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真田十勇士

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巻ノ百五 祖父との別れその八

「拙者も然りじゃ」
「戦においての武芸、忍術も備えられている」
「そして今も」
「では、ですな」
「明日大殿のところに行かれますか」
「そうする、そして巻物を授けられたなら」
 幸村は意を決した顔で十勇士達に応えた。
「必ずじゃ」
「その秘奥義を備えられる」
「ですな」
「それでは」
「それに備えて今は身も慎んでおる」
 修行だけでなくだ。
「酒も飲んでおらぬな」
「はい、確かに」
「殿は酒好きでありますが」
「今はですな」
「酒を飲まれていませぬな」
「うむ、飲まずにじゃ」 
 そしてというのだ。
「今はそうしたところも精進してな」
「そして、ですか」
「その術を備えられるまでは」
「酒も飲まれませぬか」
「そのつもりじゃ、時としてこれもよかろう」
 酒を断つ、このこともというのだ。
「だからじゃ」
「それでは」
「今はですな」
「このまま練られますか」
「そうされますか」
「うむ、そうじゃ」
 まさにというのだ。
「そして明日じゃ」
「大殿のところにですな」
「赴かれますか」
「そして父上じゃが」 
 今度は昌幸のことも話した。
「このこととは別にな」
「別に?」
「別にとは」
「うむ、どうもな」
 怪訝な顔をして十勇士達に言うのだった。
「近頃お元気だと思うか」
「別に変わりないのでは」
「特に」
「悪いところはないかと」
「お元気では」
「ならよいがな。父上もお歳じゃ」
 それ故にというのだ。
「何時までもとなって欲しいが」
「人は必ず死にますからな」
「そして生まれ変わります」
「六道のその中で」
「そうなりますからな」
「だからですな」
「大殿についてもですか」
「人は必ず死ぬが死ぬべき時がある」
 幸村は確かな声で言った。
「想いを遂げてな」
「そのうえで、ですな」
「満ち足りたままで死にたい」
「それは幾らで亡くなろうともですな」
「まずは願いを果たしてからですな」
「そうでありたい、それは父上も同じであろう」
 昌幸についてもというのだ。
「だからな」
「大殿はご自身のお願いを旗されてですな」
「そして、ですな」
「大往生されて欲しい」
「そうお考えなのですな」
「そうじゃ、拙者はな」 
 幸村としてはというのだ。 
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