IS~夢を追い求める者~
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最終章:夢を追い続けて
第58話「一時の帰宅」
前書き
―――...それは、想像以上に難しい事だよ?
IS学園が終わってからのワールド・レボリューションでの話。
出来る事は限られていて、やる事は多い...描写しきれません。(´・ω・`)
=秋十side=
「......。」
タクシーから降り、目の前に建つ建物を見上げる。
ここの所、学園で色々あって来れなかったから久しぶりだ。
「ようこそワールド・レボリューションへ。本日は...あら?」
「すまないが、グランツ博士を呼んでくれないか?」
「は、はいただいま!」
受付の人はどうやら最近(といっても数か月前)に会社に来た人なので、ぱっと見、俺に気づけなかったのか首を傾げた。
一応、俺の名刺を出し、グランツさんを呼ぶように言うと、慌てて連絡を取り始めた。
「(確か...ここの所うちに来る社員は別に女尊男卑で零れ落ちた人ではない...。なのに、今の状況でもうちをやめないっていうのは...度胸あるなぁ。)」
今、この会社はあまりいい立場ではない。
利用されていたとはいえ桜さんと束さんがいたから、メディア関連が粗探しをするかのように負の側面を探そうとしている。
信用もだいぶ落ちた。社員だって何人もやめていったしな。
だから、この受付の人は中々度胸があると思う。
「すみません、フローリアン博士は忙しいそうで、こちらには来れないだろうと...。」
「やっぱりか...。しょうがない。自分から行くか。」
「え、ええっ!?」
忙しい事は分かっていた。グランツ博士は現在社長代理のような立場にいる。
ハインリヒさんもその立場を担う事はできるけど、表沙汰にできないからな...。
「ま、待ってください!そんな勝手な事されては...。」
「あー、じゃあボクが案内するよ。」
「シャル。」
受付の人が困ったように俺を止めていると、シャルがやってきた。
...そういや、シャルはここで暮らしているから一足先にこっちに来てたな。
「一応、秋十もテストパイロットだったから、誰かから許可を貰えればある程度自由に会社内を動けるようになってますよ。」
「え、で、ですが...。」
「...伝わってなかったのかな。おとうs...ハインリヒさんやグランツ博士からは秋十が来れば通すように言われているよ。」
「そ、そうなんですか!?」
...今“お父さん”って言いかけたな...。
受付の人は知らないから言い直したけど。
「じゃあ、受付頑張ってください。」
「あ、はい...。」
とりあえず行っていいようなので、シャルと共に奥へと入っていく。
「一応連絡は入れてたんだが...やっぱり忙しいのか?」
「それはもう...ね。だからボクが出てきたんだけど。」
「そうだったのか。助かった。」
シャルも手伝う立場だが、まだ学生の身だ。割り振られる仕事も比較的少ない。
だとしても忙しいのは変わりないだろうから、俺も手伝わないとな。
「俺にも何かできる事はないか?焼け石に水だろうが、少しでも減らしたい。」
「うーん...とりあえずボクが手伝っている事ならできるかな?ボクの仕事に一区切りを付けれたら、改めて秋十にも仕事が割り振られると思うよ。」
「分かった。」
膨大な事後処理。...できれば、その対策もしてほしかったな桜さん達...。
まぁ、過ぎた事は仕方ないし、シャルを手伝う事にするか。
「...ところで、連絡ではチヴィットの皆も連れてくるって聞いたけど...。」
「...っと、もう出してもよかったな。」
シャルの言葉に俺は持ってきていたトランクケースを開ける。
「ぷはぁっ!やっと出られたよー!」
「ぬぅ...ちと酔ったぞ...。」
「.......。」
そこから、チヴィットの三人が出てくる。皆窮屈だったようだ。
シュテルに至っては喋れない程ぐったりしていた。
「そ、そこに入れてたんだ...。」
「あまり人目に付かない方がいいからな...。だからといってトランクに入れるのは悪いと思った...。」
正直罪悪感でいっぱいだ...。
【こういう事は二度とやらないでね。】
「...すまん。」
「白も入ってたんだね...。格納領域を使えばよかった気がするんだけど...。」
...盲点だった、という訳ではない。
格納領域には既に他のものが入っているため、これでもトランクの方がマシなのだ。
夢追もどことなく苦しそうにしていたため、早くメンテ室に行きたい。
「先にメンテ室に寄っていいか?格納領域に入っているものを出して、皆も休憩させたい。」
「それならちょうどいいね。ボクもそこに用があるし、グランツ博士も今はそこにいたはず。」
どうやらタイミングが良かったらしい。
とにかく、そこに向かう事にするか。
「....よし、こんなものか。」
「随分と持ってきたね...。」
メンテ室で格納領域に入っていたものを出す。
入っているのは、元々使っていたものだったり、使えそうなものだったり...。
まぁ、様々なものが入っている。だからこそ格納領域がいっぱいになったんだが。
「とりあえず、軽くメンテしておくか。...無理させたからな...。」
「なんで複数回に分けて持ち運ばなかったのさ...。」
全部納まったから何回かに分けるのを失念していた。
...うん、これからは気を付けよう。
「じゃあ、ボクとグランツ博士はあっちの方にいるから。」
「了解。」
この会社のメンテ室は、偏にメンテ室と言ってもいくつか区分けされている。
...と言うのも、ISだけじゃなく色々なメンテをする場所だからな。
だから俺が今いる場所とシャルや博士が仕事している場所は違う。
「さて、とりあえず何か異常があれば言ってくれ。」
「...とりあえず、休む方向で頼む...。」
「...それもそうだな。」
チヴィット達はとりあえず休ませよう。
だいぶAIも人間らしくなったので、疲労もあるようだ。
「白と夢追は大丈夫か?」
【問題はないけど...一通り見た方がいいよ。】
「ちょっと無理させたからな...。わかった。」
まずは一通り見る。
メンテナンスと言っても俺にできる事は限られているからな。
活動に支障を来す程の異常となると、ちょっと手に負えないが...。
まぁ、その点においては大丈夫なようだ。
「...数値にブレがあるな...。正常値とあまり変わらないから支障はないが...。まぁ、無茶させた影響だろうから、ちゃんと元に戻しておくか。」
キーボードを叩き、数値のブレをなくしていく。
これならすぐに終わりそうだ。
「完了っと。じゃ、早速シャルの所に行くか。」
メンテも終わり、夢追は待機形態に、チヴィット達も格納領域で休んでいる。
白は俺の頭の上に陣取っていた。
「ここか。」
シャル達がいる区画に辿り着く。
どうやら、一段落着いているようで、慌ただしそうには思えなかった。
「おや、ちょうどいい所に来たね。」
「グランツさん。お久りぶりです。」
グランツさんが俺に気づいてやってくる。
「...えっと、寝てますか?」
「あはは...まぁ、最低限はね。」
「相当やつれて見えますよ...。」
職を失くしていた時と違い、忙しさでやつれている。
それだけ忙しい状況が続いているという事だろう。
「アミタとキリエはまだかい?」
「二人共、まだ仕事が残っているみたいで...。」
「そうか...二人も頑張ってるんだね...。」
疲れたように呟くグランツさん。
「...話は変わるけど、秋十君達は桜君達を止めるつもりなんだね?」
「...はい。桜さん達も、それを望んでいるでしょうから...。」
一転して、真剣な表情でグランツさんは言う。
俺もしっかりと向き合って肯定の意を返す。
「...それは、想像以上に難しい事だよ?」
「っ...わかってます。あの人達がそう簡単に―――」
「そう言う事じゃないんだ。...彼らが捕まえられるかどうかじゃない。」
首を振り、そう言う事じゃないというグランツさん。
「ただ止めるだけなら、君達ならばできるだろう。何せ、一番身近にいたのだから。だけど、それで周りはどうなる?ISが意志を主張した影響。女尊男卑の風潮が崩壊し、迷走している社会の現状。彼らを止めた後の対処。...挙げればキリがない。」
「......。」
「これは、君らだけの話じゃないんだ。世界中に影響する。それらを全て穏便に済ませるには...あまりに、難しすぎる。」
...盲点だった。
いや、気づいてはいたのかもしれない。その上で、目を逸らしていた。
これは俺達や桜さん達だけで済む問題じゃない。
このまま桜さん達を捕まえた所で、一体どうなるだろうか。
世界を搔き乱した罪は重い。それでは桜さん達の願いは結局叶わない。
「やめろ....とまでは言わないよ。だけど、決して忘れないでほしい。今の君達だけでは、絶対に良い結果にはならない。...いや、例え仲間を集めた所で、それは変わらない。」
「っ.....。」
「国を動かす存在を止めるには...こちらもまた国を動かさなければならない。桜君と束君の夢を実現した上で穏便に済ませるには、文字通り世界を変えなければならない。...覚悟が出来てるとか、そういう話じゃないんだ。」
「それ、は....。」
分かってる。分かっているんだ。
ただでさえ俺達...ワールド・レボリューションは立場が悪い。
それなのに、テロリストとなった二人を止めて、穏便に済ませる真似をしたら...。
それこそ、グルだったと疑われる。
「人一人にできる事は限られている。無理して突っ走っても、見合った結果は返ってこないよ。」
「......。」
「...博士、ちょっと言いすぎなんじゃ...。」
何も言えずに黙り込んだ俺を見かねてか、シャルがそういう。
「...っと、それもそうだね。」
「...え?」
今までの雰囲気と打って変わる。
「秋十君。確かに君にできる事は限られている。元々自他共に認める程才能があるとは言えない君だ。知り合いで仲間を集める事はできても、それ以上は難しい。」
「っ....。」
「だけど、会社や国を動かせる存在も身近にいるのを忘れていないかい?」
「....あ....。」
そうだ。影響力が強いのは桜さん達だけじゃない。
「適材適所。君の姉である千冬君なら相当な影響力を持っている。それに、僕らだって何もできない訳じゃない。立場が悪いのならば、それを利用すればいいのさ。」
「利用...?」
「桜君達が、ただテロを起こした訳ではないと訴えかけるのさ。僕らは今まで共にいた。その分、彼らを理解しているつもりだからね。」
「...なるほど...。」
止めた後の布石を打つようだ。
これなら、桜さん達の夢に近づく事もできる。
「元々、束君はISを宇宙に羽ばたくための“翼”として開発した。だけど、世界はその通りに扱ってくれなかった。その点に置いて見れば、非はあちら側にあるしね。」
「...確かに、そうですね。」
なんというか、ダイナマイトを開発した人を思い出すな。
本来の用途とは別に使われるのは、誰だって嫌だろうし。
「ともかく、僕にだって伝手はある。大きな存在を動かすのは僕らに任せて、君は君らしく在ればいい。」
「....はい。」
やっぱりと言うべきか...。不慣れな事はするべきじゃなかった。
俺は、いつものように努力を繰り返す事しかできない。
...俺は...結局役に...。
「...言い忘れていたが、桜君を止める要となるのは、間違いなく君だよ。秋十君。」
「....え....?」
「才能がなく、努力を繰り返し、確実に力をつける。...それは、天才である彼らにはなかった事...いや、“出来なかった”事だ。だからこそ、君は彼らに期待されている。...“きっと、止めに来るだろう”...とね。」
「.......。」
俺、が...?
最初は落ちこぼれでしかなかった俺が、桜さん達を...?
「“天才を超える”。それは努力家にとってよくある願望だが...超えられる側も、それを願っているのさ。...秋十君。君も、桜君をいつか超えたいとは思っていただろう?」
「は、はい。...ですけど、そんなの到底...。」
「出来るか出来ないかじゃなく、やるんだよ。...夢を追う...それが君のISの名前なのだから、君も決して諦めるな。」
「っ.....!」
つっかえが取れたような気分だった。
...そうだ。夢追は夢を追うためのIS。
俺も...俺だって、抱いている夢を諦める訳にはいかないもんな...。
「さぁ、立つんだ。秋十君。出来る事は少ない。けど、やらなければならない事は多い。...なら、ここで立ち止まっている時間はないだろう?」
「....はいっ!!」
確かに、俺に出来る事は少ない。そして、桜さん達を止めるために、やらなければいけない事は、山ほどある。
...だけど、俺がやる事は変わらない。
いずれ成し遂げる“成果”のために、ただ努力を繰り返すのみ...!
「さて、早速だけど手伝ってくれるかい?何をしようにも、様々な書類を処理しないと何もできないんだ。」
「桜さん達だけでなく、ジェイルさん達も抜けましたからね...。」
「そう言う事だ。」
まだ抜けてしまった部分がフォローしきれていないのだろう。
それでグランツさんがこんなに...。
...よし、俺もできるだけ手伝って負担を減らさないと。
「ふぅ....。」
一段落つき、俺は休憩する。
「お疲れ、秋十。」
「お、サンキューシャル。」
シャルに飲み物を貰い、それを飲む。
「秋十の予定ってどうなってるの?一端帰る?」
「いや、しばらくここで寝泊まりする事になっている。桜さん達がいたからか、ここも相当セキュリティが凄いからな。」
なお、千冬姉とマドカとあいつ...兄さんは更識家にお世話になっている。
マドカもやる事が終わったらこっちに来る予定だ。
更識家にお世話になっているのは、護身のためらしい。
千冬姉は正直護身となる装備があれば護衛はいらない気がするけど。
「そう言えば、グランツさんは協力してくれるみたいだけど、会社としての具体的な方針はどうなっているんだ?」
「うーん...ボクもあまり知らないけど、基本的にはボクらと同じみたいだよ?」
「なるほど...。」
どうやら、会社でも桜さん達を止めるために動いているようだ。
まぁ、女尊男卑で追いやられた所を救ってもらった恩があるからな。
そういった意味でも、止めたいのだろう。
「あ、そういえば、明日はお客さんが来るらしいんだって。」
「お客さん?どういうことだ?」
「桜さん達がいなくなる前から、グランツ博士達とそのお客さんで共同開発していたものがあって、それについてだと思うよ?」
「共同開発...ねぇ。」
ジェイルさんも関わっているのだろうか?
...だとしたら、割ととんでもないものができそうだな。
「何を開発するのかは聞いてるのか?」
「お父さんから聞いた話だけど...ISに乗らなくても空を自由に飛ぶ体験ができるもの...らしいよ?詳しくは知らないけど...。」
「飛ぶ事ができる...じゃなくて、体験が?」
実際に飛ぶ訳ではないのだろうか?
...まぁ、明日になればわかるかもしれん。
【VRゲーム...らしいね。】
「白...知っていたのか?」
【一応ね。...と言うか、お父さん達が把握してたから。】
桜さん達は知っていたのか...。
VRゲーム...なるほど。バーチャルリアリティなら体験はできるな。
「でも、グランツさん、ジェイルさん、そしてもう一人の人が作るにしては...何か物足りないような...。」
「...フルダイブ型とか?」
「...なるほど...。」
VR自体はISが広まる前から研究は進んでいた。
でも、一昔前のライトノベルのようなフルダイブ型はまだだった。
...それを、グランツさん達は開発するらしい。
【正解。どうやら、ISがなくても空を翔ける楽しさを知ってもらいたかったらしいよ。後は、大人も子供も楽しめるゲームとして。】
「自由度の高そうな感じだな...。」
「明日どういったものなのか見れたらいいね。」
それにしても、その開発に協力してるのは誰なのだろうか?
桜さんに聞かされた事があるけど、世間に隠れている天才というのもいるらしい。
もしかしたら、そういう人なのかもしれない。
「...さて、戻るか。」
「そうだね。休憩もそろそろ切り上げようか。」
飲み終わった空き缶をゴミ箱に捨て、俺達は手伝いに戻った。
「....っし、ふぅ...。」
夜。風呂前の素振りを終わらせ、俺は一息つく。
いつもやっていた事だが、最近は少しずつ回数を増やしている。
「精が出るね。」
「グランツさん。」
仕事に一段落ついたグランツさんが俺の鍛錬を見ていたようだ。
「...なんというか、思い出すよ。僕の幼い頃を。」
「幼い頃...ですか?」
あまり想像がつかない。
「僕も、君のように夢を追いかけていたんだよ。...空を自由に駆け回りたいという...ね。」
「それって....。」
「束君や桜君に似通っているだろう?」
宇宙か空かという違いはあるが、それ以外は変わらない。
...だから、グランツさんも会社を動かして桜さん達を止めに...?
「幼い頃と言うだけあって、僕も子供だったからね。ファンタジーの世界のように自由に飛び回りたいなんて、本気で思ってたよ。」
「...諦めてしまったんですか?」
グランツさんの言い方は、過去形だった。
それはまるで、諦めているようで...。
「...そうだね。結局、僕は諦めてしまった。そんな事はできそうにないと、現実を見せられてしまったんだ。」
「......。」
「だから、僕はせめてゲームの中だけでも自由に飛べるようにしたいと考えてね。...それが、僕が研究者になる切欠だったのさ。」
グランツさんが研究者になるのに、そんな事があったのか...。
...でも、それは...。
「...妥協...ですよね?」
「...まぁね。どう言い繕っても、僕は夢を諦めて妥協した事に変わりない。...桜君達にも言われたよ。...だからこそ、せめて妥協した道を突き進む。...現実の空を翔けるのは君達に任せて、僕はゲームで空を翔けさせてもらうよ。」
「...そのためのVRゲーム、という事ですか。」
AIに関して研究していたのも、ゲーム関連なら納得だ。
「...誰かから聞いたのかい?」
「シャルから共同開発の事を、白からゲームについて聞きました。」
「うーむ、桜君達には知られていたからなぁ...。ハインリヒさんにも話していたから、そこから伝わったんだね。」
本来ならこの場で言うつもりでもあったのだろうか。
少し出鼻を挫かれた表情をしていた。
「まぁ、IS関連の事業の裏で、地道に開発を進めていたのさ。そこへもう一人協力者が見つかって一気に進んでいた所で....今の事態に至る訳さ。」
「タイミングが悪いというかなんというか...。ジェイルさんが外れたのは大丈夫なんですか?」
「結構痛手だよ。だが、進行状況は知られているみたいでね。アイデアなどが送り主不明で送られてくるよ。筆跡は彼だから、おそらく桜君達の場所から送られているのだろう。」
「さすが...。」
発行元を分からなくした上で送ってくる事ぐらい、造作もないんだろうな...。
今の所、そこまでやる事がなくて暇なのかもしれないけど。
「...秋十君。君は諦めないようにね。」
「......はい。」
「僕は諦めて、結局少しでも楽な道へと行ってしまった。だけど、君は彼らを止めたいのなら決して諦めちゃだめだ。彼らもまた、諦めていないのだから。」
...そうだ。桜さん達は夢を諦めていない。
だからこんな強引な手を使ってでもISを宇宙に羽ばたかせようとしている。
「それと、だ。あまり夜更かしはしないようにね。僕と違って、秋十君はまだ学生の身だ。健康には気遣いなよ。」
「はい。」
会話は終わり、俺とグランツさんはそれぞれの部屋に帰る。
その途中、ふと気づく。
「(...あれ?桜さん達...もしかして....。)」
ISを宇宙に羽ばたかせるために今の状況を作り出した。ここまでは分かる。
だけど、それでは意味がないのも分かっているはずだ。
だから俺達は止めようとしていた。
...まさかとは、思うけど...。
「(...俺達が止める事を含めて、桜さん達の計画なのだろうか...?)」
俺達が止めると分かった上で...いや、止めるからこそこの状況を作った。
先を見通し、きっと自分達だけでは達成できない事を、俺達に託した...。
「.....結構、期待を背負ってるんだなぁ...。俺...。」
とんでもないプレッシャーだと、俺は思う。
他でもない天才の二人に、天才を超える事を期待されているのだ。
....応える以外に、選択肢なんて存在しないじゃないか。
「無茶苦茶だなぁ。...まぁ、でも、桜さんと束さんらしいか。」
...もしかしたら、千冬姉も感付いているのかもしれない。
俺達を含め、世界中が天才二人の掌の上か...。
「...いいぜ。やってるやるよ桜さん。そっちがそう望むんなら、俺も応える...!」
何もかも思い通りに誘導されるのは仕方がない。
あの人たちは俺達の人柄を良く知っている。
...だから、せめて乗り越える際は、桜さんをあっと驚かせてやるさ...!
「非才でも、天才を超えれる...証明してやるさ...。」
掌の上だと言うのなら存分に踊ってやろう。
超えて欲しいと望むなら、その通りに超えて見せよう。
...その上で、俺は貴方の予想を上回って見せます。桜さん。
翌日。件のお客さんが来たようで、俺達も出迎えに行った。
「....あれ?シグナム?」
「む、秋十にシャルロット。なぜここに?」
「いや、それはこっちのセリフなんだけど...。」
するとそこにはなぜかシグナムもいた。
他にも大学生っぽい女性二人と小学生ぐらいの少女。後、でかい犬がいた。
そして、それを纏めているのであろう、俺より年下の少女。
...その少女は、なんというか...天才特有の“オーラ”みたいなのを感じた。
「あれ?シグナム、知り合いやったんか?」
「知り合いと言うよりも...友人です。二人共一組ですが、少々関わりがあって。」
「ふ~ん...。」
俺とシャルを値踏みするように交互に見る少女。
ふと、何かを思い出したように視線を戻し、口を開いた。
「まぁ、まずは自己紹介やんな。私は八神はやて。グランツ博士と今はいいひんけどドクター・ジェイルと共に開発していたものに協力してた者で、今はこの会社の協力者と言う事になってます。これからよろしくお願いするわぁ。」
八神はやて。...そう名乗った彼女は、柔らかく俺達に微笑んだ。
後書き
一昔前のライトノベル=SAO的な話。(どうでもいい小ネタ)
ISじゃなくリリなのキャラが凄い強キャラ感出してる...。>はやて
一応、設定的には相当な天才です。束や桜に追随できるぐらいには。
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