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真田十勇士

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巻ノ百八 切支丹禁制その九

「まだな」
「権勢はあれども」
「ご本人に欲はありませぬ」
「ですから石高も低く」
「多くを求める方ではないですな」
「だからよい、しかしだ」
 彼はよくともというのだ。
「問題は息子じゃ」
「ですな、上総介殿は」
「どうにもです」
「ご自身の智謀を誇り」
「権勢も求めておられますな」
「それも強く」
「謀略は天下にいるか」
 秀忠は幕臣達に問うた。
「無暗に」
「上様は必要ないと」
「そう言われますか」
「正しき政が必要でな」
 それでというのだ。
「謀は必要でない」
「あまりにも過度な謀を使われるなら」
「それならですな」
「それで権勢が大きくなれば」
「その時は」
「除きたい、あの者は父親以上に謀を好む」
 その本多以上にというのだ。
「あれはな」
「どうにもですな」
「それで、ですな」
「危険過ぎてじゃ」
「これ以上権勢を持たれては」
「その時は」
「あの者は天下は望んでおらぬ」
 秀忠は正純のこうしたこと見抜いていた。
「別にな」
「そこまではですね」
「特にですな」
「あの御仁も思われておらぬ」
「確かにそうですな」
「そうした野心はない」 
 正純はというのだ。
「幕府の中で権勢を極めたいだけでな」
「それ以上のものはですな」
「望んでおられず」
「幕府乗っ取りや天下は望んでおられぬ」
「左様ですな」
「そうじゃ、しかしな」
 それでもというのだった。
「放ってはおけぬ」
「その権勢で何をするか」
「謀をみだりに使われはかならぬ」
「幕府としてはですな」
「そうじゃ、幕府が欲しいのは王道じゃ」 
 それだというのだ。
「父上もそう言われているが」
「王道、つまり正しき政ですな」
「天下と民に向かい合いそ平穏をもたらす」
「長きに渡って天下泰平をもたらす」
「それが幕府の目的ですな」
「そうじゃ、馬上で天下は治められぬが」
 それだけでなくというのだ。
「謀でもじゃ」
「天下は治められぬ」
「そうしたものですな」
「天下を治めるのは王道」
「つまり正しき政ですな」
「それが大事じゃ、上総介はそうした者ではない」
 王道にいる者ではないというのだ。
「これは崇伝もじゃが」
「あの方も謀が得意ですな」
「どうにも」
「上総介殿と並んで」
「そうした方ですな」
「しかしあの者は学識があり」
 そしてというのだ、彼の場合は。
「王道も知っておる」
「それで天下を治める政も出されますな」
「本朝の隅から隅まで見たうえで」
「それもされますな」
「しかも権勢は欲さぬ」
 崇伝はというのだ。 
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