃ貴様等!? 先程からワシの事を馬鹿にしおって……」
「ご不快ですか、陛下?」
そりゃ不快だと思うでがすよ、兄貴。
「あ、当たり前じゃ!」
「ではこうしましょう……俺はミーティア姫さえ無事ならそれで良いんです。そしてウルフさんは元に戻った姫様を見てみたいと希望してます。陛下に対して無礼な俺等全員と別れるってのはどうですか? 大丈夫ですよ……まだ町からそれ程離れてませんし、この場に置き去りにしても陛下の足で逃げ切れるはずです」
「ワ、ワシを見捨てるのか?」
「違いますよぉ。陛下に対して無礼な俺達は別行動をするだけですよぉ」
多分本気では無いと思うが、兄貴の微笑みが増大する。
「ワ、ワシは王様だぞ!!」
「う~ん……新しくミーティア姫が女王になれば問題解決かと?」
「ほら……王様なんて誰でも良いんだよ」
激しく狼狽えるオッサンに対し、満面の笑みで無慈悲な提案を続ける兄貴。
それを冷淡な表情で見詰め、吐き捨てる様に先程の論議を蒸し返すウルフの旦那。
この二人は打合せでもしてたかの様に、トロデのオッサンを追い込んでいく。
「ワ、ワシは……ワシは……」
「冗談ですよ陛下ぁ(ニッコリ) 俺が陛下を見捨てる訳ないでしょ?」
潮時と思ったのか、兄貴が優しくオッサンの事を宥めだしたでがす。
「そ、そうだよな!」
「そうですよぉ。でもウルフさん達は戦力になるから追い払おうなんて言わないで下さいね。陛下がウルフさんに噛み付かなきゃ、彼も陛下を虐めたりはしませんから」
我が儘なオッサンを黙らせる為だけに、ここまで虐めるのか?
「俺は冗談じゃ無かったんですけど?」
「ええい五月蝿い! もうお前なんぞ知らんわい。勝手に付いてくれば良いだろう。ワシに話しかけるな」
この状況を壊したくないオッサンは、拗ねた口調でそっぽを向いて、この話を終了させたでがす。
「まったく……ウチの王とは偉い違いだな」
「ウルフさんの王様は、そんなに凄いんですか? 先程の話を聞く限り、自ら戦う事も辞さない方の様ですけども?」
「戦うさ……ってか最強だね。俺に剣術を教えてくれたのはリュカさんだし、あの人は各世界の神々からも頼られる存在だからね」
「はぁ……『リュカさん』ですか? 随分とフランクに呼んでますね」
「まぁ……流石に公式の場では俺も陛下って呼ぶけど、あの人自身が身分を誇示する人間じゃ無いからね。だから心からついて行ける……」
「凄い信頼ですね」
「まぁね。 ……でも、今回俺が異世界に放り出された原因はリュカさんだから、帰ったら絶対に仕返しはする!」
「仕返し? 心から忠誠を誓ってるのに?」
「忠誠心と仕返しは別問題だ。やられたらやり返す……当然だろ?」
「当然かなぁ?」
いや……絶対に間違ってるでげすよ。
ヤンガスSIDE END
後書き
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