増えてもいい
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第四章
「行って来るよ」
「じゃあトキはどうするの?」
「どうしようかな」
冷静であるが現状に甚だ不向きな発言だった。
「一体」
「それは帰ってから考えるの?」
「うん、まずいは朝御飯を食べて皆に御飯をあげて」
「そうしてからなのね」
「顔も洗って歯も磨いて」
このことも忘れない。
「そうしてね」
「そう、会社に行って来るから」
「それで帰ってから」
「どうするか決めよう」
「保健所に通報しないの?」
動物の保護になるからだ、母はこちらを話に出した。
「それで引き取ってもらうとか」
「天然記念物だから薬殺もされないだろうしね」
「流石にそれはないわね」
「うん、けれど保健所の人が信じてくれるか」
「いきなりトキが家の前にいたとか」
「そうした問題もあるし」
だからだというのだ。
「まずはね」
「会社行って来るのね」
「その間うちにいてもらおう」
「他の鳥みたいに言うわね」
「生きものは皆同じだよ」
博愛主義の正樹だった、そしてだった。
正樹は朝やるべきことを済ませから出勤した、家を出る時に母から話を聞いた父が仰天する声を聞いた。
正樹は仕事を終えて帰宅してだ、鳥達に御飯をあげてからそのうえであらためて母親に話をした。
「さて、どうしようか」
「まだ冷静ね」
「いや、考えてもね」
それでもというのだ。
「深刻にそうしても」
「意味ないっていうのね」
「うん、そう考えない主義だから」
そして決して慌てず冷静さを失わないのだ。
「僕はね」
「それは変わらないわね」
「昔からね、それでね」
「そう、トキよ」
「うちで飼えるか」
「無理に決まってるでしょ」
即刻だ、母は息子に言った。
「トキよトキ」
「うん、そうだね」
「お父さんが帰ってきたらお父さんにも話すけれど」
「さて、どうしたものかな」
「やっぱり保健所に言う?」
「市役所かな」
正樹はこちらかとも言った。
「そうなる?」
「市役所ね」
「保健所よりもいいかな、明日にでもね」
「全く、あんたは冷静なんだから」
「驚いても仕方ないじゃない」
至ってという言葉だった、ここでも。
「慌てて驚いてことが解決する?」
「そう言われると」
「そうだよね、だからね」
それでというのだ。
「僕も焦らないし驚かないんだ」
「やれやれね」
「それで御飯は」
正樹は母にトキに餌をやったのかと尋ねた。
「何をあげたの?」
「ネットで検索してね」
「それでなんだ」
「トキの食べるものをあげてね」
そうしてというのだ。
「ずっと玄関に置いておいたよ」
「そうだったの」
「そう、けれどね」
「けれど?」
「いや、糞もして大変だったわ」
「生きものだから糞はするよ」
実は正樹も鳥小屋を毎朝掃除をしている、そうして奇麗にしているのだ。これも彼の日課である。
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