提督はBarにいる。
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お堅い教官に女殺しを・2
前書き
※注意!※
今回のお話は後半にいくに連れて無性に壁を殴りたくなったり、奇声を上げたくなったりする可能性があります。十分に覚悟をした上で読みましょう。
「なんだよ、普通に洋酒もイケるじゃねぇか。心配して損したぜ」
「そ、そうでしょうか……?日本酒よりも身体が火照って来るのが早いような」
「まぁその辺は誤差だろ、きっと。さぁ次だ」
《シーブリーズのレシピ》
・ウォッカ:30ml
・クランベリージュース:30ml
・グレープフルーツジュース:30ml
こいつはシェーク・ロックスタイルカクテルと呼ばれる奴でな。カクテルはシェイカーでシェークした後は大概カクテルグラスに注ぐのが定番なんだが、こいつは氷を入れたロックグラスに注ぐと最も見映えが良い、とされている。材料全てをシェイカーに入れてシェーク。ロックグラスに注ぐと完成だ。
「きれいな紅色ですね……」
そう、クランベリーの赤とグレープフルーツの白っぽい果汁が混ざりあって桜色より少し赤が強い独特の色合いになる。女は綺麗な物や可愛い物に目がないってのは不変だからな、女を口説くレディーキラーには見た目も重要だ……強烈に効くけどな。お次は日本生まれの見た目に拘ったカクテルと行くか。
《青い珊瑚礁のレシピ》
・ドライジン:40ml
・ミントリキュール(緑):20ml
・マラスキーノチェリー:1個
・グラニュー糖:適量
こいつは1950年に日本で生まれたスノースタイルカクテルさ。スノースタイルってのは、ソルティドッグのようにグラスの縁を塩や砂糖で飾り付けるカクテルの事だ。グラスの縁を水で軽く濡らし、グラニュー糖を付けたらドライジンとミントリキュールをシェークしてグラスに注ぐ。ミントリキュールは食紅などで色々と色付けがされているが、青い珊瑚礁の場合は南国のエメラルドグリーンの海を表現する為に緑色の物をチョイス。仕上げにカクテルピンに刺したマラスキーノチェリーを沈めれば完成だ。グラニュー糖は渚で砕ける白波、グラスの中身は南の海、チェリーは珊瑚礁をそれぞれ示しているらしい。
「ほういえばへいほふ」
「ん、どした?」
チェリーを頬張ったまま神通が話しかけてきた。
「わたひ、サクランボのヘタを口の中で結べるんでふよ?ホラ」
そう言って神通はマラスキーノチェリーから取ってあったヘタを頬張ると、モゴモゴやって数秒後に出して見せてきた。舌の上には見事に結ばれたサクランボのヘタが乗っている。
「へぇ……じゃあ神通はキスが上手いんだな」
「なっ、何言ってるんですか!もう/////」
定番の下ネタジョークだが、素面の神通なら赤面して俯くだけなのにリアクションがあったな。もう少し……か?
サクランボのヘタの話をしてから30分程経った。今現在の神通の状況?
「ていとく……///」
俺の左腕に密着するように抱き付いて、顔を腋の下に押し当ててます。鼻息らしき物も感じるので恐らくは匂いも嗅いでるのか?コレは。というか神通お前臭いフェチだったんか。
「すうぅぅーーー……はあぁぁ……とても男らしい香りがします///」
臭いとか思われてねぇんなら何よりなんですがね?思いっくそ深呼吸で匂いを堪能されると気恥ずかしい物が。
「ていとく……大好き、です………///」スリスリ
いやあの、神通さん?密着してる左足が俺の左足に乗っかって、スカート捲れて来てますよ?パンと紅茶がお目見えしてますよ?
「おい、神通」
「なんですかぁ……?結婚式の日取りが決まりましたか?」
「ちげぇよ、何でそうなる」
「違うんですか……」シュン
目に見えてしょげる神通。どうすりゃそんな思考が生まれたんだ。というか締め付けられ過ぎて俺の左腕が鬱血してきて痺れてきたんですが。
「神通」
「…………はい?」
「そろそろ左腕離してくんねぇか?痺れてきたんだが」
「嫌です……離れたく、ないれす……///」
余計に抱き付かれて締め付けが強くなった。ダメだこりゃ。完全に幼児退行してやがる。
「なぁ、頼むよ。離してくれ」
そう言いながら思い付きで頭を撫でてみる。するとトロ~ンとしていた瞳を閉じて、俺の手の感触を楽しみ始めたぞ?これは脈あり……か?試しに撫でるのを止めてみる。すると目を開き、抗議するようなジト目でこちらを見つつ、頬をプクッと膨らませている。えっと、目の前にいるのは駆逐艦ですか?
「……なんでやめちゃうんれすか」
「もっと撫でたら離してくれるか?」
「……………………………//」
黙り込んで俯くと、赤面しながら頷いた。誰これ、鬼教官どこー?
撫でるのを再開すると、2分も経たない内に神通はスッと離れた。
「よしよし、良い子だ……」
手を止めようとしたら、悲しそうな目になった。うっすらとだが涙も浮かんでいる(ように見える)。
「……もう少し撫でるか?」
「お願い、します………///」
(……かわいい)
このあと10分程滅茶苦茶ナデナデした。
カクテルに使って封を切ったブランデーをロックグラスに注ぎ、一息で煽る。
「……ふぅ」
強いキックを楽しんだ後に残った余韻を息と共に吐き出しつつ、左側を見ると目を閉じて唇を少し突き出した神通がスタンバイしている。
「…………」
「…………」
何を求めているのかは大体察しが付くが、ここは敢えてからかってみるか。黙ったまま神通の顔を見つめる。神通も目を閉じていたが、焦れてきたのか薄目を開けてコチラの様子をチラチラと窺っている。
「…………」
「…………//」
尚も黙ったまま見つめていると、神通の顔が赤くなってきた。これは少しムッとしてやがるな。
「……提督、まだ、ですか?」
「ん?何がだ?」
あからさまにすっとぼけてみる。
「何って……見て分かりませんか?」
「見て解らない程女の扱いに慣れてないとは言わんが……どうした急に」
「貴方の顔を見ていたら……キスがしたくなったんです///」
ハイ、モテない男子諸君。これが『アルコールの魔力』という奴です。普段奥手な女の子もホラ!タガが外れるとこんなにも欲望に素直になってくれます。女は酔わせて口説け、とは良く言った物。だからこそレディキラー(女殺し)カクテル、なんて呼び名が存在する訳だが。いやぁアルコールって恐いねぇ(棒読み)
「仕方ねぇ甘えん坊さんだなぁ……ホラ、おいで」
顔の近くにすり寄ってきた神通の唇に、俺の唇を重ねる。互いの唾液が混ざり合い、唇が離れると同時に糸を引く。まるで離れたくないとでも言っているかのように。
「はぁ……ていとく、愛してます……///」
唇に付いた唾液をペロリと舐め取る神通は、何だか妖艶な色気を漂わせている。その姿に一瞬ドキリとしてしまい、ムスコがウォーミングアップを始める。待て待て落ち着けムスコよ、まだ焦る時間じゃねぇ。少し落ち着こうと、再びロックグラスにブランデーを注ぐ。
「ていとく……」
「ん?」
呼ばれたので振り返ると、神通が小首を傾げて招き猫のポーズをしていた。
「……にゃあ……///」
えぇと、神通さん?貴女はいつから球磨型の軽巡になりましたか?
「この間、紛れ込んできた猫と戯れて鳴き真似をしていたら、ていとくは『可愛い』と言ってくれたじゃないですか……」
呆気に取られていた俺に、招き猫のポーズのまま神通が説明してきた。
「あぁ、そういやあったなぁそんなこと」
「今晩は、私がていとくの飼い猫です……にゃん」スリスリ
猫と化した神通さん、再び密着モード突入です。
「お、思う存分……可愛がって、下さい……にゃん♪」
おい、そういう思わせぶりな台詞を密着した状態で、尚且つ上目遣いで言うんじゃない。ムスコが臨戦態勢に突入しちゃうでしょ!しかも相手は酔っているとはいえ奥手な神通。ここで言っている『可愛がって』は、(意味深)の方ではなく普通に猫のように可愛がって欲しい、という意味の可能性が高い。だから落ち着け、ムスコよ。
(……まぁ良いんだけどよ、可愛いしな)
密着状態のまま、ナデナデ開始です。
「よしよし、可愛い子猫ちゃんめ」
「ふにゃ……あん……///」
よっぽど気持ちいいのか、艶かしい声を上げる神通。頭の後ろで髪を纏めている大きめのリボンが、心なしか猫耳に見えてきたぞ。
「そんなに気持ちいいか?」
耳元で囁いたついでに耳にフーッと息を吹き掛ける。
「きゃうっ……//はいぃ、気持ちいいというより、凄く、落ち着くんです………にゃあん」
息を吹き掛けた時は一瞬ビクリとしていたが、すぐにフニャっと弛緩する。……ん?左手の人指し指が唇を撫でてるな。はは~ん、そういう事か。でもまだ我慢。神通から求めて来るまで我慢だ。
「ていとく?」
「何だ?」
「猫は……顎を撫でられても、喜び、ます……よ?」
「そうかそうか、そういやそうだったな」
神通の顎を猫に見立てて撫で回してやる。そろそろいいかな?
「にゃ………///」
もう少し。
「にゃ……あん……」
今だ!俺は神通の顎をクイッと持ち上げて、再び唇を重ねる。神通はビックリしていたが、すぐに蕩けて情熱的にキスを求めてきた。
「ていとく……いきなりは、ビックリしてしまいます」
「悪い悪い。でも神通、してほしいって思ってただろ?」
「な、何でそれを……」
「唇。物欲しそうに撫でてたからな」
「気付かれてましたか……流石ていとくですね」
さて、時計を見ると既に午後11時を回っている。かれこれ6時間程は飲んだりイチャイチャしてた事になる。流石にそろそろお開きにすべきだろう。
「さて神通、そろそろお休みの時間だ」
「んぅ……抱っこ」
「あん?」
「抱っこ……してくらはい」
足元かなり怪しそうだしなぁ。仕方ねぇか。俺はヒョイとお姫様抱っこで神通を抱えると、執務室を出ようとした。すると、神通は抱っこされた状態のまま暴れだした。まるで執務室を出るのを嫌がるように。
「ど、どうした?神通」
「ていとく……今夜は、帰りたくないれす」
あ~……覚悟はしてたが、結局そうなるのね。ま、俺も童貞って訳じゃねぇし。据え膳喰わぬは何とやらってな。
「んじゃ、仮眠室に布団敷いてくっから。少し横になって待ってな」
「はい……」
手早く布団を敷いて戻り、再び神通を抱え上げる。
「なぁ神通」
「……はい?」
「実はもう、ほとんど酔い覚めてるだろ」
神通はボッと効果音が出るんじゃないかという位、一気に赤面。そのままそっぽを向いてプルプル震え出した。やっぱりな、幾ら洋酒に弱いったって、普段からあんだけ飲んでる奴がカクテル5~6杯でベロベロにはならねぇっての。
「……せっかく、勇気出してるんですから。気付かないフリして下さいよ」
「バカ、折角の記憶をアルコールなんぞにやってたまるか」
俺はそう言って、文句を言いたそうにしていた神通の唇を三度塞いだ。
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